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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
108/121

ACT.101 小柳加奈は、日常の生活へ…

ヴィシュヌ事件後、須田兄妹の容態や精神状態が安定したことと、その他諸々の報告書や始末書の処理に追われる羽目になった

なにせ、特務機動隊の最高指揮官である小柳父さんの黙認とは言え、重大な命令違反を犯した以上、組織としては体裁としての始末が必要であるが…まあ、書類の量とか書く内容に悩まされるや、期限も短いわで…結局ほとんど不眠不休でやり、終わったのは深夜であり、夜中に榛奈町に戻された…よりによって、テスト当日に

小柳父さん曰く「まあ、加奈なら、公立校のテストぐらいならなんとかなるだろ」とのことだが、赤点とっても差し支えないということも含めての言葉だろうか

アパートに来る頃には、やや薄暗い夜明けの午前4時前…もはや早朝である

ぶらついた足で、やや寝ぼけながらアパートの部屋に入る


「…シャワーでも浴びるか…」


今、横になって寝たら確実に起きられないことを考えて、着替えついでに目覚ましのシャワーを浴びることにした



目を覚ませば、PCとタブレットとノートが散乱しているテーブルにうつ伏せて寝ていたようだ

このテスト前の数日、修羅場、デスマーチ状態であった…自動車部の成績がよろしくない奴らに勉強を叩きんでいた為に、慢性的な寝不足である、思わず欠伸が出てしまう程

勉学は興味を持たせることから始めなければならないし、そして達成感…そこと、要点を叩き込んだから赤点回避、平均点以上は取れるだろう

加奈がしばらくいなかった数日…むしろ居なくてよかったかも知れない、寂しいとか、そんな感情抱いている暇がなかったからだ


「…シャワーでも浴びるか…」


眠気覚ましのシャワーを浴びようと、脱衣所に…この時、寝起きかつ、頭をフルで使う作業をしていたせいか、気づけなかったのだ、脱衣所とシャワー室の異変に

脱衣所の扉を開けると、そこには

湯煙と共、美しい女神のような、素晴らしい女性がそこに立っていた

引き締まった体ながら、出ていると所は出ている、美しい形の腰回りに素晴らしく美しい形のたわわな胸…その体の造形美に目を奪われていた

女神はキョトンとした様子だったが…二コリと微笑んで…

そこからの記憶はない…なにか、とてつもなく恐ろしく、痛い目に遭ったような気がする



やってしまった…まるでサスペンスドラマの犯人のような言い方だが、やってしまった

そもそも、鍵を使わずに入った時点で自身を疑うべきだった

間違えて徹也の部屋のシャワー室を使っていたのだ…いくら疲労困憊とは言え、間抜けにも程がある

徹也が目の前に現れたことで、数秒互いに膠着し、そして自分が今置かれている状況を察した

もう、後は反射的な行動、恥ずかしさから来た衝動的反応行動で、徹也を床に叩きつけて失神…させた


「…し、死んでないわよね?」


少し、変な方向に首が曲がってる気がするが…一応首元の脈を測る……ちゃんと脈があるから死んではいないようだ

今更、いろんな人に抱かれて来て、そういう女の使い方の訓練を積んできたから、異性、誰かに裸を見られる程度で恥ずかしくなるようなことはないと思っていたが…意中の相手、徹也相手だとこうなってしまうのか、この私、小柳加奈は…なんとも情けない


数時間後


「うーん…?」


ベットに寝かせていた徹也が、どうやら目を覚ましたようだ…状況が把握出来ていないのか、間抜けな声と周囲をチョロチョロ見渡し、看病していた私と目が合う


「……どういうことか、説明はあるか?オレ、女神みたいなものを見てからの記憶がないんだが?」

「うん、なんというか…ごめんなさい」


とりあえず、床に投げ飛ばしたことを謝罪する…というか、女神って


「まあ、深く問わないが…今何時だ?」

「…午前11時過ぎ…うん、ホントにゴメン」


約7時間以上、徹也は気を失っていたのだ…完全に遅刻である。よりによってテスト当日に


「…今更、学校に行っても仕方ないな…まあ、なるようになるか。よいっと、な」


徹也はベットから起き上がり、体を伸ばす。どうやら、投げられたダメージは回復したようだが…やたらと回復が早い


「加奈、帰ってから何も食べてないだろ?今、用意する。オレも腹が減った…どうせ、加奈も今日は学校には行かないだろ?」

「まあね、連絡済みだけど…やれやれ、そんな元気なら看病の必要はなかったかしらね?」


徹也が手際よく、軽い食事を用意し、互いにテーブルに座る…この感覚、数日振りなのに、なんか懐かしい気もするぐらい、裏の日常に居過ぎた気がする…命懸けの世界から、日常の世界…彼がいる世界に、帰ってきた実感が湧く

食事を終え、徹也に質問をぶつける。例のお守り代わりのUSBのことだ


「徹也、とりあえずこのUSBは役にたったけど…アンタ、これが必要になるというを、予想していたの?」


一応、小柳父さんからは聞いていてはいたが、本人から直接確認もしてみた


「あ、やっぱり必要になったのか。先日、小柳さんの電話からは、『加奈がどういう事件に絡んでいるのかわかっていたのか?』ということだったし…一応、例の猟奇殺人事件じゃないのか?って答えたけどな、あの現場の周囲、どうにも車の盗難がここ最近多かったからな。まあ、どのみちアイを持たせておけば、何かしら役に立つだろうなって思ったがな」


どうやら、徹也は事件の詳しい詳細は知らされていないようだ。それもそうかもしれない、アルカディア機関の計画に関わっているとは言え、徹也は特務機動隊のような裏舞台の世界に関わるべき人間ではない…彼は、日常の世界に生きるのだ


「…色々考え込んでいるな」

「まあね、何を話したらいいのやらってね」

「別に、話さなくてもいいんじゃないかな。オレも詳しくは追求する気もないし、特務機動隊のことを聞くことはないがな…ただ、加奈が無事に、目の前にいるだけで十分だと思ってる」

「よくもまあ、そんな恥ずかしいことを言うわね…嬉しいけどね」

「ああ、そんな目付きと顔していればなそう言わざるを得ないんだよな…加奈、お前、自分の今の顔を鏡を見たか?」


徹也は手鏡を出し、私に渡す。そして自分の顔を見ると…それは目付きが険しく、殺意に満ち溢れたモノだ


「…酷い顔ね」


心当たりはあるというか、当然である。数日前にヴィシュヌの構成員相手に容赦なく、慈悲もなく銃と爆弾での殺傷行っていたのだ…私の顔は殺人者の顔だ

私利私欲の為に何十人の人の命や、人生を滅茶苦茶し、あまつさえ自動車を利用した犯罪を行っていた相手に怒り、その後に知ったガーネェヤの過去…人の悪意を見過ぎたせい、気分は複雑…いや、怒りに満ち溢れていたのだろう。それが隠せないほどだ…莉々と話していた時は、何とか抑えていたのだろうが、日常の世界に戻ったことで、気が緩んで感情の抑えが利かなくなっていっただろう


「情けない話ね…これ徹也じゃなくてもわかるわね」


工作員として、殺意を抑える術を得ているはずだったが…今回はそれ程、何かしら思うことがあり過ぎた


「正直、マジマジと対面して、表情と目を観てるオレも結構ビビってるぐらいだ。そいつが、工作員、特務機動隊の小柳加奈という訳か」

「…幻滅したかしら?」


意中の相手に、この顔で振る舞っていたというのが…が、徹也の回答は意外なモノだ


「いーや、むしろ心強いかな?オレや結衣に何かあったら、加奈は本気で守ってくれそうなそんな雰囲気はあるな…まあ、今日学校を休めたのが幸いだったな。そんな顔でみんなと会いたくはないだろ?…今日はメンタルケアに専念するか」

「そうね…メンタルケアか」


徹也の言う通り、結衣達にこの顔は見せられるものじゃない…しかし、メンタルケア、気分展開ということになると


「デートでもする?」

「バカ言え、ズル休みしてデートする学生がどこにいる…いそうだけど」


実のところ、徹也とは一度もデートをしたことがない。いやまあ、当然と言えば当然。告白されてから、自動車部の再編に、テスト期間、終われば全国大会だ。まるっきり暇がなく、いい所、こうやって食事して会話をする程度だ

仕方ないとは言え、そういうことにはやや不満がある

なので、少し強硬手段に出ることにした、少しわざとらしく考えたふりをして…


「そうね…ならさっきの投げたお詫びを含めて……一緒に寝ましょうか。徹也」

「…はい?」


予想外の回答、そして隙を見せたこと…徹也の観察眼は見ることに専念する分、タイムラグがある。ほんの一瞬程度だが、その一瞬程度で十分であった

彼の視界から外れるように動き、そのまま捕まえると、ベットに押し倒した


「ちょ!?加奈さん!?」


流石に慌てる徹也、私の呼称が、敬称になるぐらいには。そう、徹也はこういう状況になれば奥手であるのか、私がいくら誘惑しても乗ってこないのだ


「ねえ、徹也…私は、貴方に体を預けていいと思っているのよ?貴方になら…私は…」


恥ずかしながらも思いを言う…が、徹也の反応がおかしい、普通なら照れるとか頬を染めるとか…そういうリアクションがあっていいはずなのがだ、徹也は青ざめていた、いや、その反応はおかしくね?


「いや、その反応おかしくね?」


思わず、心に思ったことを口に出してしまう


「いや、加奈…確かにお前のことは好きだ。こういうことも将来はしたいよ?だがな…いまお前に手を出したらな…」


徹也は唾を飲んで、意を決して…


「たぶん、小柳さんに殺される…!物理的か社会的に!どちらかの方法で確実に報復を受ける…!!」


あー…そんなことはないと思うけど、そうか…山岡徹也にとっては、小柳という存在はある種の抑止力かつ恐怖なのだろう


「頼りになる大人であるけど、同時にオレにとっては天敵だよ!もし娘である加奈に手を出したら…想像するだけ恐ろしいんだよ!!」

「それで今まで、私が誘惑しても乗らなかったの!?」

「せめて責任が取れる年齢になったからにしてくれ!」


そんなことはないと、徹也に強引に迫ろうかと思ったが…責任が取れる年齢ということを考えてることと、困っている相手に迫るのも…萎えてしまったので


「なら、添い寝させて」

「いや、ちょっとそれもそれで問題…」

「お願い…」


徹也は私の表情で、不安を察したか


「…そんな表情をされてはな、まあ、美人の添い寝を断るのもアレだな」

「ありがとう」


徹也は私の背を向け、私はそのまま彼に抱きつく、まるで抱き枕のように


「オレは抱き枕かよ、嬉しいけど!!」

「嬉しいならいいじゃない」


徹也は何が嬉しいのかはあえて言わないが、まあ、胸部だろう、あえて押し当てているが…意外と落ち着く、落ち着いて、この感情を吐き出したいと思うようになるが…それをグッと、堪え、飲み込む…少なくとも表舞台の彼に、聞かせるような話ではない


「…加奈、一つ、言い忘れたことがあった」

「何かしら?」


次に徹也が発した言葉、優しく、そして聞き心地のよいもの


「…お帰り、加奈」


その一言で、吐き出したいという欲求が消え…安堵、安心、そんな温かな、心地の良い気分になった

ああ、そうか…私が守ろうとしたのは、この帰るべき場所の世界を守る為だったんだって…


「ただいま…」




ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ 完

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