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第23話 ねんがんの こえを てにいれたぞ!

 さて、なし崩し的にとはいえ……いや、この(くだり)はもういいか。


「食べなきゃ勿体無いし僕の人道が許さないってことで。いただきます」


 湖面に浮かんだ2羽……2羽でいいよね? たぶん分類的に鳥類だし。

 これを人類と認めるのは釈然としないし。

 ……うん、鳥類。僕の中ではこいつらは鳥類だ。そのほうが精神衛生上賢いのでそう決めた。


 血の匂いにつられてサメイルカがよってくる前にハーピーを回収しようとし、ふと、ある可能性に気づいた。


「そういえば、巨大魚ってたしか僕を追いかけて一瞬空飛んだよな?」


 あの時、おそらくは【激流障壁】だっただろう水の流れに飲まれて叩き落されたわけだけど、つまるところ、水面から離れても水さえあれば【激流障壁】は機能し得る?


「うん、気になったら検証、いつもの繰り返しだけどね」


 最初は自分が水にもぐるか、【水術】で引き上げようと思っていたハーピー回収を【激流障壁】の使用で試みる。

 水中で使うよりはやや気力というか、体力というか、そんな感じの気合が要る印象だが、結果は悪くない。


「これは新しい発見、かつすっげー有用な手段の確立の予感っ!」


 鷹型の僕を囲むように、湖面から分離して空中で渦を巻く流水からハーピーをさらいとって体内に納めつつ、ゆっくりと移動すれば水は僕に追従するようにその周囲をついてきていた。

 とはいえ、これらの検証や使い道はひとまずおいておくとしよう。食事中に別のことを考えるのは食材に失礼だ。


「やっぱり、落ち着いて食事をするなら水中(こっち)なんだよねぇ……」


 ハーピーを体内に格納したまま、体をいつもの姿へと変えて水中にもぐれば、さほど時間がたっているわけでもないのに懐かしさすら感じる風景が視界いっぱいに広がる。


「さてと、いただきまーす」


 さすがに、半分ほど人が混じってそうな形状の存在を食べるのは相当覚悟がいる――はずなのだが。

 どうにも食欲に、味覚に流されすぎている。

 仄かな肉の旨みが染み出すあっさりとした鶏肉の味が味覚いっぱいに広がって


「もうこれは鳥類! 味がそういってるから鳥類でいい!!!」


 人型とか。葛藤とか。ないよ?

 さすがに自分でもどうかと思うけど。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 新たにスキルを獲得しました。


 【狂乱の声(パニックボイス)


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「ごちそうさまでしたー……っておお!?」


 ぼごっ、と。気泡があがり、水をかき乱す音が上がった。

 声だ。紛れもない、僕の声だ。


「やったぁー!! マジかああぁー!!! ハーピーありがとうおいしかったあああ!!!」


 思わず感謝と感想が入り混じった雄叫びを上げてしまった。

 だってそれだけうれしかったんだ。今まで音にならない発声だとか、声として機能してない音で喋ってたから。ちゃんと声という形で、口から言語が出るこの素晴らしさを誰かに伝えたかった。


「――あれ?」


 だが、どうやら僕の声は誰かへと感謝を向けるものではないらしい。

 音の放射として、ほぼ習慣となっていた【索敵反響】が同時に放たれていた結果、戻ってきた反射音が捉えた魚群の動きがおかしいことになっていた。


「う、うーん……?」


 困ったときはスキルの確認だ。声がでたうれしさで忘れてた。


 【狂乱の声(パニックボイス)

 エルダーハーピーの持つ威圧の篭った声。

 他種族や下位種族に対して錯乱効果がある。


「……」


 ちがう、違うんだ。僕が欲しかった『声』はこういうのじゃないんだ。

 もっとこう、フレンドリーでハートウォーミングな感じの友好的な声が欲しかったんだ。


「あー……まぁ、威嚇には、丁度良いのか……な……」


 声を発する度に、身を守るために寄り集まって巨大な影を見せる魚群が支離滅裂に散って、お互いに衝突しあった影響からか気絶しているように動かない個体まで確認できるありさまに思わずため息がでる。

 これは友好的とか、そういう問題以前なんじゃないかな。


 ……まぁ、さすがに食後ということもあり、加えて僕が認識している魚群の近くにサメイルカもビビッて変な動きしていることだし、迷惑料として譲るとしよう。さすがにこれは狩りとは言えないだろう。


「……って、いうか。あのノーコミニュケーションはもしかしてこのスキルだった?」


 だとしたら、スキルの説明的にあの時点で僕はあいつらよりも格上だったことになる。

 理由としてあげるなら種族のランクアップだけど、さすがにスライムってそこまで強くないだろうし、どちらかといえば巨大魚を捕食した補正、のようなものがあると思ったほうがいい気がする。

 まぁこのあたりの検証は現段階でしようもないし、おいおい理解できればそれでいいか。

 ハーピーが捕食できたことで【擬態】のレパートリーも増えたわけだし、ここらで再び、陸上でも使いやすい形状を模索するべきかもしれない。


「まぁ、それはまた後でかな」


 今は陸地の探索を優先したいしね。【水術】の使い道について、試してみたいことも出来た。

 だから【擬態】による形状の最適化はまた今度ということで。

 Name:【-----】


 種族:アクアスライム・天恵種(てんけいしゅ)


 スキル:【●●の記憶】【言語理解】【無差別捕食】【消化吸収】【猛毒耐性】

      【毒素生成】【水中適性】【索敵反響】【高速鋭利化】【幽体特効】

      【呪術耐性】【擬態】【加速】【極彩鎧鱗】【激流障壁】

      【極寒耐性】【狂乱の声(パニックボイス)】<New!>


 スペル:【水術】


 称号:【転生者】【哲学する軟体生物】【水陣の御手】

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