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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
103/121

ACT.96 ヴィシュヌ事件後日談 須田良輔

ここから、エピローグ的な話

ヴャルキリと呼ばれるマシンに乗せられて、オウガの指示で狙ってトリガーを引いたことまで覚えている

オウガにあのガーネェヤに一撃加えられるという言葉で、引き金を引いたのだ…そして

目を覚ませば、白い天井に…ふかふかの白いベットに腕に点滴がされていた


「お?目を覚ましたわね?気分はどうかしら、須田良輔君」


声の主の方を向くと、例の黒いスーツの着た、特務機動隊のリィンと呼ばれていた女性がいた


「…なんというか、随分頭がスッキリしたというか…久々によく寝れたような」

「そうね、あれから3日たったからね」

「…莉々は?」

「無事よ、隣の病室にいる。あの娘も場合は、精神的なカウンセリングを受けてもらってるけどね」

「そうですか…」


終わったんだな…そんな安堵感と安心感、あの壊れた非日常が終わったんだなって、もう悪事に手を染めることはないんだなということ


「…オレは、逮捕されるんですか?」

「あー…そうか、脅されていたとはいえ、窃盗実行犯だからね。冗長酌量の余地はあるだろうけどね…結論から言えば、逮捕はしないわ。あなた達の処遇は私達特務機動隊が預かることになったの」

「…え?なんで?」

「私達特務機動隊はアルカディア機関に属し、表向きに存在しない極秘の組織。それに深く関わった者を見逃す訳にはいかない」


あれ?もしかして物凄くマズイ境遇にいるのか?オレ?


「ああ、ごめんごめん。脅してるわけじゃないから、そんな怯えなくていいわよ。とりあえずあなた達には二つの選択があるの」

「せ、選択肢ですか?」

「一つは私達特務機動隊の事を今後他言無用で生きる…暫くはあなた達の生活に監視が付くし、働き口も限られることになる…数年は行動の自由はないと思った方がいいわ」

「て、てっきり口封じで殺されるものかと…」

「ああ、それは本当の最終手段よ」


身構えて、ベットの隅の方へ、リィンから僅かでも遠ざかる


「まあまあ、最後まで聞きなさい。二つ目は、我々特務機動隊に属し、自動車犯罪者と戦う修羅の道。裏の世界から自動車社会を守る者になる」

「…はい?」


思わず聞き返してしまった。思わぬ提案に、間の抜けた返事をしてしまうが…リィンの目と表情はマジなようだ


「特務機動隊に入ってもらえれば、監視も楽だし、前者の案より行動の自由がある。勿論、相応の報酬は出す」

「ど、どうしてオレが?オレはあんな二人のように強い訳じゃないし、悪事に手を染めた不良だった奴だ」

「経歴は問わない。欲しいのは素質がある者はヘッドハンティングするスタンスなのよ特務機動隊は。須田良輔、あなたの行動力と判断力には目を見張るものがある。市街地でヴャルキリ相手に普通の車を傷つけることなく走り切ったことには少なからず評価せざる得ない。素晴らしいドライビングテクね」


そういえば尋問の際に、神也にドライビングを褒められてたな


「鍛えれば優秀な隊員になれる。それに妹さんの為とは言え、そんな満身創痍な体で行動できる精神的な強さも評価ポイントね。本来なら、警察とか白バイ隊員とか似合いそうだけど…我々特務機動隊なら、もっとその力を活かせる」


ここまで人に何かを褒められるのは久々な気がして、なんというか複雑というか、よくわからない気分になっていた。褒められて嬉しいという感情が…素直な思いって、こんなに暖かなものだったか


「今はまだ判断しなくてもいい、じっくりゆっくり考えなさい。特務機動隊の任務は命がけ、無惨な殺され方をされる場合がある…私達のことを忘れて平穏な生活を送るのもあり。だけど、心の底から車が好きであって、それを悪用する人間を許さないのであれば…ね」


どちらの選択にもデメリットはある、神也や加奈も命懸けでオレと莉々を救った。殺される覚悟がなければ特務機動隊は務まらないというのは、思い知らされた

だけど、オレたちのような境遇の悲劇を繰り返してはならないという気持ちがある。特務機動隊ならその助力が出来る立場になれる


「…なあ、アンタは…どうして特務機動隊に居るんだ?神也と加奈も…アイツらに関して言えばまだ高校生とかだろう?」

「加奈と神也はそれぞれ特殊な立ち位置だから、深くは語ることはないんだけど…そうね、私の場合は、復讐だった」

「ふ、復讐…?」


目を閉じて、ゆっくり深呼吸して、思い出すようにリィンは口を開く


「私は、両親を轢き逃げで殺されているの。それも意図的に、無差別に…数年前の話になるか、ある少年グループが車を使ってある遊びを思いついたの、"人間ボウリング"ってね」

「なんだそれ?…いや、待てよ…なんかそんな話か噂を聞いたような」

「数年前に少し取り上げられてニュースだから、うろ覚えかもしれないし、世間からは忘れられている出来事ね。"人間ボウリング"彼らは、盗んだ車で人や動物を轢くという遊びをしていたのよ。怪我を負わせて病院送りにすればスペア、殺せばストライクって…奴ら、嬉しいそうに語っていたわ」


リィンという女性は、美人にカテゴリされるような容姿なのだが…その瞳に光がなく淡々と語る。それは恐ろしく、触れてはいけない話題を振ってしまったっと


「その被害者が…アンタの?」

「ええ、私の両親はくだらない道楽によって殺された。私は彼らに復讐を誓った。警察や司法ではなく、私自身の手でね。結果的に言えば彼らを少年グループに属していた者を全員皆殺しにした、ハッキングした車を使って、奴らと同様の手段で轢き殺した。間接的にかつ…そして惨たらしく殺した、命乞いした者もいたような気がするけど…そんなものに耳を傾けることなく殺した」

「だけど、そんな方法で復讐なんて果たしたら…」

「当然、特務機動隊に捕まったわ。だけど、そのハッキング技術を買わられて、特務機動隊員として誘われたわ…考えてみればあなたと似た境遇かしらね?」

「アンタ自身が、素質のある人材をヘッドハンティングする事例だった訳ですか…」


もっとも、流石に人を殺めるようなことはしてはいないが


「そういうことね…そしてまだ私の復讐は終わっていない。今もどこかで車やオートバイによる犯罪による悲劇を起こしている者による被害者達を一人でも多く救う為に戦う…自動車犯罪に人生を狂わされた者の役目の一つだと信じて…これじゃ、死ぬまで私の復讐劇は終わらないわね」

「復讐心を、だれかを救う為に…それは復讐と言っていいのか?」

「どうだろ…ただ、復讐に囚われて、大事なモノを無くした怪物になるよりは遥かにマシな在り方だと思ってる。ヴィシュヌの女幹部、ガーネェヤもいい例ね…私も、一歩間違えていればあの怪物と同じ存在になっていたかもしれない」

「あのサイボーグ女が?」


オウガの照準を合わせた時に、ガーネェヤの正体がサイボーグと知ったが…あれと行動していたのがゾッとしている。アイツはその気になればオレなんて惨たらしく殺していたんだと


「そうね…あなた達にとっては仇の存在のようなもんだから、知らなくてもいいと思うけど…まあ、彼女も自動車犯罪で狂わされた哀れな存在よ…私だけじゃない、隊長も島田君も、自動車に関わる犯罪によって大事なモノを失い、信じていた正義に裏切られて、狂わされて…そして2度と悲劇を起こさない、救う為に特務機動隊に入った経歴の人ばかりよ、うちの組織は」


…そうか、オレが思っていたこと、悲劇は繰り返してはいけない。そんな思いを持った集団が特務機動隊、いや、助力どころかそれが使命なのだ


「人の瞳が背中に付いてないのは、前を向いて生きていく使命があるからよ」

「なんですかそれ?」

「昔流行ったアニメのED曲の歌詞の一部、復讐心を前を向けて生きるか、振り向いて生きるかで変わる…私は…いや、私達は前を向いて、未来の為に特務機動隊員としての使命を全うする」


気付けば、リィンの瞳は過去の話で光がなくなっていた時と違って…輝いていた、未来を、前を見る為に


「ゆっくり休んで、考えることね。しばらくは心身共に安静にしないといけないだろうし…あ!そうだ、悪いんだけど莉々とはしばらく面会は出来ないと思ってちょうだい」

「え?それはどうして…」

「あなたも、莉々がどんな仕打ちを受けたかはなんとなくは知っているでしょ?強がっているけど、特に男性はしばらく近寄れないでしょうね…心に負ったダメージは大きいからね」


監視役の奴らから、莉々がどんな目に遭っていたのかは、なんとなくどころか明細に聞かされていたから知っている。女の子として好きな人に捧げるモノを強引に奪われ、尊厳を踏みにじられてきたのだから…男に対して、何かしらの拒否的な反応か苦手意識があってもおかしくない

そう考えると、兄としての怒りがこみ上げる…思い出すように…もっとも、その怒りをぶつける相手は


「…捕まったヴィシュヌの連中ってどうなったんですか?」

「ガーネェヤは再起不能になるまで破損、他構成員は死傷者多数…少なくとも無事に済んだ者はいないわね…まあ、ほとんどは加奈がやったけど」

「…そうか…」

「不服かしら?怒りをぶつける相手はもういない」

「いーや…加奈に"よくやった"って讃えたい」

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