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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
104/121

ACT.97 ヴィシュヌ事件後日談 須田莉々

須田良輔が目を醒ます前日の話になる

お兄ちゃんと同じ病院だが、別の病室で私も目を醒ました…部屋は個室で、久々にまともな服を着せられていた。病院服だが


覚えているのは、よくわからない車に乗せられて…そこで強い衝撃があったことは覚えている。お兄ちゃんが強く抱きしめて、守っていてくれたのは


「んー?目を醒ましたようね。どうかしら気分は?」


黒いスーツを着た、私と同い年くらいの女の子がPCで何かしらの作業を止めてこちらの様子を訪ねてきた


「…ここは?それにあなたは?」

「病院よ、私はアルカディア機関特務機動隊所属、小柳加奈。よろしくね須田莉々さん」

「あ、アルカディア機関?特務機動…隊?…えーと…警察かなにか?」

「警察とは全然違う組織、正義の秘密組織みたいなものね」

「???」

「一から説明すべきね…まあ、仕方ないけどね」


加奈から特務機動隊という組織の事や、今回のヴィシュヌの事件の顛末を知らされた

そして日本にいたヴィシュヌは、私が救出された夜に壊滅したということ…というか目の前に話していた加奈一人でほとんどの構成員を壊滅させたという話は後々聞くことになるが…


「…ということよ、わかったかしら?」

「うん…大体は…そうか、私、助かったんだ…そしてお兄ちゃんも…」

「良輔の方は、身体的なダメージが大きすぎるからまだ意識が覚めてないけど…多分明日には覚ますというのは医者の話だけど」


とりあえず、安堵する。助かったという事実が…


「それで…良輔の方はそこまで重くないけど、あなたの方が事態は重いわね。どんな目に遭ったのかは、おおよその検討がつく」

「…あ」


加奈の言葉に、お腹に手をやる


「…安心して、デキてはいない。問題はそこじゃない、精神的なもの…ほら、涙が出てるわよ」

「え…?」


顔に手をやると、涙が流していた…そして体も震えていた。加奈が差し出したハンカチで涙を拭うが…涙が止まらない


「心に負った傷は、体の傷を治す以上に治るのが至難だからね…」




参った、予想はしていたけど、かれこれ数十分泣き続ける莉々になんて声をかけて励ませばいいのかと、言葉が見つからない

ハンカチどころか、タオルを莉々に渡す羽目になった

徹也なら、言葉のワードとトーンを巧みに使って励ますことが出来るだろうが…そうだ、思いついた方法があった、というか私自身がやってもらったやり方だ

泣いている莉々を抱きしめた、頭を撫でる


「大丈夫、もう怖いものないから…ね?」


優しく、耳元で囁くよう語りかけながら、莉々を強く、加減しながら抱きしめる

以前に、徹也の母親である山岡 華が私にやった手法である

ダメ元で試していたが、震えていた莉々が徐々に落ち着いてくる…効果はあったようだが…うん、まあ後々やらなきゃよかったというのは話は一旦置いておくとしよう


「落ち着いたかしら?」

「は、はい…ありがとうございます、えーと…小柳さん」

「加奈でいいわ」


小柳と呼ばれると、どうしても小柳父さんの方がしっくりくる


「とりあえず、今、あなたに置かれている立場について説明するわ。特務機動隊のことは話したけど、秘密組織故にそれに深く関わった良輔と莉々はしばらく監視が付けられることになる。私達のことを秘密にして欲しいから故なんだけどね」


一応、特務機動隊の存在を仮にマスコミに垂れ込んでも、特務機動隊の存在は記事に出来ない。圧力というか、そういう手回しをしており

SNSに書き込んでも、映像や画像の証拠が残らない為に信憑性が薄いという点もある

監視が必要なのは、彼らの安否的な心配を含めてでもある。ヴィシュヌの残党が狙わないと限らないからだ


「ただ、莉々の場合は通ってるいる高校あったわよね?」

「はい、地元の…でも一ヵ月も消息も絶っていれば、学校も…」

「除籍扱いされてるわね、仕方ないちゃ仕方ないけど…望めば復学の手続きは出来るらしいけど…どうする?正直、あまり勧められないって、うちの指揮官が言っていたけど」

「…あらぬ噂や疑い、そしてそれに対処や配慮出来るような学校ではないから…ですか?」

「察しが早くて助かるわね。その通り、後はメンタルケア出来るような環境もないからということね」


結衣の前例を思い出すが、メンタルケアが出来る心理士やそれに近い存在が身近にいるかどうかでは大きく違う、キッカケにはなる。徹也のおかげで今の結衣はPTSDは改善されたが、そこには森先生の協力と知識があったからこそだと、徹也は語っていた

だが、莉々の通っていた学校にはその環境がない。だが、案がないわけではないのだ


「これは、提案なんだけどね。莉々を私達特務機動隊が属する、アルカディア機関が運営する学校に入るという案があるの。白柳学院って関西の学校なんだけどね、まずはメンタルケアの治療とプライバシーの配慮は保証、学費は無償…私達のメリットは監視が容易になるぐらい」

「学費もですか!?」

「監視の費用が浮くからね、それだけでもね…まあ、真面目に勉学に励むのは前提条件だけど」


学費無償の理由は、莉々には話さないが…良輔を特務機動隊に入れるということで、報酬の一部を学費に当てるとのことだ。この時は良輔が入るかどうかはわからなかったが…小柳父さん曰く「必ずに話に乗る」とのことだった。後々、そうなったが


「まあ、学校の友達とか、地元から離れたくないとかなら仕方ないけど…」

「いや…お兄ちゃんが帰れる場所があるならどこでも変わらない。それに、私達にとってはこの地域に未練なんてないんだよね」

「麗しい兄妹愛ね…兄妹っていうのは、やっぱ仲がいいものなのかしら?」


徹也と結衣の関係もだ、接した時間より血の繋がりの縁は強いというべきなのか


「どうだろう、親戚がロクでもないからというのもあったんだろうけど…それでも、お兄ちゃんは罪を重ねても私を救おうとした、昔からそうなんだよね。イジメられてる私を助けたり…昔から私のヒーローだった。そして今回も…助けてくれた…もちろん、加奈達にも感謝してるよ」

「それでも、良輔の必死の訴えが無ければわたし達が動かなかったのは確かね、良輔は間違いなくあなたのヒーローね」


今更ながら、結衣や徹也達に出会わなければ私は莉々を見殺しにしていたか、少なくともリスクのある判断はしなかったかもしれない

どちらにせよ、徹也の策とAIのアイがいなければ成り立たなかったが


「結局の所、私達特務機動隊の都合に巻き込んだ…巻き込まれたと思ってくれていた方が気が楽かもね。実際事実的にはそうだし」

「でも…それじゃ…」

「法で裁けれない、裁くのが困難。秩序の法の番人が対応出来ない悪意の抑止力として存在する特務機動隊は、正義の味方であっても讃えられることはあってはならない、法を破っているからね。だからそこにあるのはメリットかデメリット…良輔や莉々の待遇を用意して、それを受けて貰うのは私達にとってはメリットであり、喜ばしいことなのよ」


考え込んでしまう、莉々。当然だろう、色々とこれからの事を考えなければならないのに、選択肢や情報が多いのだから、すぐに判断は出来ないだろう


「今はゆっくり休みながら、今後のことを考えて貰えればいいわ。後は、病院と他の特務機動隊員のリィンって人が面倒を見ると思うから」

「え?加奈さんは?」

「私は他の仕事と任務をしているからね。本来の任務に戻るんだけど…なにか聞きたいことがあるからしら?」

「え?…えーと…」


莉々は何故か、顔を赤らめながら何を聞こうかと内容を考えて


「か、加奈さんっていくつ何ですか?なんだか、私とそう歳が変わらないような…?」

「あー…そういうば言ってなかったかしら?一応16歳、今年で17になるわね。高校二年生よ。確か莉々は高校一年生よね?」

「あ、はい…そうか、年上なんだ…あ、あの、その…か、加奈さんは」


なにか言いよどんで、なにか決心したように口を開く


「加奈さんは、お付き合いしている人はいるんですか!!」


あ、うん…莉々の意外な質問の内容に驚いたが…莉々から感じる何かしらの雰囲気、山岡華(徹也の母親)と同じ何かという…少し危うい性癖…もとい趣向を思い出した…


「生憎…将来を誓った相手をいるの。念のために言っておくと、男だからね?」

「…そうですか…はぁ…」


予想通りに、落胆する莉々…まさかだと思ったが、さっき程励ます為に抱きしめたのがキッカケになったのか、元々そういうタイプなのかはわからないが


「…友達として、お付き合いは出来るけどね…もっとも、直接会うのは難しいけど」

「加奈さん…いや、お姉さま!!」

「お姉さま!?」


その後、莉々のメンタルケアの経過観察は予想以上に良好らしく、予定より数段早く立ち直り退院した

医者曰く…"お姉さまに惚れたから"という心の支えが出来たからだと言う…んな馬鹿な…


後々の話になるのだが、この話を徹也にしたら


「そりゃ、加奈が悪い。お前は同姓に好かれるタイプだぞ?」

「し、知らなかった…」

「無自覚な程、罪深いモノはねーな」

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