第17話:事件のあらまし
カイル:主人公
ノドカ:見習い冒険者兼カイル専用メイド
ソフィア:旅商人の娘
カーラ:茶髪ショートヘアの犬耳冒険者
ケイト:黒髪ポニテの猫耳冒険者
あの大事件の後、俺はノースウッドの街にある病院でノドカとソフィア、カーラ、ケイトに囲まれながら療養していた。
まだ完全に毒が抜けきっておらず、身体の節々が痺れてしっかりと動かせない。
それに街は未だ大騒動の真っただ中で、ほぼ全ての町民が領主邸に詰め寄っている。
現在の領主邸は王都にいた領主の1人息子が管理しているらしいが、まだこの街に戻ってきていないらしい。
だから一時的に家令が町民たちの対応に当たっており、場を鎮めるようと必死に説得している。
だが事件の被害者や遺族が多く責任者でもない家令で鎮まるはずもなく、事件の影響が長く残り続けることだろう。
そんな中、切ってくれた果物をノドカに食べさせてもらいながら俺は皆に感謝を伝えていた。
「皆心配をかけて申し訳なかった。そして俺を救ってくれてありがとう」
「私はカイルさんの奴隷なので、当然のことをしたまでですよ!」
「私もまだ恩返しは終わっていません」
「アタシは頼まれちゃったしてねぇ~」
「同じく」
ノドカ、ソフィア、カーラ、ケイトがそう答えてくれた。
感謝はしているがどうして逃げなかったのか、どうしてあんな危険なことをしたのか。
その思いは今でも変わっていない。
だからこそ、俺は彼女たちにどのくらい危険なことをさせてしまったのかを知っておく必要がある。
今度は彼女たちにそんな危険なことをさせないためにも、そしてそのようなことをしようとしたら止めるためにも。
「どうやって俺を助けてくれたんだ?」
俺はそう努めて冷静に聞いた。
実は自分が救出された時の記憶が不明瞭だった。
毒が身体中に回っていることに加え拷問もされていたので、肉体的にも精神的にも限界だったのだろう。
ノドカは新しい果物を俺の口に押し付けながら、救出作戦のあらましを語ってくれた。
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月光が森や家を包んでいる時、私とソフィア、カーラ、ケイトはランプの置かれたテーブルを囲んでいた。
「それで……マジな話、どうするのさ?気合だけあっても無理なもんは無理だぞ?」
「とにかく情報も人手も無い」
カーラとケイトが、現実的な問題を口にする。
だが、私には勝算があった。
最近気づいた能力で、カイルさんにも言っていない力だ。
この力を使うと相手の行動とかが薄っすらと分かってくる。
だからこそ、確実とは言わないまでも成功する自信があるのだ。
作戦の開始は、この拠点に兵士を集めるために拠点を燃やすことです。
燃やす方法は蝋燭をロープにかけておき、ランプと繋ぐだけでいけます。
これで時間が経った後、蝋燭に掛けられていたロープが取れて、結ばれていたランプが下に落ちて家が燃えるはず。
重要なのは、火災を意図的に遅らせて発生させられるということ。
燃えている拠点を確認するため、街や森の中にいる兵士を集められるでしょう。
全ての兵士を相手にするのは無理なので、これで少しでも相手の兵力を削ります。
次に私たちですが、日が昇る前にはノースウッドの街に到着しておく必要があります。
ソフィアは場所がどこかは分からないけど、処刑場で処刑直前になったら群衆を煽り立ててください。
カーラさんはソフィアの護衛をお願いします。
処刑直前になったら処刑台からは領主がいなくなるので、警備が手薄になるからです。
普通は処刑を阻止させないように警備を増やしますが、絶対に自分を守る領主なら私兵を自分中心に置いているでしょうからね。
その間に、私とケイトさんは領主邸に潜入します。
ケイトさんは領主邸の中にある不正とかの証拠を、集めてください。
土葬のこの世界では、秘密裏に処理した人間はどこかに隠すしかないから、きっと遺体が見つかるはず。
森の中とかの可能性もあるけど、冒険者とか木こりに見つかるかもしれないリスクを背負ってまで隠す必要はないから、きっと領主邸の中にあるはず。
遺体は絶対に遺品と共に集めて、集め終わったらそれを持ってカーラさんたちと合流します。
合流したら、その遺品を人の視線が集まる場所に置いてくださいね。
できたら処刑場の上、それが無理なら領主邸の上に置いてとにかく街の人に領主が遺体を隠していたことを伝えてください。
並べ終わったらソフィアが街の人たちの視線を、その遺体に誘導しましょう。
これでソフィアが言っていることが本当のことだと、街の人たちに印象付けられるはずです。
でもこれだけだと少し足りないので、最後に決定的でかつインパクトのある証拠がいります。
なので、私は以前にソフィアから聞いた領主の愛妾を脱出させましょう。
愛妾には脱出させたときに、遺品とかを持たせて何をされていたか語ってもらいます。
愛妾が領主側だった場合は、ただ逃がすだけになりますが扇動には十分でしょう。
これで、街の人たちは完全に領主に反発するはず。
後はソフィアが町民の先頭に立って、領主を追い詰めてください。
ソフィアと街の人の護衛は、カーラさんとケイトさんがしてください。
絶対に領主邸の中に脱出用の通路や手段を使おうとするので、そこを私が仕留めます。
これが私の作戦です。
情報がないので、ほぼ行き当たりばったりの作戦になりますが、これでカイルさんを助けられるでしょう!
「何か質問はありますか?」
周りを見渡して質問を聞いていく。
「私が民たちの説得とありますが、そんなことできるのでしょうか……」
「ソフィアならきっとできる!人をだます必要はないんだよ?ただ思っていることを口にすればいいだけ!」
「そもそも公開処刑するのかどうか、日時も場所も分かっていないんだぞ?」
「いいえカーラさん。絶対に日が昇ったらすぐに公開処刑しますよ」
「な、なんでさ?」
「盗賊討伐という名目で処刑できるし、最高の見せしめになるからです。お前たちも逆らったらこうなるぞと。それなら早ければ早いほどいいし、逃げた私たちに準備させないためにも早く処刑するでしょう」
「……」
「どうやって愛妾を脱出させる?」
「あぁそこはケイトさんにお聞きしたかったんですよ。爆発させられるアイテムってありますか?できたら大きな音が鳴るもので」
「あ、あるぞ」
「民たちが私に付いてこなかったら?」
「ソフィア大丈夫だって。もし付いてこなかったら、カーラさんはソフィアを、ケイトさんはカイルさんを守りながら街を脱出しましょう。その時は私は屋敷に火をつけて爆発させるので、ある程度目線は逸らせるでしょう」
「愛妾たちが私たちの振りになることを言ったら?」
「その時はケイトさん誰にもバレないように暗殺をお任せします。領主側に付くというのなら私達の敵なので」
「い、いやでも」
「敵です。始末したら私が真っ先に領主がやったと叫ぶので、暗殺さえできたら問題ありません」
「……分かった」
「他には?」
全員が黙ってお互いを見ている。
「……最後にアタシからいいか?」
恐る恐るカーラが手を上げたので、どうぞと言う。
「……あんた、何者なんだ?」
そう聞かれてしまった。
いえいえ、私はただの人間ですよ。
ただ異世界生まれというだけの。
私は生まれる前から父親が居らず、母親も違う男にご熱心という最悪の家庭でしたね。
そんな親がマトモに私の面倒を見てくれるはずもなく、日々を生き抜くために必死でした。
でも所詮は何も知らない小娘です。格好のカモだったんでしょうね。
何度も騙され、嘘を吐かれてお金とか食べ物を盗まれたりしましたよ。
だからなんでしょうね。気づけば私は2つの人格を持つようになりました。
1つは今度は騙されないよう必死に勉強しようと頑張る、良い子の私。
もう1つは騙される前に騙したらいいって囁く、悪い子の私。
この世界に来てからは人々と馴染むために、悪い子の私はずっと封印してきました。
でも、それで私の大切なものを傷つけるなら悪い子の私を出すことに容赦はしません。
あぁそれと私の特殊能力ですが、ある程度なら相手の行動を予測できたりするっぽいですね。
今から考えてみれば運動をほとんどしてこなった私が、モンスターの攻撃を避けられたのもこの能力のおかげなんでしょうね。
この能力と悪い子の私の相性がすこぶるいいみたいでしてね。
たっぷりと、あの領主には地獄を見てもらいましょう。
そう答えました。嘘偽りない答えです。
ついつい笑っていましたが、本心からそう思っています。
他に質問はありますか?質問が無いようなら、すぐに行きましょう!
ん?どうしました、カーラさんとケイトさん?
なんで、耳がペタンと閉じているんですか?
え?問題ない?
まぁ、そういうことならいいですけど。
あと1、2話くらいで第1章は終了です。
次は第2章を書きながら第1章の大規模な改修をしていきたいので、まだまだ続けていきたいと思います。




