四月三日 参
第一章
「それは酷くないですか……自分で言ったことを忘れるなんて、最低です」
えー、流されるのこの子……というより発端はこの子だったか。
本当は打ち合わせしてんじゃないだろうなこの二人、息合いすぎだろ。
さて、茶番はここまでにして……そろそろ良いだろう、この乗客も我慢の限界だろうし。
「ところで乗務員さん、この新幹線ちゃんと盛岡駅に向かってますか?」
少しの沈黙が流れて乗務員が口を開いた。
「勘が良すぎるんじゃ無いですか、やはり彼女が寝て居るときに攻め込むべきでしたね」
途端に乗務員が右手に短刀を握って通路側の少女を狙う、正直この距離からだと弾くことができない!?
「はっ!!」
短刀が少女の顔に届くかどうかといった地点で彰子ちゃんは乗務員の右手首を思いっ切り弾き上げる。
びっくりしている心を抑えつけて乗務員の喉元に手刀を叩き込む。
これだけじゃ足りない、相手が俺の予想どうりならこんなものじゃ足りない。
「彰子!! そのまま手首を折れ!!」
俺の言葉に呼応するようにべきゃ!! という音が車両に響く。
「やっぱり……私は……」
立ち上がり彰子ちゃんと並ぶように立った俺だがこの状況は非常にまずい。
「どういうことですか慧さん!? 私勢いに任せて叩き折っちゃいましたけど!?」
テンパり具合がハンパないなこいつは。
まぁ普通に考えれば妥当な反応だろう、誰だって人の手首を折るなんて抵抗あるだろうに。
「大丈夫だ、それぐらいで止まるような奴らじゃない」
と言うより俺は少女の発言が気にかかっているのだがそこら辺はどうだろう。
車両に居た俺達三人を除いた全てが憑かれて居るだろう、ならば逆にどうして俺達は憑かれなかったんだ?
甚だ疑問だな。
なんて現実逃避はここまでにして、今を見つめようか。
「彰子ちゃん、君は幽霊を見たことが在るかい?」
「何言ってるんですかこんな状況で!!」
「今に関わるから今聞いてるんだよ」
「在りますよ、見まくりですよそんなの。この変な人達に関係が在るんですか?」
無かったらこんなこと聞いてないっての。
これは……とんだ旅路になりそうだな。
「彰子ちゃん、真面目に聞いてほしいんだ」
少し下に目線を下げて話を始める。
「なんですか? そんな事言ってる間にあの変な人達が向かって来るじゃないですか!?」
若いカップルが一組俺と彰子ちゃんに目掛けて飛び掛かって来る。その二人の頭を掴んで一気に床へ叩きつけた。
「運動不足で動かしづらいが……」
これぐらいなら何とかなる。
「ハッ!? まさかこんな状況で告白だなんて……それは死亡フラグですよ!!」
違うわマセガキ、こいつ何時までそのコント続けるんだよ。
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