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第3話 思考にも柔軟性を

本日3本目です。

 朝、というより、目を覚ましたら。

 僕の種族が変わっていた。

 寝る前に手に入れた【毒素生成】がきっかけだったみたいだ。それ以外に理由が思い当たらない。

 ただ、ゼリーという部分は変わらないので、亜種とか派生種とか、そういう扱いなんじゃなかろうか。

 種のランク自体は変わらなさそうなので、過信は禁物。というより、おそらくはスライムの同義語でしかないゼリーという種で過信も何もないんだけどさ。


「ふむ、ふむふむ? ……なんていうんだっけ、ブドウゼリーみたいな感じ?」


 体を見れば――極自然に視線を内側に向けると、何と、自分の体内が覗けたのだ――体色が薄緑色から淡い紫色に変色していた。

 見るからに毒々しい色に、なるほど、ポイズン。などと関心してしまう。

 今日の予定は引き続き湖の探索をしつつ水生種を捕食吸収して水中での活動を補助してくれるようなスキルの確保。それによる湖内の生態系における安全を手に入れることだ。

 余裕があればそのまま陸を見張りつつ近寄ってくる動物を捕食する為に待ち構えてみてもいいかもしれないけど、さすがにそこまでは高望みが過ぎる気がする。


「くぁー……うん。やっぱり湖に飛び込むのは英断だったね」


 何故いきなり湖に飛び込んだのか。それにはいくつか理由があるが、よくある物語のセオリーとしては陸地で適当に木の実を食べたり、たまたま打ち捨てられたり瀕死だったりと食べごろなゴブリンなどを捕食してそれらのスキルを吸収して強くなるという展開があるのだが、リアルでそんなおいしい事がそうそうあるはずもないと思ったのがひとつ。

 それならば、どうやってゴブリンなどの陸地で歩き回る強いモンスターを捕食するのか。

 別に食べなくても良いんじゃないかと思うかもしれない。それに今はまだ積極的に生きたいと思うよりは死にたくないという思いが強い。

 だけどいずれ冷静に考える余裕が出来た時、広い視野で考えられれば良いと思ったからだ。


 それでどうやって陸の生き物を捕食するかだが、必ず見せる隙を狙うつもりでいる。生物の隙というのはいくつか決まっているけど、食事や睡眠中はその最たるものと言える。

 生き物にとって水は必要不可欠であり、森で生活するうえで、こんな場所に湖があれば水を飲みに来る生物がいてもおかしくはない。それこそ初日の僕のように、水を飲む為に無防備に水辺に体をさらすことだってあるはず。

 そうした生物を水中から狙って引きずり込み地の利のある状態で戦えば、如何に格上だろうと捕食できるのではないか。というのが僕がそうそうに水中に移住した理由だった。


「まぁ、ともあれまずは水中での生活基盤を整えるところからってね」


 水中でさえ安全に生活できないとなると本末転倒にも程がある。暫くの間は安全を確認する為に動かなければならない。

 さすがに湖底の赤いワカメを常食にする気はしないが、黒い魚のほうは刺身を醤油無しで食べるようなものなので中々に美味しかった。

 ひとまず食に関しての心配がないだけでも重畳だろう。最悪水でも良いと思うし。


 だが、さすがに別の味にも焦がれるものだ。元人間だとそのへんがグルメでいけない。いっそ食べ物の知識なんて大事な記憶共々消え去ってくれればよかったのに。

 ただおかしい事に、そういったおいしそうな食べ物の知識はあるのだが、味だけは何故だかちっとも覚えていないのだ。残念だ。非常に残念だ。


 そんな事を考えながら、前日同様にゆらゆらと水中を漂う。前日と違うのは、体色が薄紫になったおかげで湖底の方を移動するときは僅かにだが隠密性が上がったような気がして、変化するのも悪くないものだなと思う。

 今日の目標は、先日手に入れられなかった水中に関するスキルや、有用そうなスキルを持っていそうな生物の捕食。

 あとは、日常的に食べても飽きないある程度美味しくて安定して捕食できる物の捜索だろうか。


 もちろん、この湖で生活する以上、湖の生態系を把握する事や地形を把握する事も忘れちゃいけない。

 いざという時に隠れられそうな場所を何箇所か確保しておくのとしていないのでは生存率が違うからね。

 丁度よさそうな地面の隆起に穴を掘りつつ、近くを通った黒魚を捕まえて捕食する。


「うーん。ご飯ほしい。白米と醤油……塩焼きもいいなぁ……」


 おっといけない。せっかくの食事なのによだれ代わりに出てきた消化液が味わう間もなく溶かしてしまいそうだ。

 栓の無い事を言っていても仕方がないので刺身で我慢しておく。

 そうして先日とあわせて10匹ほど捕食した頃、ようやくお目当てのスキルを獲得する事ができた。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 新たにスキルを獲得しました。


 【水中適性】


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 これだ、このスキルを待っていた。

 説明は見なくても分かるが、念のため確認しようと、掘った穴に引き返しながらスキルの説明を読む。


 【水中適性】

 水中に適応した事を示すスキル。

 水中活動時に移動しやすくなる他、水属性に対して耐性を得る。


 確認しておいて正解だった。水の中での活動に補助が付くのはいうまでもないが、水属性耐性とやらはおそらく未だにお目にかかっていないスペルとやらに関係するんだろう。

 どれだけ軽減されるのかはわからないが、ないよりマシとだけ考えられるのはありがたい。


 移動中に気付いた事だが、【水中適性】に関しては持っていれば勝手に効果を発揮してくれる様だ。

 水がまるで邪魔にならない。


「なんていうんだっけ、こんな気持ちで泳ぐなんて初めて……ああ、いや、これはダメなほうだったっけか。なんか色々混ざってる気がするし」


 明々後日のほうへと傾いた思考を放り投げ、頭上へと目を向ける。

 まだ水面に見える日差しも高い。

 元々の目標だった水中適性スキルも得た事だし、他にもおいしそうな……否、有用なスキルを持っていそうな湖の生き物を探しに行くことにしよう。

Name:【-----】


 種族:ポイズンゼリー・天恵種(てんけいしゅ)


 スキル:【●●の記憶】【言語理解】【無差別捕食】【消化吸収】【猛毒耐性】

      【毒素生成】【水中適性】<New!>


 スペル:


 称号:【転生者】【哲学する軟体生物】

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