【なろう版】 おバカな愛され第三王子は異世界人に正体がばれました。だから生涯身柄を拘束して溺愛します▪️限定版コミカライズ作品▪️
初めまして、こんばんは。
異世界転移ものを読むのは大好きですが、自分で書くと難しく、一生懸命設定は考えましたが、気づかず辻褄が合わないところがあるかもしれまん。暖かい目で、ご容赦ください。
皆様に楽しんで頂ければ幸いです。
宜しくお願いします。
第三王子ライトはのんき…、いや穏やかだ。
柔かな光を湛える金髪にオニキスのような深黒の丸い瞳、王家特有の至極色というのだそうだ、優しい顔だちだが背丈はあって、ほどよく筋肉のついた体は流石のスタイルの良さだ。
怒ることもあまりないがあまり主張もしない。にこにこしていて人柄が良いので、のんびりさを心配して逆に王子を支えたい若者が集まった。人徳というやつだろう。
家族仲も良く、王太子が国王となる時に臣下に下り外より兄を支えることが決まっている。愛されて育ったからか、誠実だし成績はよくないが、ひねくれずよい青年だとの評判だ。
しかしそんな彼には婚約者がいなかった。何故なら、彼は幼少時から異世界人を妃とすることが夢だと公言しており、婚約者を決めることだけは強固に嫌がったからだった。
実はこのマクガイア王国は異世界から妙齢の女性を任意で転移させ、異世界の血を取り込んでいる。そうすることで魔法を使える血筋が薄まらないようにしている。希望者を募り、異世界人とのお見合いパーティーに参加してもらい、両想いになると結婚できる仕組みだ。異世界人の気持ちを尊重することで、最終的にこの世界の人間となれるので、政治的な思惑が挟めないように、王家主導の儀式を経て、この世界に残るシステムだ。
第三王子のライトは小さな頃に異世界人にかわいがって貰ったことがきっかけで、将来は異世界人を妃としたいとし、異世界人が転移される度にパーティーへ参加したが選ばれることはなく、未だに一人であった。
またライト王子がのんき…、穏やかなので政略結婚にも向かないし、成績も平凡。だが他の兄弟が優秀なので、そのぐらいの我が儘はいいかとされていたことも要因であった。
「え、これ…本当はライト王子が?!」
王宮で文官をしている私、上坂 真は日本人だ。一年前まで、マネジメント業務に従事していたがスカウトを受け転移し、現在はこちらに居を構えている。独身…。
本来、転移して残った女性は既婚者となるが、私の場合はちょっと仕事に興味を持ちすぎてしまい、相手を選ぶのを忘れていた…。王国の新興事業の展開に関わることができ、ついのめり込みすぎたのだ。業務の発展が気になり過ぎて、「想いがこちらにある」とされ、帰途の儀式で弾かれ、帰り損ねてしまった。更に知り合った男性はみんなお友達で終了してしまったので、生計を一人でたてねばならなかった私は、そのまま文官として就職させてもらった。
王宮勤めの役人だし、噂も聞こえてくる。第三王子については中身は平凡だが見目麗しく人柄が良いので、良い人材が集まっていると聞いている。見たことないけど。部下がしっかりしてるからばかでも許されてるのかな、と思っていた。
がしかし。
今、目の前にあるのはこの国の補わねばならないところの列挙と、それに対応できそうな人物や法律などがピックアップされている。驚くところはそこだけではなくて、その解決の糸口の為の現代の職業がいろいろ書いてある。日本語で。カタカナ平仮名漢字、もちろん全て入ってる。日本語ができる人なんて、聞いたことがない。だって、転移チートで喋れるから必要ないし!誰が書いたの?!
そしてそこには斜線がひかれ、私の名前が上から書き込んである。その脇にはこちらの言語で会談日時が書いてある…第三王子の筆跡で。間違いない、文官になって、王族の筆跡は最初に覚えさせられたし。そして今日がそれだ。
どういうことだ?本日は他国より哲学者が来るので、異世界交流のようなことをするようにと、上司から言われていた。まぁ学者の暇潰しの相手をするようにってことだった。しかも王太子が同席予定だったが、緊急の予定が入り、急遽空いている第三王子が対応することになったと聞いている。だがこれでは…「あらかじめ第三王子が聞きたいことがあって、それを聞く機会」を持ったという風にとれる。いくつも列挙してある…細かい業務内容が。毎年の税金徴収、人事、現場査察等まで多岐に渡っている。ばか…いや、凡庸ではこんな現代的な考察は思いつかないだろう。
隣の書類をみると、今期の異世界人のことが書いてある。上からバツがついている。矢印が書いてあり、人材派遣紹介、寒村見合…リュートルクに…と書いてある。
あれ?
リュートルクって、私を転移魔法でこの世界に連れてきた人外美形王子だよね?確か今期の子は人外美形王子の政務補佐のアレックスさんが……。
「そうだね、アレックスが婚約者にしたよ。ちなみに、アレクは今は僕の側近に転職したんだ。婚約者の為にがっつり働きたいんだって。…あーあ、間に合わなかったか。」
しまった、声がでていたか。後ろを振り向くと、そこには見目と人柄は良いと評判の第三王子がいた。こちらを一瞬刺すような目で見たが、すぐに柔らかい視線に変えて、笑顔で私の近くに来る。
「初めまして、えーと、上坂さん。時間変更の連絡は行き違ったようだね。だめだよ~、資料読んじゃうなんてさ。」
私は立ち上がり、カーテシーをする。
「初めまして。第三王子殿下、税務関連の部署に在席しております上坂真と申します。…机の上の資料を読んでおくようにと申し付かって参りました。」
「あー…、なるほど。今日の学者の来客は3時間後に変更になったよ。…資料は何かひっかかるとこ、あった?あ、敬語とかいらないよ?思ったこと言ってよ。」
「…そうですね。私もまだ来たばかりで、資料は上部の物しか見ていませんので…今のところは特に…。あの…殿下、次はどんな方を転移させる予定ですか?」
「…まだ決めていないよ。ふふ、貴女には希望があるの?」
「はい。現場の法律に強い人がくるといいです。税務を立ち上げるときに法整備が必要なので、穴がないようにしたいですからぜひ。」
「成る程。…今の仕事、好きなんだね。」
そう言って、宝石のようなキラキラした至極色の瞳で、私を見つめた。はぁ~、ほんとこの世界の美形って凄いな。流石王族、光ってる気がする。役得役得、目の保養だ。
「はい、何せ、のめり込み過ぎて帰途の儀式で弾かれて帰れなくなりましたから。」
「そうだった。貴女は婚約者を選ばず、仕事を選んだ人だったようだね。…イイね…じゃあ、僕と婚約しようか。」
「はい?」
異世界に来て、初めて言語が理解できなかった。
「あの…聞き間違えたようなので、申し訳ありませんがもう一度「婚約しようか、僕と。」」
「……。」
聞き間違いじゃなかった。
あまりのことに不敬という言葉が頭を過ったが、口から言葉は出ていた。
「は?何言ってんの?」
まずい、と顔を強張らせたがライト王子は気にした様子もなく、私の質問に微笑んで答えた。
「え?君は俺の理想だ。だから婚約しようよ。」
「いやいや…、あれだけの会話でどこが理想に叶ったのか、意味わかんないし。」
敬語もすっ飛んでいるぐらいには私は慌てている。
「君はさ、さっきの書類見て俺に質問してくれたじゃない?誰を呼ぶのかって。」
「はい。ライト王子は実務にはあまり携わらないと伺っていたので、意外でしたから。私も見込まれて呼ばれたことが分かって嬉しかったです。あ、日本語も王子が書かれたんですか?なんだか懐かしくて、ふふ。」
「うん、それさ、全部トップシークレット。」
「え?」
「俺の親兄弟しか知らない、叔父とかも知らないやつ。秘密を知ったからには…ね。」
「えっ…。」
「それに俺は新しいものを創るのが好き。どんどんやってみたい。だから興したそれを引き継ぎできる人材が欲しい。それが妻なら最高だね。君はピッタリだ。君はそういうのが得意だったよね、事業が立ち上がったあとの、実稼働を支えるみたいなのが。」
にっこり極上の笑みを浮かべたライト王子は目の奥は笑ってなかった…と感じた。私の頬にするりと手をかけ、へにゃりとした笑顔に変えて私に謝った。
「ごめんね?でも、妻には異世界人って決めてたし、俺の閃き外れないから、大丈夫。愛し合おうね?」
あれ、この人ばかだけど誠実で愛されキャラじゃ…これ、腹黒じゃん?
俺は新しいことが好きだ。
しかも自分の手で創り上げるのが面白い。だから幼き頃に異世界に憧れたのは当然だった。そして、その不思議で新しい知識をくれる異世界人、日本人の聡明さに驚いた。
最初に出会った彼女は俺ぐらい年の離れた弟がいるらしく、大層可愛がってくれた。当時は王宮に転移者の部屋があって、俺はしょっちゅう遊びに行き、後をくっついていた。
更に異世界人は身分制度に慣れていないらしく、こちらが許可や指示をすれば、本気の敬語なしでの対応も可能だ。子供の俺には心地よかった。その上、想像したことすらない事象の話をしてくれるので、俺には手放せない娯楽だった。いつでもその新しいことを知りたくて、自分でもいつかやってみたくて。…その頃、長兄を王太子にするという決まりがあるのに、俺にも世継教育をすべきだという話がでていた。だから俺は彼女に相談し、政略結婚や世継ぎに使われないように早くから馬鹿のフリをすることにし、将来の道筋を確保した。
臣下として、将来国の新興事業を起こす為の人材確保に努める為、ばかなふりをしつつ表の人間性を大事にして振る舞っていたら、無事側近が集まり、サポートしてもらえる環境を手に入れることができた。ちなみに新しいことを興して軌道にのせたら部下に育てさせ、自分は側近が決断できないこと等をこっそりするだけ、と決めていた。ある意味俺なりの部下の育て方であった。成人してもばかのフリがばれず、うまいこと新興産業を興してるうちに、転移者を事前に指定すればいいことにも気付き、ここ数年は転移魔法担当の同級生を言いくるめて、役立てたい技能を持つ中から選んで貰っていた。
誰にもばれず、うまくやっていたが、俺が新興事業を立ち上げてること、異世界人を指定していることをうっかり元異世界人に知られてしまった。幸い、いつか手掛けようとしてた案件を解決する手段を持つ人間だし、妻にすればいいかもと思いついた。…彼女が王宮で仕事をする様子は見てきていたし、ずっと直接話をする機会がほしいと思っていた。
「イイね…じゃあ、僕と婚約しようか。」
「ね。上坂さんはお付き合いしてる人いないって聞いてるけど。俺の顔、体、嫌い?」
そう言って隣に座り、迫ってくる第三王子は、瞳が黒なので、個人的にはピンク頭の人外美形王子より、日本人に近い第三王子の方がタイプだ。おまけに背の高い私よりも結構背も高そうで、足もすらりと長い。文句なくカッコいい。
「いえ…母国の人間の面影が王子にはあるので、好きな方です。」
「それはよかった。じゃあどんな男が理想なの?」
「私より頭がいい人がいいです。仕事ができる人とか。」
…自分より頭のいい人が好きだ。日常生活も含めて、頼りになる人がいい。だって、なんでも一人でやってきたから、頼られてばかりでは嫌だし、最初はできなくてもちゃんとやろうとしてくれて、分担できる人がいい。
「じゃあお互い、理想にぴったりじゃない!」
「あの、どのへんが。」
噂よりはあの書面を見る限り良さそうだが、誰かの発言の写しかもしれないし、イマイチ信用ならない。
「君のいる税務関連部署作ったの、俺。特許権利課も俺。民間事業者と国の研究機関との共同開発も繋いだのも俺。多分、かなり仕事できるよ?」
「え?今の全部ですか?そんな話…。」
「うん、立ち上げたのが俺だってことは知られてない。トップシークレットだから。あ、増えちゃったね?!」
にこっとアイドルのような眩しい笑顔で笑うライト王子だが、言ってること酷い。
「そんな!私、黙ってます!言いません!」
…仕事はできる方だが恋愛はポンコツな私は自分でガツガツいけないので、リードしてもらえる方がいい。そしてちょっと強気な人に弱い…。
「うん、信じてあげたいよ。でもリスク管理は必要だ。俺はさ、何かを頑張る人を尊敬する。だから相手を見つけなかったけど、泣き言言わずに仕事をこなしてる君は素晴らしいと思う。」
王子が私の髪に触れる。
「しかもその仕事が自分の手掛けた仕事で、それを発展させてくれてるなんて、好きにならない理由はないよね。」
王子は私の夜会巻きの簪を抜き取ってしまう。髪がはらりと流れ、一房、王子の手に取られる。
「君がこちらに来たとき、ちょうど離れられない仕事を興していて、君との出会いは断念した。君が誰も選ばず、こちらに残ってくれて、この会談の時間変更も行き違って、偶然二人っきりになれてさ。全てが今日の出会いの為としか思えない。」
王子は私の目を見ながら、手に取った髪に口づける。それも長く。
「君の、上司や他部署への根回しやプレゼンは素晴らしいと聞いている。実際報告書も全て確認している。…今日も俺が話を聞きたくて、この機会を用意した。」
「やっぱり!」
「ふふ、そこまでわかっちゃったんだ?察しもいいね。ますます気に入った。」
しまった、と思った時は遅かった。
ぐいっと頭の後ろを手で押さえられ、キスされていた。私に覆い被さる体勢で上から半ばのし掛かられ、頭と手首を押さえられ、逃げられそうもない。
「んんっ…!んーっ!」
私の抵抗では微動だにしない王子はキスを深めてきた。抵抗するにしても、流石に噛むわけにいかないし、それより…王子のキスが気持ちいい。キスって、こんなに気持ちよかったっけ?最後にいつキスしたかも覚えてない私には耐えがたくて、頭がぼぅっとしていくのがわかる。長いキスに抵抗する力も抜けてきてしまう。私がくったりしたのを確認した王子は、私の唇をペロリと舐め、私を大きく震えさせた。
「はぁっ…。」
「あ…かわいい声…でてきたね。キス、好きなんだ?もっとしようか。」
そういうと、ライト王子は私の唇を啄み、またキスしてきた。ちゅっというリップ音は自分をわけわからなくさせる。王子がキスが上手いのか、私がしてなさすぎたのか、判断する余裕もない。ふいに体を触られ、驚いて高い甘い声がでる。
「ふふ、ちょっと触っただけだよ?でも、そんな…可愛いな。…嬉しいね、ドキドキする。」
今度は私を完全に押し倒し、甘くことを進めていく。
「んあっ…だめですっ…これ以上は!ストップ!」
するとピタリと動きを王子は止めた。よかった…思い止まってくれたのかなと思って、視線を合わせたが。
「…なに?…上坂さん、恋人いるの?誰かに怒られるの?…妬けるな。俺、独占欲強いと思う。恋人と別れさせちゃうけど、許して。」
もう既に怒ってるじゃん!つけたよね?!声も冷たいじゃん?!
「王子…!いない、いないからっ!ひゃっ…だめっ…!」
王子って…温厚な人って噂じゃなかった?!
「じゃあ、こういうことはだめ?俺の求婚、本気だよ?」
「でもっ!」
あー、嘘つけない自分がいやだ。どんどん顔が赤くなるのと、それに比例して王子が笑顔になっていくのが分かる。
「貴女は有能だけど、素直だね。そんな表情みせられるともっと好きになっちゃうし、男は煽られるよ?…今まで学ばなかったの?」
「そんはことっ…!あっ…。言われたことないし!」
王子の手は休まず私を甘やかす。原始的な反応とそれに反発して体を固くしているのに疲れて、力が入らなくなっていたのに王子が気付き、頭の上で押さえつけられていた腕が解かれる。手がずるりとソファから落ちる。
「あらら…力抜けちゃった?良かった、まだ俺の腕が落ちてなくて。王族はさ、子孫を残したり、捕まった時に相手を籠絡させるために、しっかり夜の事も学ぶんだ。あまり気のない女性に使うのは初めてだったけど、良かった。」
「…っ…。」
「まだまだこれからだよ?人が来るまであと二時間はあるから、しっかり俺に落ちようね?」
王子は高貴な王族スマイルではなく、アイドルスマイルで、襲われている筈の私をきゅんとさせ、真っ赤にさせた。
あれから私を口説き続けた王子は、はぁと色気溢れる溜め息を吐く。
「そろそろさ、我慢するのも限界…。俺のものになってほしい。真、私の腕に飛び込んで?抱き締めるのを赦してほしい。うんって言って?」
王子は私の前髪を上げて額にキスを落とした後、両頬を包み、私の目を見て掠れた声を出す。
「…私が断れないって、思ってます、よね?」
「うん。短い間でみてても、真…結構俺のこと好きだよね?断れないって…断らないって思ってる。」
「…ライト王子、浮気は嫌です。」
「日本人はそういう気質だろう?生涯貴女だけを愛すると誓うよ。」
「約束ですよ?」
「うん、針千本飲むと誓おう。その代わり。」
「ひゃっ!」
ぎゅうぅと抱き締めた後、私の瞼にキスを落とす。少しだけ…、王子は照れたように笑っている。
「生涯貴女は私にたくさん愛されてくれ。王家の男は割と性欲旺盛でね。体力作りも后教育に課されている位だから、頑張って。」
この顔にぐずぐずにされてるときに、どうしたら王子のお願いに否と言えるのか。無理でしょう…。后教育の話が聞こえた気がするが、今は冷静に考えられている気がしない!
王子は私を抱き締めたまま、耳元で話し出す。そんなぞわぞわするような甘いことは勘弁してほしい、
「俺はね?真の能力に惚れたけど、元々日本人がタイプだ。まぁ全員ではないが、真っ直ぐな黒髪に黒目が凛として涼やかだ。自分が金髪のせいか、憧れる。そして礼儀正しさ、日本語の美しさ、なんだろうな。ははっ。俺の貴女の名前の発音は、かなり日本語に近いだろう?」
「…そうですね。」
「…俺が幼少時に転移してきた日本人に可愛がってもらって、日本語もそこで覚えた。かれこれ二十年は勉強してるからかなり近いと思う。」
「そんなに?!」
思わず大きな声で反応すると、王子が小さく笑う。
あ、かわいい。
「ちょうどその頃、俺にも世継ぎ教育をって話が出てたんだけど、その人が知恵を授けてくれた上、説得してくれて、法律通り兄上に決まった。お陰で内乱も起きず、家族仲も良好だ。」
「そうだったんですね。…初恋ですか。」
「うーん…20才は上だし、親戚?」
「っふは。親戚ですか。」
「やっと…笑ったな…真。…真、ライトだ。」
ふわりと、王子は微笑む。
「王子じゃなくて…ライトって呼べる?真の笑った可愛い顔、もっと見せて。これからずっと傍にいて、俺のこと、もっと好きにさせて。真…俺のこと好きになって…。」
最後は小さな声で呟いた。私はこの言葉に、ライトのこの時の切なそうな表情に、彼を好きになる予感がした。口説かれてすぐにときめくなんてなしだなってどこかで思ったけど。
あれから私はライトに非常に甘やかされた。
ちょっと…あー、早過ぎるがいい年だし、そこはスルーだ。
ふわふわした気持ちで甘やかされたまま、抱き締められていると、ノックの音がして、返事も待たずに扉の開く音がする。
「ライト~、そろそろ、こうさかさんが来るぞ。学者役の演者も打合せ済みだぞ。」
どっかで聞いたことのあるような声が聞こえ、ぎょっとして身を固くした私を隠すように、ライトが私と体の位置を変え、体全体で覆って隠してくれる。
「あー、アレックス。悪い、それ以上部屋に入るな。今取り込み中。」
「は?取り込みって…おい!ライト、お前っ…。」
ライトの側近のアレックスさんだ。…異世界転移した際に、彼にお世話になっており、知らない人に見られるより、かなり恥ずかしい…。
「…お前、こうさかさんが来るの、遅らすか?」
呆れ声のアレックスさんに、ライトは腕をヒラヒラさせて返事を返す。
「大丈夫。その上坂さんが相手だから♡」
「はあ?こうさかさん?!いるの?!」
「ライトっ!…ははっ…ご無沙汰してます…。」
我ながら情けない声が出て、ライトを睨み付ける。何言っちゃってんのよ!
「と言うわけだから、アレックス、演者いらなくなった。それと、上坂さんは俺の妃になるから。スケジューリング頼んだ~。」
「はい?!」
今度こそ、ぶっとんだ声が聞こえた…。私のせいじゃない…。
こうして既成事実を作られ?、私はとりあえずライトの婚約者になった。王城勤務なので、この世界のベースがあり后教育も楽だと言われ、関係者には喜ばれた。
大きく変わったのは独身寮から王子の隣室に移されたこと、ライトが中々私を手放さない為に、出勤を若干減らされたことだろう。
そしてこれも関係者、特にライトの側近達には喜ばれた。
なぜか。
理由は簡単だ。新しいことを興すのが好きなライトは無理難題をふっかけるので、…まぁ本人もこっそりカバーしているようだが…、休みがままならないことが多く、婚約者や奥様に冷たい目で見られていたというのだ。ライト本人が私を抱き潰すのに時間をとるので…、全員が家に帰れることになって破局を乗り越えられたらしい。うん…、迷惑かけてたみたいで、ごめんね?
そしてライトは公の場ではのんきなおバカを装っているので、私も警戒されず、のびのびとマネジメント能力を発揮できている。ベッドの上でも仕事ができる?と、ライトは大はしゃぎだ。…私も嫌じゃないあたり、本当に似た者夫婦なのだろう。告白通り、浮気せず溺愛してくれるライトに愛され、やっぱりすぐに私も彼を好きになり、幸せだ。
マクガイア王国歴258年、第三王子ライトは異世界人を妃とし、式を挙げた。第三王子は異世界に造詣が深く、その式は妃の母国式で挙げられた。その式の目新しさが受け、特に「フラワーシャワー」と「ウエディングケーキ」が各国王族の式にも見受けられる程、流行した。妃は文官として働いていた能力を活かし、その後も活躍。但し、第三王子の溺愛が強く、勤務日数は婚約前より減り、それがきっかけとなり、週休2日という制度が王国に広まった。休日をしっかりとることで、今まで以上に王国は栄えたと記録されている。
お読み頂きありがとうございました。
正直一番改稿が難しいかな…と思っていた作品です。本日有明にて友人の完売御礼に居合わせたこと、人生に影響を受けた作品を続けていた方々にお会いできたことで奮い立ちました。
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