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小さい泉

森の主様と呼ばれる天湖族の長老知恵者は語った


よいか、お前たち

これから移り住む白国は移動を始める前の天湖の一族がもともと暮らしていた土地なのだ


森の国、白国にいる時、我々の魂は輝く


子供の中には森の精霊たちの声が聴こえるものがいる

が、引き込まれてはいけない


特に泉の精霊の中には強い呪いの力を持つものがいる

子どもたちだけで小さな泉のそばで遊んではならない


その話を聞いていた三人の子供、雲宮家の楓、滴宮家の翠、溜宮家の杏のうち、一番好奇心の強い楓が主様に質問した


「主様、なぜ小さい泉なのです?」

「大きい泉ではないのですか?」


大きい泉には良き精霊が棲む


大きい泉では子供の事故は起きない

本当に小さな泉でのみ子供の事故が起こるのだ


それを聞いて利発な三人の七歳児は、ああ、これは子供の水遊びを戒める話なのだと思った




この世の悪しきものを飲み込んで世界を守っていると言われる大きな湖がある


その周りに住む三つの湖族、

鳥湖族、龍湖族、天湖族にはそれぞれに特徴ある王の花嫁の選び方があった


天湖族は雲宮家、滴宮家、溜宮家、三つの宮家から順番に王を出す


現在の王は雲宮家くもみやけかえでの父柊が務める


次期王は滴宮家てきみやけすいがなる


現王柊の前は溜宮家たまりみやけあんの祖父槐が王だった


三つの宮家は助け合いながら絡み合いながらこの天湖族導いてきた




しきたりにより天湖族の王になる者の花嫁はしきたりにより前任の王が選ぶ


前任の王の選んだ花嫁を娶ることにより正式な王位継承者として認められる


翠は17歳になったとき、楓の父柊王の選んだ国中で一番美しい娘を娶り、正式に天湖族の時期国王になるものとして認められた


『美しきものには力がある』

これが柊王の考えだった


が、柊王に与えられた美しき娘、珊瑚を花嫁にしたことで翠は苦しんでいた


だめだ…

どうしてもこの花嫁が好きになれない


好きになれないどころか今まで人に感じたことのない嫌悪を感じる


力を合わせていずれはこの国を導いて行かねばならないというのに


隣りの寝台に寝ている珊瑚の気配を感じるだけで気分が悪い


いったい私はどうしてしまったんだろう


湖の岸辺にある若宮殿の寝室で、真面目で心優しい翠は今日も眠れずにいた

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