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走劇のオッドアイ  作者: かさ
幕間の話
113/121

幕間 成海リリカ

テスト明けの週末は清々しいものだ、やり切ったという達成感、勉強という窮屈からの…いや、勉強会自体は結構楽しかったのでアレだが、それより何よりも、やっと思う存分体を動かし、そしてマシンを走らせることが出来る喜び。学校は休みの土曜日の早朝、部活へ向かう足が軽い軽い

ずっと部活休みかつ、練習場も整備していた為に実に一週間ぶりのドライブ、ワクワクし過ぎてちょっと寝不足だが


「結衣先輩、おはようございます。随分ご機嫌ですね」


ウキウキしていた気分に、優輝君に挨拶される


「おっはよう!!優輝君!わかっちゃうかな?」

「そりゃ、スキップしながら、鼻歌でヒーローソングを奏でていれば」


どうやら、ニチアサの戦隊か仮面ヒーローもののメインテーマを、無意識に鼻歌で奏でていたようだ。そりゃご機嫌とか言われる


「まあ、気持ちはわかりますがね」

「奈緒ちゃんは相変わらず?」

「そうですね、姉さんは相変わらず朝弱いし、ギリギリに起きて支度してますから…まあ、時間通りには来ますよ。最終手段は引っ張ってきますがね」


優輝君がいなければ、奈緒ちゃんは遅刻常習犯になっていたことは間違いない程、朝が滅茶苦茶弱い。夜中まで車弄りしているせいらしいが…正直、少し羨ましい

ちなみに、優輝君は朝練に参加したいらしいが、奈緒ちゃんのその朝の弱さを放置できない為に来れないらしいということを、ボヤいていたことはあった


「いつぞや、奈緒ちゃんを背負いながら来たほどだもんね」

「いっそう、阿部先輩に起こしてもらいぐらいですね…もっとも、駅からうちまで遠いから、そんな無理させられないんですが」


優輝君と、一緒に学校に向かう途中…まるでお人形のような娘が、そこに立ち尽くしていた

落ち着かない様子で、周囲を見渡す度に、金髪の綺麗な髪がなびくが…あきらかに困っている様子だ


「どうしたんだろ?あの女の子?」

「この辺で見ない子ですね…迷子かな?」


困っている子は放っておくわけにはいかない、その女の子に声をかけることにした


「どーしたのかな?可愛い可愛いお嬢さん?」


脅かせないように、彼女の目線と同じ位置に屈みながら女の子に声をかける。女の子は戸惑いながら


『Wo bin ich? Ich möchte auf die Aotaka High School gehen…』

「…???」「???」


私と優輝君、完全にフリーズ。宇宙猫みたいな状態になる


「え、えーと…英語?は、ハロー??」

『??』


どうやら英語ではないようだ、流石に言葉が通じないのはお手上げだ。仮に英語だとしても、英会話は流石に出来ない

言葉が通じないのかが察したのか、外国の女の子は泣き出してしまった。どうしよう、こんな小さい子を泣かせたことがなかったからショックであった


「ど、どうしよう優輝君!?」

「うーん…英語じゃないとすると…ホントにお手上げですよ結衣先輩…」


私と優輝君、泣き出している女の子に困惑していたが、助け船がやってきた


「…どうしたんだ?二人とも?そんな小さい女の子を泣かせて?」


道路側から、バイクで二人乗りで学校に向かっていたお兄ちゃんと加奈ちゃんが、通りかかっていた


「お兄ちゃんに加奈ちゃん!!いい所に!!実はこの子の言語がわからないの!!」


藁をすがる気持ちで、二人に助けを求める


「外国人?英語が通じないの?」

「うん、そうみたいなの加奈ちゃん…」


二人はバイクから降りて、女の子の元に駈け寄る。お兄ちゃんは女の子の容姿を観察し


「もしかしてだけど、この娘…」


なにか思い当たる節があるお兄ちゃんが、声をかける


「あー…Hallo, süße Dame. Mein Name ist Tetsuya. Wie heißen Sie?」

『…Mein Name ist Lyrica Narumi. Ich bin gekommen, um Lilith zu sehen』

「Lilith? Ich bin mein Senior! Wollten Sie die Aotaka High School besuchen?」


どうやら、お兄ちゃんは女の子と会話が出来るようだ


「あー、なるほどね。リリス先輩の妹さんって訳ね」

「え?加奈ちゃん、この二人の会話わかるの!?」

「まあね。英語、中国、韓国、ヨーロッパ系に中東系…結構な言語を喋れるからね私。徹也が話しているのはドイツ語よ…アイツ、明堂学園の授業で英会話と、選択授業でフランス語とドイツ語を学んでいたらしいからね」


恐るべき、名門私立校


「リリス先輩の妹…そんな話初耳なんですが。結衣先輩と加奈先輩はご存知で?」

「いや、私も聞いたことないかな?そういえば、リリス先輩の身の上話はあまり聞かないかな?」

「一応、立場的に私は知ってはいたけど…リリス先輩が話したがらないのも無理のない事情というか」


そうこうしているうちに、お兄ちゃんはリリカちゃんから色々聞き出していた

(ここからは日本語訳)


『つまり、リリカはお姉ちゃんに会いたいが為に来たのか?ドイツからわざわざ?』

『うん、リリスお姉ちゃんとは、今晩会う筈なんだけど…早く会いたいからって思って、お母さんと泊まっている別荘からこっそり出て、ここまで来たけど?』

『蒼鷹町まできたのはよかったけど、道がわからなくなったと』

『頼りにしていた、携帯端末の電池も切れて…どうしたらいいのかわかんなくって』

『丁度いいタイミングでオレ達が声をかけた…ってところか…』


お兄ちゃんは、リリカちゃんの言ったことに、何か引っかかったのか、考え込む


「結衣、杏奈先輩にちょっと電話してみてくれないか?」

「リリス先輩じゃなく、杏奈先輩に?」

「本来なら当事者に聞くべきかなって思ったが、どうにも今の会話から、もしかしたら事情を知っていそうな第三者視点から聞いたほうが最善かなってな、杏奈先輩なら付き合いが長いし、何かしら知っているかもしれんしな。とりあえず、リリカ嬢のご希望通りに学校に向かうしかないな」


オートバイを押しながら、お兄ちゃんと加奈ちゃんがリリカちゃんの話し相手をしつつ、学校に向かい

私は杏奈先輩に電話をし、事情を話した


〈あー…それはリリスに話さなくて正解ね。しかしリリカも随分とまあ、積極的というか〉

「何か問題が?」


今更ながら、私はリリス先輩の素性に関してはあまり知らない。尊敬でき、目標たるドライバーではあるが…家族関係とかよく知らない


〈複雑な家庭事情があるんだけどね、リリカちゃんって、リリスにとっては腹違いの妹になるのよね〉

「腹違いって…お母さんが違うってことですか?」

〈まあね、リリスの産んだ母親は10年前に亡くなっているの…それから数年後に父親が再婚…リリカを生んだ母親、義母に当たるわね。リリスと義親は不仲…というかリリスが一方的に嫌悪してるんだけどね〉

「い、意外ですね…あのリリス先輩が?」

〈でしょうね、普段はハーフで才女で美人で、出来る女だからね〉


まさしく、杏奈先輩の言う通りのイメージである。男女問わず見惚れる容姿であり、頭もキレ、性格も非常に良い…女子であるなら妬むか、彼女のようになりたいと思う程だ

なんというか、そんな人の裏の素性を知ってしまったというか、複雑な気持ちであり、これからリリス先輩とどういう顔で会えばいいのか


〈道理で、リリスが来るのを少し遅れるって言った訳ね…〉

「え?そうなんですか?」

〈知ってるのは私と先生と…部長である徹也ぐらいじゃない?〉

「どうするんですか?リリカちゃんこのまま連れていったらマズいんじゃ?」

〈いや、それは問題ない…私からリリスに伝えておくわ〉


そういうことで杏奈先輩に電話を切られる


「家庭の問題じゃ、僕たちがどうこう言えた問題じゃないですもんね」

「そうだけどね…リリス先輩はリリカちゃんとは会いたくないんじゃ?」


義母と仲が悪いことを考えれば、そう思うのだが


「どうでしょ?リリカちゃんはそう思っていないというか…姉妹仲自体は良好なんじゃないんですか?リリカちゃんの表情を観れば、そう感じますけど」

「わざわざ言葉がわからない日本に来ることもないか…」


お兄ちゃんと手をつなぎながら、笑顔で話してるいるリリカちゃんを見れば、優輝君の言う通りであろう

何故か、手を繋ぐお兄ちゃんとリリカちゃんを見てしまう


「どうしたんですか?結衣先輩?」

「うん?いや、まあ…もし私が小さいければ、お兄ちゃんと手を繋いでいた小さい頃もあったのかなってね」


山岡徹也と人物と初めて会って、そして兄として認識するようになってまだ一ヵ月程であるし、別に一緒に暮らしている訳でもないのだが…そこは血の繋がりか、遺伝子の繋がりなのだろうか、不思議な感覚である

が、私の小さい頃を知っている優輝君は吹いていた


「いやいや、あの頃の結衣先輩が手を掴んで振り回すタイプですよ。リリカちゃんのようなタイプではないです」

「笑う程否定する!?」

「自分のやってきたことを思い出してください。ドロップキックをかますような人が、大人しく手を繋いで歩くようなお淑やかな人じゃありませんよ」


そういえばそうだった、思い出すだけで懐かしいなと思うと同時に恥ずかしさで赤面してしまい


「…優輝君のいじわる」


っと返した


「…そんな結衣先輩だから、好きなんですよ」

「?」


何かボソッと、優輝君が呟いていたが聞き取れなかった



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