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1-5 未来予知

「いらっしゃい。やっぱり来たんだね」


 高校の最寄り駅から電車で十数分、そこからさらに徒歩で数分、東条都靄は佐々木萌子の住むマンションの一室に来ていた。


「失礼します」

「そこに座っててもらえるかな。今飲み物取ってくるね」


 都靄はテーブルを挟むように置かれたソファーに座った。

 萌子は冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出してグラスに注ぎ、ポテトチップスを一袋取って戻ってきた。


「どうぞ」

「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 萌子はそう言って都靄の対面に座った。


「それで、今日は☆☆高校の生徒会長さん直々に、何の用なのかな?」



  ――5:未来予知



 6月6日日曜日14時30分、佐々木萌子宅。


「ふむふむ。つまり、『エスラ』に反発する人達が☆☆高校であんな事件を起こそうとしているのね。それは、大変だ」


 一通りの言葉を聞いた萌子は、そう言って頷くと麦茶を一口飲んだ。


「それで、東条君は私に何を頼みたいの?」

「いや、特にはありません。ただ『彼女たち』と関係がない事が分かれば良かったので」

「そう」


 萌子はまた一口麦茶を飲むと、話し始めた。


「まあ、一応東条君には私の『オトシモノ』がどんなものなのか説明しておいた方がいいかな」


 都靄は頷く。


「予知。厳密には自身がこれから向かう世界を事前に把握する事、なんだけど世界云々は私はよく分からないからパス。とにかく、予知ね。私の場合はとっても曖昧で、その場でのちょっとした人間の心情を演繹的に演算して予想しているらしいんだね。まあ、結局の所よく分からないんだけど、夢星さんとよく似ているんだよ」

「そうですか」

「うん。そういう訳だから、見たいものが見られる訳じゃあなくてね、いつもとは違ったシチュエーションになる時によく見るんだよ」


 そこで萌子は麦茶を飲むと、気分を変えるように少し大きい声を出した。


「まあ、私の話はここまで。それで一つ聞きたいんだけど、『彼女たち』って一体何なの?」





 都靄は一瞬固まった。

 今まで萌子が『彼女たち』の事を知っていると思っていたのだ。


「佐々木先輩は、『彼女たち』の事を知らなかったんですか」


 萌子は中途半端に笑いながら頷く。


「私はあんまり新聞部、『エスラ』とは関わって無いからね。名前くらいしか」

「そうでしたか」


 都靄はいつの間にか前屈みになっていた体を戻すと、咳払いを一つしてから話し出した。


「『彼女たち』、つまり『人間的能力限界研究会』通称『能限研』に所属していると思われる☆☆高校の生徒の事で、証拠は無いんですが以前から何度か犯罪紛いの事をしている人たちです」

「へー。まあ、もう私は☆☆高校の生徒じゃあ無いから詳しくは聞かないけど、目的って何なのかな」

「『オトシモノ』への復讐だ、と言われています」

「そっか、復讐ね。まだ若いのに」


 萌子は両手を組んで伸びをする。


「あ、私も若いのか」


 そして小さく笑うと、腕を下ろした。

 窓の外を見た萌子は、雲行が怪しくなってきた事に気付いた。


「明日は雨かな」


 その言葉に後ろを振り返った都靄は、灰色の暑い雲が一面を覆っているのを見て頷いた。


「でしょうね」

「何と無くだけど、嫌な感じだね」


 都靄は無言でもう一度頷く。

 どこか遠くから雷鳴が聞こえてきた。静かな部屋から眺める窓の外の光景は、どこか現実感がない。


「雨も降りそうなので、この辺で失礼します」


 都靄はそう言って立ち上がると、玄関まで出てきた萌子に見送られながら帰っていった。

 居間に戻ってきた萌子は後片付けをしながら、一つ大きく溜め息を吐く。


「これは、二年前よりも酷いよ」


 萌子はもう一度溜め息を吐くと、キッチンに移動した。

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