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三人の嫡子2

ズカズカと楓が学習机と寝台だけ置いてある翠の部屋に乗り込んできた


「翠、聞いてくれ」


「杏は俺が冗談で言ったことをまるで本気で言ったみたいに主様に言いつけたらしい」


「俺のペナルティが四つ溜まっていて、今度受けたらひどくたくさんの宿題を課せられるのを知っていて!」


いきり立って言う10歳の楓に翠は


「主様が本当のお祖父様のように思えて、うるさいジジイって言いそうになるって話?」

と軽くほほえんだ


「大丈夫だよ、多分本当にはいいつけていない」


「どうしてそういう話になったかを問われたら杏も困る」


杏は今でこそ大人びた落ち着いた性格だったが、子供の頃は少し意地が悪かった



「それより楓」

「ここ教えて」


そう言って翠は自分が取り組んでいた算術の難しい問題に楓の意識を引き込んだ





杏が12歳のとき6つ違いの妹笹葉が風邪をこじらせ死んだ


同い年の楓や翠とはどうしても張り合ってしまう所のある杏にとって唯一心を許せるかわいい妹だった


杏はどうしていいかわからないくらい悲しかったし両親の悲しむ姿を見るのも辛かった

また自分がひどく悲しむ姿を両親に見せたくなかった


どんなときでも、どんなことがあっても涼しい顔をしていたい杏だったが、さすがにこの時は無理だった


杏は妹と一緒に暮らした西宮にいたくなくて、しばらく東宮の滴宮家で暮らした


話しかければ応えるが、自分からはあまり人には働きかけをしない翠が、一度だけ杏を誘って湖の岸辺を歩いた


湖を渡ってきた風に吹かれ、岸辺に遊ぶ千鳥を見ながらただ歩いた


杏の前を歩いていた翠は振り返り


「杏、西宮に帰れ」


と、ぽそり言った


その時杏は妹がいなくなり自分もいない西宮で暮らす両親の姿が目に浮かんだ




翠にはかなわない


楓と杏の共通の認識だった

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