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第一章 人間殺しと狐退治

第一章

 「どこまで行くんだ?」

 「岩手県」

 「は? 今何つった?」

 「だから、岩手県だよ、青森県との県境にあるって」

 「先に言えよ馬鹿、新幹線予約しないとダメじゃないか」

 唐突な始まりで申し訳ないがとりあえず自己紹介をしておこう、俺は海鳴(うみなり)(あきら)。怪しい仕事をして生活費と学校の料金を稼ぐしがないアルバイターだ。

 自分で怪しい仕事とか言ってるけど決して法令違反とかをするわけではない、存在が不確かなオカルトの領分に片足を突っ込みなんだかんだで困っている人を助けたり助けなかったり。

 それが俺の仕事。勿論定期的な占いや祈祷などの仕事もあるけれど俺は別にそっちが強いわけではないから請け負っているものも数えるくらいしかない。

 もともと高校生だから学校に行かなければいけないので必然的に近い年齢の仕事が入り込んでくる、こういった職業はいかに相手に安心感をもたらせるかが肝なのだ。

 とどのつまりは時間が空いている放課後や土日を利用しないと出来ない仕事。というわけ。



 行き先を告げられてからの2時間はドタバタしていた、荷造りを済ませたり札や折り紙をチェックしたりとてんてこ舞いだ。

 明日は恐らく朝早く行ってさっさと帰ることになるだろう、非常に嫌な予感がしていた。

 俺は朝一の新幹線で岩手県へ向かっている、どうせなら北海道がよかったなと思うな。蟹が旨いから。




 三人掛けの席で窓際に座っている俺、その隣に俺より二歳か三歳したの少女が二人座っている。

 そんなことは余談でしかないけれど。

 岩手県盛岡駅まで行き、そこから依頼主の自家用車で青森県との県境にある自宅に行くらしいがそこは何処だろうな?

 なんて考えていたら隣のポニーテールの少女が俺の肩をトントンと指で叩いた。

 「すいません、酔い止めとか持ってませんか? 隣の子が酔っちゃったみたいなんで」

 その口ぶりだとまるで他人の心配をしているようだな。実際はどうか知ったこっちゃ無いけど。

 「あぁ、有るよ」

 俺は鞄から錠剤タイプの酔い止め薬とさっき買ったばかりのペットボトルの水を手渡す。

 「ありがとうございます」

 ポニーテールの少女は通路側の少女、ロングヘアーの少女は弱々しくそれを受け取りゴックリと飲み込んだ。

 ロングヘアーの少女はそのままゆるりと眠った、と思いたい。

 「ありがとうございました、あのままじゃここがトイレになってたかもしれないんで」

 「サラっとドぎつい事言うね君!?」

 恐ろしい少女だ……朝っぱらからそんなこと言うんじゃねぇよ。

 「ところで君達は友人なのかい? なんか口ぶりが違うっぽいんだけど」

 「いや、お互いに名前も知らない間柄ですよ。でもほっとけないでしょここまでダウンしてる人を前にしたら」

続く

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