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走劇のオッドアイ  作者: かさ
浮上島編
115/121

ACT.103 冷酷、冷徹の心

浮上島ライト級の初日が終わり、陽が落ち各チーム過ごし方はそれぞれ

ホテルで休養し、明日の試合に備えるたり、プラクティスのデータからセッティングを煮詰めたり、次の対戦相手の戦略を立てたたり…蒼鷹自動車部は次の対戦相手の対策の為に、総出でミーティングを行う


浮上島B 蒼鷹自動車部ピットガレージ


ガレージを薄暗くし、スクリーンに次の対戦相手の儀臥学園のコペンのプラクティクスの様子を偵察した映像を映す


「相手のコペンは、可変エアロに変更し、足回りも地区大会の時より洗練されている。コーナー速度を映したものだけど、こちらのアルトに比べてコーナリング中は強くなっていると判断せざる得ないわね」


大会に参加しない元ラッシーチームの面々が偵察した映像データを、桜井先輩が分析する


「LA400系の2台目のコペンをベースか、GR SPORTを参考に、リニアモーターと可変エアロを組み込んだか…流石に奮発したか」

「徹也的には、コペンはどういう評価かしら?初代ならともかく、こっちは対戦経験がない相手だから」


リリス先輩の言う通りで、このチームはこれまでこの車種との対戦経験はないのだ


「現行機だから、やっぱ厄介ちゃ、厄介ですね。見た目的にも運動性を高いのを活かしたチューン、S660のようなタイヤとナノマシンブレーキを摩耗するというやり方はオススメは出来ない、元はFFマシンかつ、今回のコース特性、地区大会と違ってアップダウンがさほど激しくないシティコースではあの時の戦術は悪手だ」

「それに、前回も使っているからバレる危険性もあるか…あっちがこちらの情報を偵察していればなの話だが、あちらのドライバーは?」


伊東先輩の指摘に、スクリーンを切り替え、儀臥学園のエースドライバー二人を映した出す


「儀臥学園のドライバーは、相模(さがみ)筱原(しのはら)の3年生ドライバー2名。前回の大会もこの二人で制し、相模は典型的なアグレッシブなドライバーで、篠原はディフェンスドライバー。タイムを叩き出しているのは筱原の方だ」

「先日も彼らの地区大会の時の映像と、この走りを見て思うけどなんというか、そこまで特徴のあるドライバーじゃない?なんというか王道的というか」

「うちのドライバー達が、超個性的なだけだがな、奈緒」


超個性的すぎて、通常のドライバーの比較の感覚がおかしくなっているのか


「でも、いい所を突いてる。逆を言えば、彼れが対戦経験のない変則的に特化したドライバーと、戦術的な戦い方と走りが出来るのがこちらのチームのアドバンテージであり、彼らはそれを知らない」

「なにか勝算アリってわけね?」


リリス先輩に、本題を話すようにせかされたので、チームメンバーに今回の作戦を伝えたが…知ってはいたが、微妙…というより、明らかに嫌悪する反応であった。特に奈緒達のメカニック組は


「徹也、本気でそれをやるつもりなの?私は嫌なんだけど…」

「オレも奈緒と同じ意見だ、そいつを意図的に狙ってやるのは、メカニック側の心象的に嫌だな」


珍しく、奈緒と多田の意見が合う。今回の作戦はメカニック側、整備する側と、マシンを作る側からすれば気持ちは良くない戦い方だ

言わずとも、一年生の佐藤と石井も同じ意見なのか、奈緒と多田の意見に頷いていた


「なんというか、徹也らしくないというか…結衣はどうなの?」

「…私も、ちょっとこれは奈緒ちゃん同じ意見だけど…お兄ちゃん、真っ向から勝負してもいいんじゃ?」

「…まあな、真っ向から勝負しても勝てる。この布陣、正直負ける気はしないよ?」

「だったら、こんな戦い方は…」


ハッキリ言ってもいいと思ったが、オレの口からは決してだなかった。出してはいけない、オレから口を出せばその通りに動く。そしてシビレを切らしてその言葉を口を開く者が現れる


「アンタ達、思い上がってるんじゃないわよ」


ある意味、この中で一番適材適所、威圧のある言葉発せる者。とんでもなくドスを効かせて


「か、加奈ちゃん?」


小柳加奈、彼女の言葉で場が静まり返し、彼女は言葉を続ける


「いい、これは勝負である以上の勝つ為の全力を尽くすのは当たり前だし、その勝敗に綺麗ごとばかりじゃない。残酷な世界なのよ?勝つ者と負ける者…そのどちらしかない」

「でも加奈…徹也のやり方は流石に悪辣というか…」

「徹也はやり方は常に悪辣で姑息だと、わかっているでしょ?」


それは傷つくぞ加奈?


「だけど、チームメンバーは確実に信頼しているやり方であるのは間違いない。ある意味ドライバーの持つポテンシャルと、メカニックが仕上げたマシンなら出来ると確実な勝ち方」

「そ、それはそうだけど…」

「それに、これ明堂学園とかの強豪チームなら迷わずその作戦を採用するし、私だってそうする。奴らは勝つことに執念が半端ないからね。背負っているもの、スポンサーに、これまで負かしてきた対戦相手の想いも…」


この言葉で、多田は何かしら気付いたようだ。いつぞや多田と伊東先輩に言い放った言葉に似たことを加奈は言ったのだ

ここで伊東先輩も加勢する


「加奈の言う通りだ、それにこの戦い方は確実に勝ち、この先の戦いを有利に運ぶ為の布石だ。勝ち続ける為にな。奈緒に結衣、お前らは全力で勝てなければならない、恥じない戦いをしなければならない、それが勝利者の責務だ」


よく覚えていたものだ伊東先輩…それ程に、あの時の言葉がインパクトがあったのかな

結衣も奈緒達は、伊東先輩の言葉でやっと気づく。自分たちが負かした相手にここまで言われているのだから


「私は徹也の作戦は賛成ね。メカニックとして、車を破壊するようなことは確かに気が引けるところもあるけど…気づいた私達が引導を渡すのも、勝敗を決する戦いに臨むメカニックとして心構えだと思ってる…ですよね先生?」

「そうね杏奈、さっきも加奈が言っていたけど、勝負の世界は残酷で冷酷なものだからね。綺麗な勝ち方にこだわるのは、自分を小さくしていまうのよ。むしろこういう戦い方が出来るということに、成長を感じないとね?」


上村先生まで、この作戦を支持し、納得できる解答を出したことで反対派は沈黙する…いや、腹を括ったというか

ここで、全員に言い聞かせるように言い放つ


「ここまで来た以上、負けていいとか、せめてあそこまで勝てればいいとか…そんな考えをしている奴がいるなら目を醒ませ。全国大会まで勝ち抜いてきた連中は、全員目指しているのは優勝であり、打倒明堂だ。それはプライドもあり、挑戦したい勝ちたいという欲…そしてこれまで支えてきたスポンサーや関係者の為に、そんな様々なモノを背負った連中とオレたちは戦うんだ」


言い聞かせるように、まるで演説のように…皆が注目する。次の言葉を待つ、どんなことを言うのか、なにを言うのか…期待か、不安…様々な視線を感じながら


「そんな背負った、夢と希望を背負った連中を踏みつぶせ。勝負に勝ちたい、勝つのなら心を鬼にしろ。冷酷、冷徹になれ…使える手段を全てを持って戦う、戦わなければならないんだ。敗者に、恨まれようが憎まれようが、そいつらに出来るのは恥じなく、全力で勝ち続けるのが礼儀だ」


全員の眼つきが鋭くなる、そう、こういう士気、モチベーションになることを狙っていたのだ


「さて、作戦をおさらいする」


作戦をおさらしして、ミーティングをお開きにした…明日の一回戦、この大会に臨む心構えを持たせたことに、今回の作戦と、このミーティングの意味があった

冷酷、冷徹の心を持たせることを

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