第20話:領主からの手紙
カイルパーティー:カイル、ノドカ、ソフィア、カーラ、ケイトの5人パーティー
ノースウッドの領主:???
本格的なダンジョン探索のため準備を始めてから数日後。
全員揃っての昼食時に誰かの気配を感じた。
その気配は5人ほどの団体であり、俺たちの家に直進してくる。
「カーラ、ケイト。臨戦態勢を取れ」
俺は武器を持って、扉の前を陣取った。
ノドカとソフィアはリビングの真ん中に寄せ、両隣をカーラとケイトで固める。
張り詰めた空気感の中、扉から音がした。
コンッ、コンッ、コンッ。
「誰かいらっしゃいますか?」
丁寧に優しく扉を叩く音の後、しわがれた老人のような声が聞こえた。
俺は皆を確認してから、扉を開けた。
扉を開けた先には執事服を着た老人と、重装備を身に纏った兵士が5人いた。
結構な年を召されているにも関わらず背筋が伸びている老人が、話を始める。
「いらっしゃいましたか。あなた様はカイル様でお間違いないですかな?」
老人の目は薄っすらとしか開いていないから、全く感情が読み取れない。
俺は臨戦態勢のまま答える。
「ああ、そうだ。俺がカイルだ」
相手をじっくり見る。名前を聞いて動き出せば敵として排除するだけだ。
「そうでしたか。それはようございました」
だが老人は何食わぬ顔で話を続ける。
「それで、ご老人が兵士を連れてここに何用かな?」
「申し遅れました。私はノースウッドの街を治めております領主家の執事でございます」
「っ!?……なんだ?復讐に来たのか?」
俺は腰に佩いていた直剣の柄を握りながら聞く。
老人の周りにいた兵士はその動きを見逃さず、素早く俺と老人の間に立ち塞がろうとした。
だが老人が手で静止して、話を続けた。
「そのような気は毛頭もございません。ただ本日は私が仕えております当主様より手紙を預かっているため、届けに参った次第でございます」
そういって老人は胸ポケットから1枚の羊皮紙を取り出した。
「この羊皮紙に毒はございませんのでご安心を。それでは僭越ながら私が読み上げさせていただきます」
そう言って老人が、羊皮紙に書かれている内容を読み上げ始めたが、すぐに読み終わった
・元領主の息子である自分が新たな領主に任命された
・話し合いがしたいから好きな時に領主邸まで来てくれ
ただこれだけの内容だったからだ。
俺は老人を見定めるように聞く。
「これに行くとでも?」
そう、なぜ俺を殺そうとした領主邸に行かなければいけないのか。
簡単に行こうという能天気なバカは、かなり少ないだろう。
「それは領主様の御心次第でございます。ですが私は確かにお伝えしましたよ」
老人は意も返さず、持っていた羊皮紙を渡そうとしてきた。
受け取るべきか悩んでいると、いつの間にか隣にいたケイトがその羊皮紙を受け取る。
羊皮紙を受け取ったことを確認した老人と兵士たちは、再び来た道を戻っていった。
「ケイト、無事か?」
「問題ない。確認済み」
「できればそのことを言ってから受け取って欲しいのだが……」
そんなことを言いつつ俺たちは再び席に座り直し、羊皮紙の内容を確認していくのだった。
* * * * * *
「さて、これについてどうすべきか皆の意見を聞きたい」
俺はそういって皆を見た。
「反対!また何か仕掛けてくるかもしれないし!」
「私もできれば反対なのですが、新しい領主なら見定めておく必要があります」
「私は行った方がいいと思うけどな。これからもノースウッドの街に行くだろうし」
「私も賛成」
ノドカが反対、カーラとケイトが賛成、ソフィアは消極的に賛成といったところか。
「最後は俺か。俺も行くに賛成だな。カーラの言う通り今後もノースウッドの街へ行くだろう。ならばそこの領主に嫌われるというのは、可能な限り避けたいからな」
「で、でも!」
「ノドカの言いたいことも分かっている。安全面を考えたら絶対に行かない方がいい。だが、安全ばかりに気を取られていたら冒険者はできないんだ」
「……」
俺は説得するようにノドカの言葉に重ねる。
そして俺はリーダーとして今後の動きを決めた。
「よし、それでは明日、全員で領主邸へと向かうこととする。ただしいつでも戦闘できるよう装備を各自整えておけよ」
そういうと皆自分の装備を確認するため散らばっていった。
ただノドカだけは俺の決定に不服なのか、席に座って俯いたままだ。
「ノドカ、お前も準備しておいてくれよ」
「……」
俺は立ち上がり声を掛けたらが、ノドカは黙って何も答えない。
俺はノドカの隣に座る。
「ノドカが反対なのはわかる。だが危険を避けてばかりだと駄目なんだ」
「で、でも今回も襲撃されたら……」
「それはこの家にいる限り同じだぞ?それに今回は武装して向かうから、いつもより安全だ」
「それは分かっていますけど……」
危険を冒しても行かなければいけないこと、絶対に安全な選択肢だけを選ぶのは駄目とノドカも頭の中では分かっているのだろう。
俺は説得を続ける。
「俺だけじゃなくてカーラとケイトも守ってくれる。もちろんノドカやソフィアも守ってくれるだろ?」
そう言うとノドカは俺の方を振り向いた。
「私が……ですか?」
「うん?そうだ。戦う力が今は無くとも、いつかきっと俺を守れるくらいの力を手に入れられるさ」
ノドカは自身の手を見て、目を輝かせていく。
「そうか、そうですよね。私がカイルさんを守れるようになればいいですよね!」
どんどん声が大きくなり、いつもの調子に戻っていくノドカ。
「いつかきっと私が守ってあげますからね、カイルさん!覚悟しておいてくださいよ!」
おいおい、そのセリフは俺を殺しに来る奴の言葉だぞ……。
そう言おうとした時
「ノドカ?元気なのはいいですが、まずは明日の準備をしましょうね?」
ノドカの肩に凍り付いた笑顔を浮かべるソフィアの手が置かれた。
「ソフィア!?あ、ちょっと、今行くから待って!」
抵抗虚しくノドカは、ソフィアに引き摺られていった。
さて、俺も明日に備えて装備を整えないとな。
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これまで更新した話も順次更新していくので、少々お待ちください。




