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第19話 龍の耳と囁き

西暦1572年(永禄15年)、冬


冬の初雪が米沢城の屋根に薄く積もり、俺が広間から外を見ると、冷たい空気が霧を凍らせていた。


会津は遠藤基信が守りを固め、二本松は鬼庭左月と小十郎が田村氏と共に動いている。


相馬は片倉景綱が味方として支え、愛姫との婚姻の約束が田村氏との絆を未来で結びつけていた。


内政と外交が伊達家の基盤を広げているけど、須賀川の霧が晴れず、俺の耳に届くかすかな囁きが気になっていた。


その日の昼、輝宗が広間に現れた。


暖炉の火が彼の顔を照らし、静かな眼差しが俺を捉えた。


「梵天丸、冬が訪れ、陸奥の北が我が手に落ち着いた」


「されど、南の囁きを聞く耳が必要じゃ。どう進めるか考えがあるか?」


俺は「うむ、父上」と一呼吸置いて答えた。


「須賀川の霧が晴れぬなら、こっちから耳を澄ませて動きを掴みたい」


「米沢の鍛冶を増やして力を蓄え、田村氏に南の情報を集めてもらおうと思う」


「二階堂氏の囁きが聞こえたら、次の手を打つ時だ」


輝宗が「囁きを聞くか」と目を鋭くした。


「具体的にどう動く?」


「遠藤殿に須賀川の城下に近い村で情報を集めさせ、田村氏に南への耳を広げる協力を頼む」


「米沢じゃ、鍛冶を増やして武器を整える」


輝宗が「情報と武器か」と頷いた。


「良き策じゃ。遠藤に須賀川を探らせ、田村氏に耳を貸させよ」


「鍛冶の準備も進めよ」


俺は「了解だ、父上」と静かに決意した。


戦国の道は耳で囁きを捉えるものだ。


数日後、俺が広場で地図を手に雪を見ていると、遠藤基信が会津から戻ってきた。


鎧に雪が薄く付き、吐く息が白く舞っていた。


「梵天丸様、輝宗様、須賀川周辺の村の報せにござる」


「城下に近い村で、二階堂氏が物資を隠しておるとの囁きが聞こえ申した」


「南の道から知れぬ影が動き、物資を運んでおると村の者が申しておる」


俺が「遠藤殿、それは気になるな」と少し目を細めた。


「物資を隠す囁きと知れぬ影か。二階堂氏が何か企んでる可能性がある」


「村の囁きをさらに集めて、その影の正体を探ってくれ」


遠藤が「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と頷いて去った。


俺は内心で少し緊張した。


知れぬ影か。歴史の裏側が動いてるかもしれない。


数日後、俺が広間で地図を眺めていると、輝宗が暖炉のそばに立っていた。


「梵天丸、須賀川の囁きはどうじゃ?」


「父上、二階堂氏が村で物資を隠してるらしい」


「南の道から知れぬ影が動いてるって話だ。遠藤殿にその正体を探らせてるよ」


輝宗が「知れぬ影か」と低い声で呟いた。


「田村氏の耳がその囁きを掴めば、霧が晴れるかもしれぬな」


俺は「うむ、父上。田村氏に南への耳を広げてもらおう」と頭を働かせた。


囁きが動き出す前に、こっちが耳を澄ませる。


数日後、鬼庭左月が二本松から戻ってきた。


雪が彼の鎧に薄く積もり、静かな眼差しが俺を見ていた。


「梵天丸様、輝宗様、田村氏の報せにござる」


「田村当主が須賀川に近い村に耳を広げる者を送ると申してござる」


俺が「おお、それは良きことだ」と穏やかに笑った。


「鬼庭殿、田村氏が耳を広げてくれるなら、須賀川の囁きが聞こえてくるな」


輝宗が「田村氏の耳か」と俺を見た。


「うむ、父上。田村氏が動けば、須賀川の影に近づける」


鬼庭左月が「梵天丸様、近日中に耳を広げる者を送り申す」と頷いて去った。


俺は内心で少し胸が温かくなった。


愛姫との縁が田村氏を動かしてる。


数日後、俺が広場で雪を踏みながら地図を見ていると、小十郎が元気に近づいてきた。


雪が彼の髪に積もり、笑顔が冬の冷たさを和らげていた。


「梵天丸様、二本松はしっかり守ってござる!」


「次は何をしましょうか?」


俺が「小十郎、見事だな。二本松が固いなら、米沢の鍛冶を増やす手伝いを頼む」と穏やかに言った。


「武器を整えれば、須賀川に備える力が強まるよ」


小十郎が「鍛冶にござるか! 俺、梵天丸様と一緒に頑張り申す!」と目を輝かせて去った。


俺は「こいつ、雪でも元気だな」と内心で苦笑した。


その明るさが俺の心を軽くしてくれる。


数日後、片倉景綱が相馬からの報せを持って広間に現れた。


雪が彼の肩に薄く積もり、落ち着いた声が響いた。


「梵天丸様、輝宗様、相馬の当主が須賀川に耳を向けておると申してまいり申した」


「南の道に怪しい影を見たとの報告が村から上がってきておる」


俺が「おお、それは良き報せだ」と穏やかに笑った。


「片倉殿、相馬が耳を向けてるなら、須賀川の囁きが近づいてくるな」


輝宗が「相馬の耳か」と俺を見た。


「うむ、父上。相馬と田村氏が耳を広げれば、須賀川の影が浮かんでくる」


「遠藤殿の情報と合わせて、策を練りたい」


片倉景綱が「梵天丸様、相馬に南の道の影を探らせ申す」と頷いて去った。


俺は内心で耳を澄ませた。


冬の雪が降り積もる中、須賀川の囁きが少しずつ聞こえてきた。


遠藤基信が霧の中を探り、鬼庭左月が田村氏の耳を動かす。


片倉景綱が相馬の目を南に向け、小十郎が鍛冶の準備を進めている。


俺は広場で地図を手に、次の影を待つ。



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