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四月三日 拾

続き

 辺りを見回して依頼主の特徴に合致する人を探しはじめた。しかし俺達が見つけるより真っ先に用意した札が反応する、小刻みに振動して仄かに発光する。そのまま鳥の形に変化してパタパタと駅の出口に向かって羽ばたいた。

 「さぁ助手、仕事の始まりだぞ」

 今までのことを全て抱えて俺は走り出す、携帯から標準的に設定されているままの音が鳴り響いてきて即座に電話に出た。この着信音は間違いなく奏だから。

 「もしもし、何か掴めたか?」

 『この依頼正直放棄したほうが良いと思うんだよね、五分五分で死ぬかもしれない』

 途端に、その言葉とは違う要因で背筋が寒くなる。

 俺の進行方向、駅の出口に近づくに連れこの悪寒は強くなっているし異常とも言える息苦しさを感じ始めた。

 それは俺の体力が無いからとかそういった理由もありそうだけど。

 「悪いが奏、もう始まっている」

 そう告げて通話を切り即座に二人の前を走った。身体能力に定評のある彰子にすんなりと抜かれないように本気で走り続けていると疑問に思ったのか彰子は俺に話し掛ける。

 「どうしたんですかそんな息を荒げて」

 それは単純に俺の体力が無いだけだよ。いちいちいかがわしく言おうとしなくて良い。

 「俺に依頼をしてきた人物こそが、丙を付け狙っている人物なんだろうさ。人物ってのはあくまで比喩だけど」

 そんな無駄話はどうでもよくて、彰子が俺の前を走ろうとするたびに無駄な体力を使うことになるから正直言って素直に俺の後ろを走ってほしい。

 言っても無駄だから言わないけど。それにこの状況ならなまりきった俺の体もばっちり目を覚ましてくれるかもしれない。

 彰子の隣で走っていた丙ちゃんが苦しそうに息継ぎをするがその速度にこれといった動きはない、しかしこの子は一体何者なのだろうか。少なくとも人間ではない。

 まぁそのことはまた後で聞いておこう、この依頼が終わったらそれくらい聴ける仲にはなっているだろうし。

 「あの鳥の跡を追っていけば良いんですよね? 楽勝です!!」

 そう叫んで一気に速度を増した彰子は一直線に駅の出口へ飛んで行った。文字通り矢のような速度で鳥との距離を詰めていく。

 これはまずい、何がまずいってあいつがまだまだ未熟者だからまずいのだ。

 待て!! そう叫んでもすでに聞き取れない距離にいる以上はこっちがペースを上げるしかない。

 いつの間にか並走していた丙ちゃんの腕に手を伸ばし、一気に俺の体へ密着させた。周りから変な視線を浴びているのは現在進行形なので特に気にかかることではない。

 しかし丙ちゃん本人にはかなりびっくりしたようで俺の首筋に回した手の力が結構強くて痛い。

「ど、どどどどどどうしたんですか慧さん!? とりあえず流れで抱きついてますけど」

「そのままでいい、絶対に俺の体から離れるな!!」

 すぐ近くにいるのだからこんな大声で言う必要は無いのかもしれない、けれど今の俺は彰子以外目に見えていなかったから普段より強めの語調になっていた。

 彰子の姿は目視で確認出来なくなってしまった、予想以上の身体能力だけど足手まとい(失礼だけど丙ちゃん)が俺の体に乗っていることによってこっちも全力で走れるようになったんだ。即座に追いついてやる。


続く

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