四月三日 壱
第一章
それは確かに、まぁ俺の動機とこの子の動機は完全に違うだろうけど。
「えらいね、他人の事を考えられるなんて」
少女は胡乱気な表情で何を言ってるんだ的な視線を送ってきた。
「当然だと思いますけどね、少なくとも私は両親にそう教わりましたよ」
両親に……ね。
まぁそれが普通だろう、普通な人間はそう考えるし普通じゃない……いや何処かが違う人はそう考える訳が無いってのは教えるべきじゃない。
「その考え方は美しい、大人になってもそう考えられれば君は本当に素晴らしいよ」
「はぁ……まぁそこら辺は置いといて、少し聞いても良いですか?」
何だろう、この子は何処かしら、
『違う』気がする。
まぁ俺の直感なんて錆びれてるから頼りにならないけども……気にしておく必要は有りそうだ。
「俺が答えられることなら答えるよ」
少女は俺が右手に抱えてる長く細い包みを指差して聞いてきた。
「それはなんですか? 実は最初から気になってるんですよ」
まぁ一番気になることと言えば当然これだろうな。
さて、これはどんな方法ではぐらかそうかな。
「……うーんと……俺が今からする仕事に一番必要な道具だよ」
そーっと手を近付けて細長い包みに手を伸ばす。
俺は特にリアクションすることもなく少女の動向を少しだけ気をつける。
「持ってみても良いですか?」
「かなり重いから気をつけな」
「重いってどれぐらいですか?」
これはどれぐらいあったろうか……あぁそうだそうだ。
「五キロぐらいだよ」
この包みをもってきたは良いけれど、今の俺に振り回せるかな?
そんな会話を続けていると乗務員が切符の確認をしに来た。この状況を見て変な顔をしたってのはまぁわかる。
「えーと、切符の確認をします」
と少女は同時に切符を出したが通路側の少女は眠ったままだ。
「お兄ちゃん、春香ちゃんが起きないんだけどどうする?」
少女は口の動きだけで自分の名前を告げる、中々難しいスキルを要求するじゃないか。
えーと……AにI、そしてOか……いやマジで難しい。
俺の表情を見て何かがわかったのか自身のポニーテールを指差した。厳密には髪を束ねているゴムを指していたのだ。
よく見れば気づくがその気にならなければ見えることはない小さな紅葉を見つけた。
今までの情報を整理すると……恐らくこれが回答だろうな。
「彰子、もう直接探しちゃえ」
「了解!!」
そう言った彰子(仮)は服の裏側まで調べた末に発見した。
その三枚を見せてとりあえず難を逃れたがもう一つの問題点を突かれた。
「君達はどんな関係なんだい?
見たところ君達は兄妹みたいだけどその子は……」
さて俺の考え道理に進んでくれよな。
「この二人が親友で岩手まで遊びに行きたいって言うんですよ。で二人だと不安だからってことで俺が付き添いです」
乗務員はしばしうたぐり深い眼差しを向けていたが……渋々と言った表情で他の乗客へ向かって行った
「なんとかやり過ごしましたね」
「あぁ、俺の演技力も案外使えるな」
続く




