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第18話 龍の足音と霧

西暦1572年(永禄15年)、晩秋


晩秋の霧が米沢城の周りを包み、俺が広間から外を見ると、木々の葉がほとんど落ちて寂しげな枝だけが残っていた。


会津は遠藤基信が民の暮らしを支えつつ守りを固め、二本松は鬼庭左月と小十郎が田村氏と協力して次の動きに備えている。


相馬は片倉景綱が味方として引き込み、愛姫との婚姻の約束が俺と田村氏を未来で結びつけていた。


内政と外交が伊達家の基盤を広げつつあるけど、須賀川の霧が俺の視界を曇らせていた。


その日の昼、輝宗が広間に俺を呼んだ。


俺が入ると、輝宗は暖炉のそばで手を温めながら俺を見ていた。


「梵天丸、田村氏と相馬が我が味方となり、陸奥の北が固まった」


「されど、南の霧を晴らすには新たな足音が必要じゃ。そなたの考えを聞かせよ」


俺は「うむ、父上」と一呼吸置いて答えた。


「須賀川の二階堂氏が動かぬなら、こっちから霧を切り開く策を進めたい」


「内政で会津の力をさらに蓄え、外交で田村氏との絆を試す時だと思う」


「霧の中の足音を聞く準備が必要だ」


輝宗が「霧を切り開くか」と目を細めた。


「具体的にどう動く?」


「遠藤殿に須賀川の周辺を調べさせ、霧の向こうの気配を掴む」


「田村氏に二本松から使者を送らせて、俺たちの意志を南に示したい」


「内政じゃ、会津の民に冬を越す備えを整えさせる」


輝宗が「気配と意志、備えか」と頷いた。


「良き策じゃ。遠藤に須賀川の周辺を探らせ、田村氏に使者を送らせよ」


「梵天丸、内政の足音を響かせよ」


俺は「了解だ、父上」と静かに決意した。


戦国の道は足音で霧を晴らすものだ。


数日後、俺が広場で地図を手に霧の中を見ていると、遠藤基信が会津から戻ってきた。


鎧が霧の湿気で鈍く光り、顔には晩秋の冷たさが染みついていた。


「梵天丸様、輝宗様、須賀川周辺の報せにござる」


「二階堂氏の城下は静かだが、霧の中で物資を運ぶ影が見え申した」


「南の道に馬の足跡が増え、どこかへ繋がっておる様子にござる」


俺が「遠藤殿、それは気になるな」と少し目を細めた。


「物資の影と足跡か。二階堂氏が何か企んでるかもしれぬ」


「霧の中をさらに探って、その先を掴んでくれ」


遠藤が「はっ、梵天丸様の命に従い申す」と頷いた。


「須賀川の霧を切り開き申す」


俺は「うむ、頼もしい。会津の冬支度も頼んだぞ」と軽く笑った。


遠藤が「梵天丸様の言葉、心に留め申す」と頭を下げて去った。


俺は内心で少し緊張した。


霧の中の動きか。歴史の流れが揺れてるな。


輝宗が広間に現れ、「梵天丸、須賀川の霧はどうじゃ?」と聞いてきた。


「父上、二階堂氏の城下は静かだが、物資の影と足跡が見えたらしい」


「何か企んでる気配がある。遠藤殿に霧の中を探らせてるよ」


輝宗が「企みか」と低い声で呟いた。


「田村氏の意志が霧を晴らすかもしれぬな」


俺は「うむ、父上。田村氏に使者を送らせて、南に俺たちの足音を響かせよう」と頭を働かせた。


霧が動く前に、こっちが仕掛ける。


数日後、俺が広場で地図を眺めていると、鬼庭左月が二本松から戻ってきた。


晩秋の風が彼の鎧を冷たく鳴らし、落ち着いた目が俺を見ていた。


「梵天丸様、輝宗様、田村氏との新たな報せにござる」


「愛姫殿との婚姻を前に、田村当主が二本松の民を励まし、冬を越す備えを進めてござる」


「須賀川へ使者を送る準備も整い申した」


俺が「おお、それは良きことだ」と穏やかに笑った。


「鬼庭殿、田村氏が民を励ましてるなら、二本松が強くなるな」


「使者が須賀川へ行けば、霧に俺たちの意志が届く」


輝宗が「梵天丸、田村氏の動きか」と俺を見た。


「うむ、父上。愛姫殿との縁が近づけば、田村氏との絆がさらに深まる」


「須賀川への足音も響きやすくなると思う」


鬼庭左月が「梵天丸様、田村氏が使者を送る日を近日中に定め申す」と頷いた。


俺は「うむ、鬼庭殿に田村氏との調整を任せる。慎重に進めてくれ」と静かに言った。


輝宗が「良き策じゃ」と決めた。


「鬼庭、田村氏の使者を進めよ」


「梵天丸、次の足音を響かせよ」


俺は「了解だ、父上」と内心で少し胸が熱くなった。


愛姫との絆が霧を晴らす鍵になる。


数日後、俺が広場で地図を見ていると、小十郎が元気に近づいてきた。


霧の中で彼の笑顔がぼんやり浮かび、いつも通りの明るさが漂っていた。


「梵天丸様、二本松の冬支度が進み申した!」


「鬼庭殿と一緒に民を励まして、次は何をしましょうか?」


俺が「小十郎、見事だな。二本松が冬を越せるなら、会津も負けられない」と穏やかに言った。


「会津の民に冬を越す備えを手伝わせる策を進めるよ」


小十郎が「冬の備えにござるか! 俺、梵天丸様と一緒に頑張り申す!」と目を輝かせた。


俺は「うむ、小十郎には二本松を支えつつ、会津の民を励ます手伝いを頼む」と頭を整理した。


「民が冬を越せば、伊達家の足音も強まるよ」


小十郎が「はっ、梵天丸様の命に従い申す!」と元気に頷いた。


俺は「こいつ、霧の中でも元気だな」と内心で苦笑した。


その明るさが俺の不安を少し溶かしてくれる。


その夜、俺が米沢城の奥の間に行くと、義姫が灯りの下に座っていた。


窓から霧の冷気が流れ込み、灯りが静かに揺れている。


義姫が穏やかな目で俺を見てきた。


「梵天丸、そなた、田村氏との絆を試し、須賀川の霧に挑もうとしておるな」


「うむ、母上。愛姫殿との縁を前に、南の霧を晴らしたい」


「内政で民を支えれば、伊達家の未来も見えてくる」


義姫が静かに立ち上がり、俺を見つめた。


「そなた、戦を離れ、内政と外交に心を砕いておる」


「母として、そなたの志に深い安堵を感じておる」


「されど、霧の中は見えぬもの。心して進めるが良い」


その声には戦国の母としての優しさと静かな警告が込められていた。


俺が「母上、俺、慎重に進めるよ」と穏やかに笑うと、義姫が「うむ」と頷いた。


米沢の晩秋の夜が深まる中、義姫の言葉が俺に新たな眼を与えてくれた。


数日後、俺が広場で地図を手にしていると、片倉景綱が相馬からの報せを持って戻ってきた。


霧が彼の姿をぼんやりと包み、落ち着いた声が響いた。


「梵天丸様、輝宗様、相馬の当主が冬の備えを進めつつ、須賀川への眼を強めると申してまいり申した」


「田村氏との絆を頼もしく思うと申しておる」


俺が「おお、それは良きことだ」と穏やかに笑った。


「片倉殿、相馬が冬を越す備えを進めてるなら、須賀川への足音が近づくな」


輝宗が「梵天丸、相馬の動きか」と俺を見た。


「うむ、父上。相馬と田村氏が冬を越せば、須賀川の霧に挑む力が揃う」


「遠藤殿の報せと合わせて、策を進めたい」


片倉景綱が「梵天丸様、相馬に冬の備えを急がせ、須賀川への眼を向けさせ申す」と頷いた。


俺は「うむ、片倉殿に任せる。着実に進めてくれ」と静かに言った。


輝宗が「良き策じゃ」と決めた。


「片倉、相馬の備えを固めよ」


「梵天丸、次の霧を見据えよ」


俺は「了解だ、父上」と内心で胸が静かに熱くなった。


霧の中の足音が聞こえてきた。


その日から、伊達家の足音が新たな息吹を帯び始めた。


遠藤基信が須賀川の霧を探り、鬼庭左月が田村氏の使者を動かす。


片倉景綱が相馬の備えを進め、小十郎が内政を支える。


輝宗が「陸奥の霧が晴れる日が近い」と呟いた。


俺は「戦国の道は足音で霧を切り開く」と静かに感じた。


隻眼の龍として、米沢から陸奥を切り開く戦いが、今新たな霧の中で進んでいた。



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