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末代の吸血姫

作者: 七瀬 碧月

 昔から、町はずれの洋館には吸血鬼が出ると言われていた…

 そのこともあって、子供たちに肝試しとして使われる事が多く

 今年も夏に多くの子供たちが肝試しに行き、帰ってきた…

 そして冬になり、町が冬祭りで賑やかになり始めた頃、ある噂が広がり始めた。

 その内容は「ある家の子供が、数夜前に家から居なくなった」という物だった…

 町の衛士だった俺はそれを知り、その家族や子供達に聞き込みを始めた。

「それでは息子さんは最近調子が悪そうだったと?」

「はい、しきりに頭痛を訴えていて…薬師様には直ぐに治るだろうと言われていたのですが…」

「そうですか…ありがとうございました」

 家族喧嘩からの家出では無いようだ…俺が唸りながら家から出てくると、数人の子供に囲まれた。

「お兄ちゃん!あいつの事探してるの?」

「そうだよ、君たちは何か知ってるかい?」

「うーん…よく頭が痛いって言ってたくらい…」

「そうか…やっぱり頭痛が怪しいな…」

 やっぱりその頭痛が原因なのか…?

 その時、子供の1人が恐る恐る…と言う様に声を出した。

「あの子…夏の肝試しの時に凄い物拾ったって言ってた…」

「拾った?どんな物か知ってるかな?」

「確か…小さな指輪だったと思う…」

 指輪…いかにもなにかありそうだな…

「ありがとう、彼の事は俺に任せてね」

「んっ…頑張ってね、おにいちゃん」


 一向に治らない謎の頭痛、洋館での肝試しで拾ったという指輪…

「あの洋館に確かめに行くのが良さそうだな…」

 俺は一度家に戻り、装備を整えて洋館に行くことにした…


 ・・・・・・


 洋館には雪が積もっていて、幻想的な雰囲気が漂っていた…

「ここに来るのは何年ぶりだったかな…」

 いつでも戦闘が出来る様に用意をして、扉を開けてエントランスに侵入する。

 何の変哲もない内装だが、何処かおかしい…

 廃屋になって久しい筈なのに、蜘蛛の巣一つ無いのは誰かが掃除に入ったからか、はたまた誰かが無断で住んでいるのか…


「「我の食事の邪魔をするのは誰か?」」

 突如聞こえた声に剣を構えると屋敷中の楼台に火が灯り出す。

 声のしたほうに目を向けると、そこにはゴシック衣装に身を包んだ少女が居た…

「君は誰だ」

「我はここの家主であり、吸血鬼のリリス・アルフェンシュタインだ」

「アルフェンシュタイン…聞いたことがある、吸血鬼の貴族でありながらも人間との共存を望んだ変わり者の一族…」

 町に伝わる伝承の物語。

 自らが吸血鬼である事を晒し、守護と繁栄の共存関係を望み、そしてそれを成しえた者たち…

 この町が幾度の戦乱に巻き込まれようとも、どこからともなく彼らは現れてその全てを退けてきた。

「そうだ、忌むべき血の力を持った呪われた一族…それが我々吸血鬼だ」

 見た目が子供だからか、不思議と恐怖等は湧かなかった。

「君の正体は分かった…つい最近この屋敷に子供が来なかったか?」

「子供…我と契約したあの少年の事か?ならば来ている、今は契約の執行の為にこの屋敷に留まっている」

 契約の執行…?彼女と少年の契約…彼女は吸血鬼…そうだとしたら

「まさか…飲むのか…?彼の血を…」

「あぁ、それが契約だ。我等吸血鬼は血を飲まなければ死ぬ、だから彼の願いを叶える代わりに血をもらう」

「願い…?彼の願いは何だったんだ?あの指輪が関係しているのか?」

 あの子が言っていた指輪…もしもそれが彼が彼女に望んだ願いなのだとしたら…

「そうだ、あの指輪は元々我の物だ。彼がそれを欲しいと望んだから、契約を結んだ」

「その契約は無かったことには…出来ないよな、血が飲めなければ君は…」

「あぁ、飲まなければ我は次の満月には我は息絶えるだろう…故に契約は断てぬ」

 彼の体躯では血を飲まれた上で、生きる術はないだろう…ならば答えは一つしか 無い。


「その契約を俺が替わることは出来ないか」

 目の前の子供を見殺しになんて出来る訳が無い、変わりに老い先短い俺なら構わない…そう思った。

「可能だ、代わりに貴様の血を貰い受けるが…覚悟は良いのだな?」

「無論だ…この体なら子供よりも沢山飲めるだろう。俺が人柱になることで、他の誰かが救われるなら…それは本望だ」


 ・・・・・・


 それから数日後…町の入口で、数日の記憶を失った少年が何事も無かったかのように現れ、代わりに1人の衛士長が戻らなかった…

お読みいただきありがとうございました! この即興小説シリーズ(日刊)の他にも2作品書いてます! 「自己犠牲錬装術師の冒険譚」(仮題) 「人形の彼女と紡ぎ手の僕」 是非お読みください!(上記の2作品は連載・非日刊です)

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