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第21話 龍の爪と罠

西暦1573年(元亀4年)、春


俺は米沢城の広場で地図を手に、春の陽射しを浴びながら須賀川の動きを考えていた。


会津は遠藤基信が守りを固め、二本松は鬼庭左月と小十郎が田村氏と共に次の手を待っている。


相馬は片倉景綱が味方として支え、愛姫との婚姻の約束が田村氏との絆を未来で結びつけていた。


内政と外交が伊達家の基盤を広げているけど、須賀川の二階堂氏が放つ影が俺の頭を離れなかった。


その日の昼、輝宗が広間に現れた。


春の日差しが彼の顔を照らし、落ち着いた声が響いた。


「梵天丸、陸奥の北が我が手に落ち着いた」


「されど、南の影が動き出した。どう進めるか考えがあるか?」


俺は「うむ、父上」と一呼吸置いて答えた。


「二階堂氏が何か企んでるなら、こっちから爪を伸ばして罠を仕掛けたい」


「鍛冶で武器を増やしつつ、田村氏と相馬の耳を頼りに影の動きを掴む」


「黒脛巾組に二階堂氏の企みを暴かせて、こっちの策を先に進めようと思う」


輝宗が「罠を仕掛けるか」と目を鋭くした。


「具体的にどう動く?」


「遠藤殿に須賀川の城下に近い道で動きを監視させ、田村氏と相馬に南の影の正体を探らせる」


「黒脛巾組には二階堂氏の隠し事を探らせて、罠を仕掛ける隙を見つける」


「鍛冶はさらに増やして、いつでも動ける準備を整える」


輝宗が「監視と罠、準備か」と頷いた。


「良き策じゃ。遠藤に道を監視させ、田村氏と相馬に影を追わせよ」


「黒脛巾組に隠し事を探らせ、鍛冶を急がせよ」


俺は「了解だ、父上」と静かに決意した。


戦国の道は爪で罠を仕掛けるものだ。


数日後、俺が広場で地図を手に春風を感じていると、遠藤基信が会津から戻ってきた。


鎧に春の埃が薄く付き、静かな眼差しが俺を見ていた。


「梵天丸様、輝宗様、須賀川の城下に近い道の報せにござる」


「二階堂氏の兵が南の道で動きを増やし、夜に荷車が頻りに通っておると申す」


「何かを運んでおる様子だが、詳しい目的はまだ掴めませぬ」


俺が「遠藤殿、それは気になるな」と少し目を細めた。


「夜に荷車が動くか。二階堂氏が何か隠してる可能性が高い」


「道の動きをさらに監視して、荷車の行き先を掴んでくれ」


遠藤が「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と頷いて去った。


俺は内心で少し焦った。


荷車が運ぶもの。歴史にない動きが広がってる。


数日後、俺が広間で地図を眺めていると、黒脛巾組の忍びが音もなく現れた。


黒い脛巾を巻いた男が膝をつき、低い声で報告した。


「梵天丸様、須賀川の南の道を探り申した」


「二階堂氏が森の中で荷車を隠し、夜に何者かと会っておるところを目撃し申した」


「相手の声は陸奥の外の者かと。荷車の中身はまだ見えませぬ」


俺が「おお、早いな」と軽く笑った。


「黒脛巾組、頼もしい。陸奥の外の者か」


「二階堂氏が会ってる相手を特定して、荷車の中身を掴んでくれ」


忍びが「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と静かに消えた。


俺は内心で少し驚いた。


陸奥の外の勢力。蘆名か、それとももっと遠くか?


数日後、俺が広場で地図を手にしていると、片倉景綱が相馬からの報せを持って現れた。


春の風が彼の髪を揺らし、落ち着いた声が響いた。


「梵天丸様、輝宗様、相馬の村からの報せにござる」


「南の道で二階堂氏の荷車が動き、森の奥で影が隠れておると申しておる」


「影の動きが速く、追うのは難しい様子にござる」


俺が「おお、それは良き報せだ」と穏やかに笑った。


「片倉殿、森の奥に隠れる影か。二階堂氏の企みが少し見えてきたな」


「その影の動きをさらに追って、どこに繋がってるか探ってくれ」


片倉景綱が「梵天丸様、森の影を追わせ申す」と頷いて去った。


俺は頭を働かせた。


森に隠れる影。二階堂氏が仕掛ける罠か、それとも別の勢力の動きか?


数日後、俺が広場で地図を眺めていると、鬼庭左月が二本松から戻ってきた。


春の風が彼の鎧を軽く鳴らし、静かな声が響いた。


「梵天丸様、輝宗様、田村氏の報せにござる」


「須賀川に近い村で、二階堂氏の荷車が森に消え、その後小さな舟が川を下ったとの話が聞こえ申した」


俺が「おお、それは気になるな」と少し眉を寄せた。


「鬼庭殿、荷車が森から舟に変わるか。二階堂氏が川で何かを運んでる可能性がある」


「田村氏に川沿いの動きを追ってもらおう」


鬼庭左月が「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と頷いて去った。


俺は内心で少し焦った。


川で運ぶ何か。二階堂氏の企みが形になりつつある。


数日後、俺が広場で地図を手にしていると、小十郎が元気に走ってきた。


春の陽射しが彼の汗を輝かせ、いつもの笑顔が眩しかった。


「梵天丸様、鍛冶が順調にござる!」


「刀や槍が山ほどできて、次はどうしましょうか?」


俺が「小十郎、見事だな。鍛冶が動いてるなら、武器を二本松に運んでくれ」と穏やかに言った。


「田村氏と一緒に試して、いつでも動けるように準備してほしい」


小十郎が「武器を運ぶにござるか! 俺、梵天丸様のために頑張り申す!」と目を輝かせて去った。


俺は「こいつ、春でも元気だな」と内心で苦笑した。


その明るさが俺の焦りを和らげてくれる。


数日後、俺が広間で輝宗と地図を見ていると、彼が低い声で言った。


「梵天丸、須賀川の影が動き出したな」


「うむ、父上。二階堂氏が南の道で密会し、荷車を森に隠して川で運んでるらしい」


「黒脛巾組が相手を追ってるけど、まだ正体は掴めてない」


輝宗が「川で運ぶか」と目を細めた。


「二階堂氏の企みを逆に利用できれば、こっちが影を掴めるな」


俺は「うむ、父上。黒脛巾組に罠を仕掛ける隙を探らせてる」と頭をフル回転させた。


「二階堂氏の動きを逆手に取って、こっちの爪を伸ばしたい」


輝宗が「良き策じゃ」と頷いた。


「黒脛巾組に隙を見つけさせよ」


俺は「了解だ、父上」と内心で少し胸が高鳴った。


春の風が強まる中、須賀川の影が少しずつ浮かび上がってくる。


遠藤基信が道を監視し、鬼庭左月が田村氏の耳を動かす。


片倉景綱が相馬の目を森に向け、小十郎が武器を運び、黒脛巾組が罠の隙を探っている。


俺は広場で地図を手に、春の陽射しの中で次の手を考える。



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