第9話 庭での思索と新たな気づき
その朝、米沢城の庭に出て、俺は一人で地面に枝で地図を描いてた。
頭の中じゃ、軽快な一人称がグルグル回ってる。
米沢を中心に、会津、二本松、相馬の位置を適当に線で結んでみる。
歴史オタクの知識がフル回転だ。
「会津の蘆名氏が動いたら、二本松経由で米沢にくる可能性が高いよな」
「でも、相馬氏が南から牽制してきたら、どうなるんだ?」
俺がブツブツ呟いてると、庭の隅で誰かがクスクス笑う声がした。
振り返ると、小十郎が木の陰から顔を出してた。
純粋な目がキラキラしてるけど、ちょっとからかうような笑みだ。
「梵天丸様、一人で何を呟いておられるのでござるか?」
「まるで大将が戦を考えるようでござるな」
「お前、いつからそこにいたんだよ」
俺がニヤッと笑うと、小十郎が
「少し前からでござる」
と素直に答えた。
「いやさ、俺、一人で戦の策考えてただけだ」
「会津から敵が来たら、二本松でどう迎え撃つかとかさ」
小十郎が目を丸くして、
「二本松にござるか・・・・・・確かに要所でござるな」
と頷いた。
「拙者なら、山を利用して待ち伏せ申すかと存じ申す」
「おお、いいねえ。小十郎、頭使えてきてるじゃん」
「でも、待ち伏せだけじゃなくて、こっちから仕掛けるのもアリだよな」
俺が軽く畳み掛けると、小十郎が
「仕掛ける・・・・・・奇襲でござるか?」
と目を輝かせた。
「そうそう、会津の蘆名をビックリさせてやろうぜ」
「混乱してる間に、米沢から援軍出すって感じだ」
「梵天丸様、さすがでござる!」
小十郎が笑うと、俺もニヤけた。
こいつ、わざと会うわけじゃなく、自然に庭にいてくれるのがいい。
歴史の片倉小十郎への道が、こんな軽いノリで始まるなんて、俺得すぎる。