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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
105/121

ACT.98 ヴィシュヌ事件後日談 白柳神也

小柳のゲンコツの一撃で、失神して…気がつけば、市民会館地下の特務機動隊拠点の自室のベッドに寝かされていた

部屋の扉は外からロックをかけられて、実質的な監禁状態だった。どうにも命令違反による正式な処分が決まるまでは監禁されるそうだ

幸い、風呂とトイレはついており、食事を与えられるが…時間を持て余す

筋トレと、そして色んなことを考えながら過ごして3日間後、扉が開けられる


「…僕の処分が決まったってことか?小柳?」

「ああ、そうだ」


迎えたのは小柳、特務機動隊指揮官直々に処分を伝えに来るとは


「白柳神也、特務機動隊員としての活動を凍結する。今後は白柳学院でSSR計画に従事せよ…ということだ」

「軽い処分ですが…都合がいいことですね、招集させておいて、そして命令違反をされるように誘導させておきながら」

「悪いと思っている。コレは私のエゴだからな」

「この監禁されて三日間、時間があったから、色々思考して、おおよその理由はわかったが…出来ることならアナタから聞きたい」

「いいだろう、どうせなら外の空気を吸いながら話そうではないか」


小柳に連れられて、市民会館屋上、時刻は夜。都市の夜景が見える場所で、時間帯的に交通量がやや多い時間帯


「さて、どこから話すべきかな?」

「まあ、まずは…アナタは、今回の事件の黒幕であるヴィシュヌという組織であったことはわかっていたんじゃないんですか?そしてガーネェヤもいることも」

「おおよそはな、殺害方法で大体誰がやったかは9割方目星はついてはいた。一応、私はそういう暗殺や裏の稼業についてはそれなりに情報は入ってくるからな。だが、ヴィシュヌがどうやってこの日本での活動しているのか、活動拠点はどこなのかはわからなかった状態かつ、警察内部で、誰かが情報を流出及び隠蔽してる疑いが、今回の窃盗と猟奇殺人は繋がっている可能性はあったということぐらいだ、あくまでもな」

「結果的に、一部の公安の刑事がヴィシュヌと繋がりがあった…解決した事件に対してはそこまで気にしてはいないが…小柳が懸念していたのは、SSR計画で造られた人間が成果を挙げることだったんじゃないんですか?それがアナタの言っているエゴなのでは?」


ここからは、僕なりの推察と考察である


「小柳は、SSR計画の人間を特務機動隊や工作員として扱うのことは好ましくないと考えているんじゃないですか?個人的には、自動車犯罪や人助けをする行為に対してはやぶさかではないが…行き過ぎた力は、また別の問題を起こしかねない。特に今回成果を挙げて、今後も僕たち兄弟達、姉妹達を使うような事態…いや、兄さんを使うような事態は一番最悪のケースになりかねない」

「…気づいていたのか?徹也の本当の素質を」

「報告書を読んで、実際に会話して対面して、今までの成果を見ていれば兄さんの素質はなんとなくは…歴史を少しかじっていれば尚更。"支配者たる素質"、歴史に名を残した独裁者…近いものなら、ドイツのアドルフ・ヒトラーの同等か、それ以上の力を兄さんは秘めているんじゃないかって。今はその才覚の片鱗程度を見せているが、特務機動隊やアルカディア機関の事件、事態に関わっていれば、いずれは開花してしまうんじゃないか?って…」


よりによって、兄さんを最悪の独裁者に例えるのは、心苦しいモノがあったが、そう例えるしかなく、それ程までに兄さんの力はそれに近いものである

兄さんの素質を開花させてしまえば、取り返しのつかない最悪の事態になる可能性も否めない


「なるほど、私がもっとも懸念としてることを理解していたとはな…流石だ神也、その推測おおよそ当たっている。山岡徹也を特務機動隊の任務で扱うような事態を避けたいのが本音だ…だからこそ、今回の事件と君を利用させてもらった」

「SSRの計画の人間は命令を反する行動を起こし、他隊員に危害を加えてでも独断行動に走り、制御が出来ない…そういう印象をアルカディア機関の上層部に与えることで、扱いに関して改めて慎重に判断しなければならないっと、思わせる」

「上層部の一部に、SSR計画をレース競技ではなく、戦闘行動や工作員向けに教育すべきではないかという考えも持っている連中が、今回の特務機動隊の任務で実験的に白柳神也を使うという提案を強引に推し進めて、今回招集したのだよ」

「噂程度で聞いたが…遺伝子操作で造られた強化人間のような存在を兵士にでもするつもりか」


SSR計画の発足時に、一番危惧されていたのは戦争利用である。クローン技術は既存技術であるが、遺伝子操作による先天性の身体能力強化技術は、アルカディア機関の独自に技術であり、門外不出の技術とされる

SSR計画で造られた人間の育成や、成長実験は行わているものの、現在は遺伝子操作技術による人工生命体の開発は、アルカディア機関では封じ、厳重に技術を保管しているが…

組織自体が大きい故に、様々な思惑や野望が渦巻いてしまっている。アルカディア機関という組織は一筋縄ではいかないというのが実情である


「彼らなりに、自動車社会の秩序を守る為だと思っての考えであることは否定はしないがな…あまりにも凶悪かつ、高性能な自動車犯罪に対して、特務機動隊やヴャルキリといった独自のテクノロジーを持ってしても苦戦を強いられている事件が起きているのも事実だ。より強い力で抑止力を高める」

「強すぎる抑止力というのも、考えものな気がするが」


それでは、イタチごっこであり、泥沼である


「現代の自動車を含む機械は、アルカディア機関の技術革新によって飛躍的な進歩を遂げた責務だろうし、結果的に悪しき者に悪用され、人々を脅かす怪物を作り出したことへのな…もしかしたら、アルカディア機関の技術革新は、まだ人類には早過ぎたかもな」


アルカディア機関の技術は、いわばプロメテウスの火と呼ばれるべきか

その技術革新を悪用された結果が、自動運転禁止法及び、公道走行車両通信接続規制法が生まれてしまった…一部の悪意ある者たちによって、悲劇を生み出し過ぎた為に、この世界は自動運転という可能性閉ざしてしまったのだ


「その人らに悪いことをしたかな…」

「罪悪感を感じても仕方ない神也、これ以上考えても"もしも"の時の話ししか出来ない。どのみち君たちの存在は誰かを救うこともアレば、新たな災いを生むかもしれない…キリのない話をしても仕方あるまい」


互いに、その手の話題で話し合ってもキリがないと、話を切り上げることにし、ここで再び兄さんの話に戻すことにする


「元々、小柳としては兄さんを巻き込みたくないというのが本来の目的みたいだけど…今回の事件は兄さんは自分の意志で関わったんじゃないかな?偶然や偶発的なものではなく、自らの判断で。加奈に持たせたUSBメモリーとAIアイの存在がその証拠だ」


加奈曰く、お守り代わりに要求したら、それを持たされたということらしいが…ただのお守りとして、兄さんが意味もなく渡すとは考えにくかった。この状況になる可能性を想定していたのではないかと


「今回の猟奇殺人事件については、一般に報道されているし、SNSでは盗難車の情報を拡散されるのは日常茶飯事だ。殺人事件の場所と盗難多発している地域、そして特務機動隊への招集命令…その情報でつなぎ合わせれれば、この地域で何か起きる。それも殺人絡みで…兄さんはヴァルキリや、特務機動隊の装備については知らないと思うが…技術力を考えれれば、電子戦に特化の切り札を持たせた方が役に立つかもしれない。そんなことを考えていたんじゃないかな?」


考えすぎ、買いかぶりすぎかもしれない。ただ単に、兄さんが気まぐれでたまたま渡したかもしれないし、いざという時の為ぐらいしか考えてなかったかもしれないが…


「…昨日な、徹也に電話で聞いてみたんだよ。神也、ほとんどその通りだ。彼はこの状況になるかもしれないというのを予測していたよ。加奈がどの地域に行くのもな…」

「流石というべきか…ゾッとするぐらいの未来予測というべきなのか…」


知能指数は、兄さんより僕の方が上回っている自負はあるが、あの観察眼と洞察力、そしてそれを使いこなす思考能力はバケモノじみている。競技に使う分には、平和だが、こういう事件に対して本気に使えば…


「徹也の根底的な願いには、加奈の為と今の自動車社会の為に何かしたいという…神也、君と同じ、彼も正義の味方でありたいのだろう」

「…もしかして、兄さんを使いたくない本音もあるけど、その反面勿体ないと思っているのか?小柳」


小柳は、未練があるような言い方に聞こえたので突っ込んでみた…そしてなかなか返事をしないところを見ると


「図星か…」

「…徹也は、"支配者として素質"を持っているが、それを抑えれる程の善意を持っていることを知ってしまったからな。彼は力の使い方を誤ることはないという確信がある。故にな…」

「そう思うなら小柳。兄さんが協力したいって言われたら、迷わず協力させた方がいい。僕は今後しばらくは、特務機動隊の任務に協力出来ないけど、兄さんなら…」

「だかな…それは…」


小柳は、悩み、その場では答えなかった。この男にそこまで悩ませる兄さんは、やっぱり罪深い

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