プロローグ。
ほほほ
いらっしゃい
あなたほんとにまた来たのねぇ
いえいえ、とんでもない、大歓迎よ
私のお話を気にいってくれたのよね
うれしいわ
あ、今日は連れていきたいところがあるの
瑠璃が池の近くにいい喫茶店が出来たの
え?喫茶店じゃなくてカフェじゃないかって?
ほほほ、あなた相変わらずねぇ
行けばわかるわ
ほんとに喫茶店って感じなんだから
さあさ、私のミニに乗ってちょうだい
どう?ね?カフェじゃなくて喫茶店でしょ?
置いてあるマホガニーのテーブルや椅子のせいかしらね
オレンジ色の照明の傘も光を柔らかく見せてるし
何か懐かしい感じがするって?
あら、お若い方にもわかるのね
ねぇ
あそこの壁に架かっている絵を見て
あれ、私の父が描いた瑠璃が池の絵よ
私、あの絵をあなたに見せたかったの
ここのマスターが父の絵のファンなの
この絵を見て瑠璃が池が好きになったんですって
ここにお店を開くのが長年の夢だったらしいわ
ここ風致地区なのよねえ、よく建物が建てられたわなんて思いながら入ったこの店で、あの絵を見つけた時、感激で鳥肌立っちゃったわ
え?
水の色が瑠璃が池と違うって…
ふぅ〜、あなた…大人なんだからここはいい絵ですね…ぐらいは言わないと
まあ、あなたらしいわ
さ、お店を出て少し瑠璃が池の周りを歩きましょう
本当にこの池の色は綺麗
瑠璃が池という名前以外はありえない気がするわね
私、今日はここで『王の花嫁』の話をするわ
大きな湖の西側、白国で暮らす天湖族のお話を
え?UVがなんですって?
文句が多いわね
ほら、あそこのベンチ日影になってる
いいから隣に座りなさい
始めるわよ
湖の周りの三つの移動国家のうちの一つ、天湖の王の花嫁選びと、選ばれた花嫁のお話を