第20話 龍の影と忍び
西暦1573年(元亀4年)、春
春の柔らかな風が米沢城の窓を撫で、俺が広間から外を見ると、雪が溶けて大地に新しい緑が芽吹き始めていた。
会津は遠藤基信が守りを固め、二本松は鬼庭左月と小十郎が田村氏と共に次の動きを待っている。
相馬は片倉景綱が味方として支え、愛姫との婚姻の約束が田村氏との絆を未来で結びつけていた。
内政と外交が伊達家の基盤を広げているけど、須賀川の霧がまだ晴れず、南からの囁きが俺の耳を離れなかった。
その日の昼、輝宗が広間に現れた。
春の日差しが彼の顔を照らし、落ち着いた声が響いた。
「梵天丸、春が訪れ、陸奥の北が我が手に落ち着いた」
「されど、南の影を捉えるには新たな手が必要じゃ。どう進めるか考えがあるか?」
俺は「うむ、父上」と一呼吸置いて答えた。
「須賀川の霧が晴れぬなら、こっちから影を掴む策を進めたい」
「米沢の鍛冶を増やして力を蓄えつつ、田村氏と相馬の耳を頼りに動きを確かめる」
「二階堂氏の影が見えたら、次の手を打つ時だ」
輝宗が「影を掴むか」と目を鋭くした。
「具体的にどう動く?」
「遠藤殿に須賀川の城下に近い村の情報をさらに集めさせ、田村氏と相馬に南の道の影を探らせる」
「米沢じゃ、鍛冶を増やして武器を整える」
輝宗が「情報と武器か」と頷いた。
「良き策じゃ。遠藤に須賀川を探らせ、田村氏と相馬に影を追わせよ」
「鍛冶の準備も進めよ」
俺は「了解だ、父上」と静かに決意した。
戦国の道は影を掴むことから始まる。
数日後、俺が広場で地図を手に春風を感じていると、遠藤基信が会津から戻ってきた。
鎧に春の埃が薄く付き、静かな眼差しが俺を見ていた。
「梵天丸様、輝宗様、須賀川周辺の村の報せにござる」
「村の者から、二階堂氏が南の道で何者かと密かに会っておるとの話が聞こえ申した」
「影の正体はまだ掴めませぬが、物資の動きが続いておる様子にござる」
俺が「遠藤殿、それは気になるな」と少し目を細めた。
「二階堂氏が密かに会ってる相手か。物資の動きと繋がってる可能性がある」
「村の情報をさらに集めて、その相手の気配を掴んでくれ」
遠藤が「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と頷いて去った。
俺は内心で少し緊張した。
南の道の影が動き出したか。歴史にない流れだ。
数日後、俺が広場で地図を眺めていると、片倉景綱が相馬からの報せを持って現れた。
春の風が彼の髪を揺らし、落ち着いた声が響いた。
「梵天丸様、輝宗様、相馬の村から新たな報せにござる」
「南の道で怪しい影が動き、夜に馬の足音が聞こえたと申しておる」
「二階堂氏が何かを企んでおるやもしれぬ」
俺が「おお、それは良き報せだ」と穏やかに笑った。
「片倉殿、相馬の耳が動いてるなら、須賀川の影が少し見えてくるな」
「南の道の足音をさらに追ってくれ」
片倉景綱が「梵天丸様、南の道の影を探らせ申す」と頷いて去った。
俺は頭を働かせた。
二階堂氏が企む何か。相馬と田村氏の耳が鍵になる。
その日の夕方、俺が広間で輝宗と地図を見ていると、小十郎が元気に飛び込んできた。
春の陽射しが彼の笑顔を照らし、いつもの明るさが漂っていた。
「梵天丸様、輝宗様、米沢の鍛冶が増えてござる!」
「刀や槍がどんどんできて、次はどうしましょうか?」
俺が「小十郎、見事だな。鍛冶が動き出したなら、武器を試してみたい」と穏やかに言った。
「二本松に持って行って、田村氏と一緒に鍛えてくれ」
小十郎が「鍛えるにござるか! 俺、梵天丸様のために頑張り申す!」と目を輝かせて去った。
俺は「こいつ、春になっても元気だな」と内心で苦笑した。
その明るさが俺の緊張を和らげてくれる。
数日後、俺が広場で地図を手にしていると、鬼庭左月が二本松から戻ってきた。
春の風が彼の鎧を軽く鳴らし、静かな声が響いた。
「梵天丸様、輝宗様、田村氏の報せにござる」
「須賀川に近い村で、二階堂氏が南の道で会った影が、会津に目を向けておるとの話が聞こえ申した」
俺が「おお、それは気になるな」と少し眉を寄せた。
「鬼庭殿、二階堂氏が会津に目を向けてるなら、俺たちの動きに気付いてるのかも」
「田村氏にその影の動きをさらに追ってもらおう」
鬼庭左月が「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と頷いて去った。
俺は内心で少し焦った。
会津に目を向ける影。俺たちの動きが漏れてるのか?
その夜、俺が広間の暖炉のそばで地図を見ていると、輝宗が近づいてきた。
「梵天丸、須賀川の影はどうじゃ?」
「父上、二階堂氏が南の道で何者かと密かに会い、会津に目を向けてるらしい」
「遠藤殿と片倉殿、鬼庭殿に影を追わせてるよ」
輝宗が「会津に目を向けるか」と低い声で呟いた。
「影の正体を掴まねば、次の手が打てぬな」
俺は「うむ、父上。ここで手を緩めたら、影に先を越される」と頭をフル回転させた。
「もっと鋭い耳が必要だと思う」
輝宗が「鋭い耳か」と俺を見た。
「何か考えがあるか?」
「うん、父上。俺たちの耳を補う影を動かしたい」
「黒脛巾組って忍びがいるだろ。あいつらを使おうと思う」
輝宗が少し目を丸くして、「黒脛巾組か」と呟いた。
「確かに、あやつらは影の中を動き、囁きを掴む術に長けておる」
「良き策じゃ。黒脛巾組に須賀川の影を探らせよ」
俺は「了解だ、父上」と内心で少し胸が高鳴った。
黒脛巾組か。歴史で読んだ忍びが動く時が来た。
数日後、俺が広場で地図を手に春の陽射しを感じていると、黒い影が音もなく近づいてきた。
黒い脛巾を巻いた男が膝をつき、低い声で報告した。
「梵天丸様、黒脛巾組が参り申した」
「須賀川の南の道を探る命を受け、既に影を追ってござる」
俺が「おお、早いな」と軽く笑った。
「黒脛巾組、頼もしい。南の道の影が何者か、動きを掴んでくれ」
忍びが「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と静かに消えた。
俺は内心で少し驚いた。
こいつら、マジで忍者だな。影を掴む速度が違う。
数日後、俺が広間で地図を広げていると、輝宗が暖炉のそばに立っていた。
「梵天丸、黒脛巾組はどうじゃ?」
「父上、既に南の道の影を追ってるらしい」
「遠藤殿たちと合わせて、須賀川の動きが浮かんでくるはずだ」
輝宗が「良き動きじゃ」と頷いた。
「影が掴めれば、次の策が見えるな」
俺は「うむ、父上。黒脛巾組の耳が鍵になる」と頭を働かせた。
春の風が強まり、須賀川の霧が少し揺れている気がした。
遠藤基信が村の囁きを探り、鬼庭左月が田村氏の耳を動かす。
片倉景綱が相馬の目を南に向け、小十郎が鍛冶を鍛え、黒脛巾組が影を追っている。
俺は広場で地図を手に、春の陽射しの中で次の手を考える。




