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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
106/121

ACT.99 ヴィシュヌ事件後日談 ガーネェヤ

小柳から、自分の進退と兄さんの事、そしてもう一つ気がかりのことがあった


「小柳、ガーネェヤについて教えて貰ってもいいか?」


ヴィシュヌの幹部であり、僕と対峙したガーネェヤ。最後は小柳に真っ二つバラバラにされたサイボーグ、彼女の言葉と行動、殺害方法には何かしら気になっていたのだ。ただの快楽殺人ではなく、れっきとした憎悪か復讐という目的行動意志があったのではないかと


「ガーネェヤか…長い話になるが、構わんか?」

「構いません、一体何が、彼女をあんなに怪物にしたのか」

「怪物か…的に得た例えだな。あの怪物を作り出したのは、結局は人の業だ。アラブ生まれの所謂御令嬢という立場だった彼女は、ホントに美しく人を惹きつける妖艶な容姿、だが心優しい女性だったそうだ…もっとも、それは20年前の話になるがな…」

「20年前?」


サイボーグだから、容姿による年齢は当てにはならないが、思った以上の年齢なのか


「当時、旦那の仕事の都合で日本に訪れていたガーネェヤは、ある自動車事件に巻き込まれた。これが全ての始まりだ。ガーネェヤ命は取り留めたものの、ほとんどの四肢と臓器が使い物にならない程の重体…そして、ガーネェヤはその時身籠っていたのだが…胎児は死に、2度と子を産めない体になってしまった」

「…大型トラックにでも轢かれたのか?」

「いや、乗用車だが…ぶつかった際、壁と車に押し潰されたまま、そのままアクセルを踏まれていた…というものだ。ドライバーは何十分も、ガーネェヤが悲鳴を上げても止めることがなかった」

「ツぅ…それは、キツイな」


以前にも、似たような事件があった。1トン近い無機物の塊に押しつぶされ続ける地獄を、ガーネェヤは生きたのか…いや、むしろ死んだ方が幸せだったかもしれない程の苦痛だったはず


「…妙だな?その事故は、公にされていないのか?」


自分の記憶力には自信がある。そんな悲惨な事故なら、何かしら報道や記事になっているはずだが…少なくとも、僕は見たことはない


「神也、事故ではない。事件だ。ガーネェヤは交通事故に装って、意図的に車に押し潰された。先程も言った、当時のガーネェヤの家族、一族を目の敵にする連中に襲われた」

「政治家絡みか?」

「そんなところだな。ガーネェヤを自動車で轢いたのは、脅された日本人男性だった。彼も可哀相な被害者だよ、黒幕は色々根回ししたようでな、公にされることなく、そんな事故、事件がなかったように揉み消された…ただ、奴らの誤算は、ガーネェヤが生きていたことだな」

「…暴力か凶器に殺傷では、事件性があるが、自動車によるものなら、揉み消しが失敗しても偶発的な事故として片づけられることも出来たということか?」

「なんなら、誰でも容易く凶器に出来るという点もあったんだろうな…扱い方次第で、車は鉄塊と言う名の凶器出来るからな…ふざけた話だ。自動車も、それを作ったメーカー、そして脅されて行った者も、そんな使い方は不本意極まりないがな…」


力も技量もなくとも、動かすことが出来れば自動車は容易く凶器にし、悲劇を生み出すことが出来る。人畜無害なその辺の主婦ですら、その悲劇を引き起こす当事者になりかねない道具なのだ


「だが、奴らの誤算はガーネェヤが生きていたことだ。重体になったガーネェヤは当時のサイボーグ技術によって、立ち上がることが出来るようになった…そして、心優しかった彼女の面影はその時に消えた、収まることのない復讐と憎悪の、狂気の怪物となった」


いつの時代、人を怪物に変えるのは、いつも人による悪意だ


「しかし小柳、あれだけのサイボーグ技術…一体どこの組織が?ヴィシュヌか?アルカディア機関に匹敵するような技術力じゃ?」

「ガーネェヤをサイボーグにしたのは、ヴィシュヌだ…厳密に言えばその前身組織だな。彼女に組まれていたサイボーグ技術は、当時では既存技術であり、現代なら旧式の規格に当たるらしい…彼女の残骸から、専門家に解析させた結果だ。旧式の既存技術であるが、発想力と応用力がアレを作り出した…その後、ヴィシュヌの殺し屋となった…まあ、サイボーグ技術で蘇生されるという取引でだったのか、それとも彼女が望んだかはわからんがな」


望む、望まないというより、生き残る為の選択肢はそれしかなかったのかもしれないか


「サイボーグ技術自体を人体に施すこと自体は違法行為ではないからな…義手義足、そして一部臓器の機械のよる医療行為として使われているが、武装や凶器を組み込むのは違法行為にあたる。奴のスピニングナックルは殺傷武装にあたる」

「そういう目的で彼女をサイボーグにしたのはあきらかだな、確実に殺傷、対物破壊も可能な攻撃力、携行火器が通用しない防御力を兼ね揃えた存在は、暗殺者としても兵隊しても理想的な存在だ」

「まるで、人の形をしたヴァルキリだな…」

「そして、ガーネェヤは戦場で傭兵まがいな仕事、暗殺者として裏の殺戮世界で生きてきた…何人も何十人も殺し、その力と技量を得ていった…そして、今から5年前、ガーネェヤは再び日本に来た」

「5年前か?その頃からヴィシュヌが活動し始めたのか?」

「いや…ガーネェヤ、彼女自身の復讐の為にだ…彼女は故意的に自動車事件を起こした日本人男性を殺しにきたのだよ。彼は事故後の10年間の間に、結婚し、妻と子供二人の家庭を築き上げていたが…彼を含めて妻子全員皆殺しされた、今回と同様の手段でな」

「5年前にも起きていたのか…」


因果応報かもしれないが…複雑な気持ちになる

ガーネェヤの気持ちもわからないわけでもないからだ。自分の人生をズタボロした者が、のうのうと幸せな時を過ごしている光景と情報を知れば、ドス黒い、怒りと憎悪の感情が湧くだろう

ましてやお腹にいた子供を殺めた相手が、子供を作って、家庭を築いている知れば…だが、その妻子には罪はない。それはわかっていても止められない、止めることが出来なかった殺戮の悲劇だろう


「体をズタボロにされた時か、サイボーグになった時か、暗殺者になった時か、それとも5年前に手を掛けた時か…いつからタガ外れたのかはわからないが…ガーネェヤは、全ての日本人を恨むようになった、無差別に、嫌悪と憎悪の対象として…」

「いつの時代、怪物を作り出すのは結局は、人の悪意と業、罪…無関係な人間を巻き込む」


ガーネェヤを認めるわけではないし、彼女の行動は正当化出来るものじゃない…認めてしまっていけない、同情をしてはいけないのに…考えるのはよそう


「しかし、公にされていない割には、随分詳細があきらかだな?」

「実はな…ガーネェヤを重体にした自動車事件の裏を引いていた政治家はな、数年前にも同じ手口を使ったが、特務機動隊が逮捕したんだよ。余罪を追求した際に、ガーネェヤの件もあきらかになった…現在は実刑判決を受けて、牢の中だがな」

「同じ過ちを繰り返すとはな、救いようがないが…牢屋にいてよかったというべきか…」


牢屋じゃなければ、ガーネェヤに惨殺されていたという皮肉な状況

そう考えてると、思わず苦笑してしまう


「ガーネェヤの存在は、裏の暗殺の業界では有名だからな…ヴィシュヌの女幹部の美しいサイボーグの暗殺者ぐらいだったがな、数年前と今回の事件で、彼女の素性と過去を知り得たということだ」

「ここで、引導を渡せたのは、救いだったか…」

「少なくとも、彼女の存在はこの世界にいてはいけない存在だというのは間違いないがな…神也、特務機動隊が介入するのは、常に既に手遅れで、最悪な状況だ。特務機動隊が関わる事件にはハッピーエンドというのはない、ビターエンドがせいぜいだ…何もかもは救えない、それだけはわかってくれ」


察しつかれたのか、それとも釘を指すようになのか…


「…ヴィシュヌという、組織はどうなるんだ?」

「ヴィシュヌは、元々アラブ圏で暗躍する組織だからな…自動車絡みならともかく、特務機動隊に捜査権限はないから、あとは国際警察が動くだろうが…しばらくは活動を沈黙するだけで、組織は生き続けるだろうな、もっとも、2度、ふざけた自動車窃盗をやろうとは思わないだろうがな」

「奴らの貨物船を大破させた挙句、ほとんどの人員は逮捕されて大打撃を受けたわけか…」

「案外、反社会、犯罪組織はしぶといからな…もっとも、特務機動隊も表裏一体の存在だがな」

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