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ラグナロクのNマスター! Continue for Real  作者: 北田 龍一
ep5・5 Conversation side Faith
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原典とオルタナティブラグナロク

『アーサー・ザ・キング』が登場するのは、メインシナリオ中盤だ。

 細かなストーリーまで記憶していないが、確かアーサー……いや『オルタナティブラグナロク』に実装された『円卓の騎士』『アーサー王伝説』出身の人物たちは、原点オリジナルの世界からやって来た設定だ。

 近いような境遇と環境を、かつて語られた聖剣伝説をなぞるように生きていたが、ここで大きな外的要因による変化が起こる。すなわち『オルタナティブラグナロク』世界の設定が反映されたのだ。


「ソシャゲーだから原作改変や介入は仕方ッスけど……後々調べたら、元の伝説をしっかり踏襲していたんッスよね。運営の人たち、元ネタへのリスペクトはしっかりしていたんだよなぁ……」

「スキル設計の方にまで、リスペクト行き過ぎてバランス壊れちまったけど……そこは評価できるとこよな。にしたってアーサー王……と言うよりエクスカリバーヤバ過ぎだろ。なんだよ『剣より明らかにやべぇ鞘』って」

「オレの象徴だからな! 今時の言い方するなら、性能を盛られていて当然だぜ。

『前の世界』じゃ、これを無理やり手放させて……って対策だったが、ラグナロクの方じゃ『オレを操って手駒にする』方法使ってきやがったからな」


 すべての者たちを滅ぼさんとする『魔王』及び『終末を呼ぶ者たち』の勢力が、その叙事詩に影響と変化を与えていた。疑心暗鬼になる聖騎士達と『終末を呼ぶ者たち』が差し向ける化け物たち……そんな中で騎士たちとプレイヤーは出会い、一度は交戦状態に入った。

『ランスロット』『モルドレッド』――原点ではアーサー王と敵対し、ブリテンの王国が分裂、滅亡するきっかけとなった二名の騎士だが、あのゲーム世界では『敵役に操られたアーサー王を諫めるために立ち上がった』立場に。その章のラスボスとして『アーサー・ザ・キング』は立ちふさがった。


「強烈な単体攻撃、高い基礎ステータスに加えて、状態異常の解除とHP即時回復、自動回復……どれも低レア泣かせの能力過ぎる。格下なら一方的に無傷で叩き潰せるし、同格以上相手でも持久戦に持ち込めば有利……んで『現界突破』で『他のアーサー王伝説・聖剣エクスカリバーに関連するモノを発動できる』スキルが追加……どうやって倒すんだよコレ」

「全部分かった上で……戦力差、能力差を承知の上で、対応しているお前もお前の配下もおかしいからな⁉ 五対一……いやオレのマスターに戦力割かれてたから、三体一か。よくもまぁ、演習とはいえ拮抗させていたもんだ」

「確かネット上では『Nマスター』って呼ばれてましたもんね、樋口パイセン! その異名、存分に堪能させていただきました!」


 改めて、面と向かって言われると恥ずかしい。ただ、自分の配信活動の結果として得た名前なので、否定する事もない。しかし『よくやる』と言う話をするなら、目の前の阿蘇少年も大概だ。


「そのキャラクター相手に、木刀で切りかかる武蔵もよーやるわ……」

「全くです。私も油断できない相手でした」

「おおぅ『近衛騎士』も太鼓判か……」


 ゲームキャラクターからも評価が高い。流石に、高ランク相手のキャラクターは厳しいだろうが、この前の『ゾンビ騒動』程度であれば、慎重に立ち回れば対処できそうだ。

 素人目に見ても、しっかりと武術をたしなんでいる奴の体つきだ。慎より若い彼は、がっちりとした体格をしている。扱っていた木刀に、許可を取って借り受け素振りしてみる。しかし体の芯がブレてしまい、歪んだ軌跡を描くばかりだ。


「ま、真っすぐ振れない……」


 アニメのキャラクターや、目の前の阿蘇少年の剣術は……ある種の美しさがあった。精練された格闘術は、芸術のように映る事もある。それは実戦において『隙を減らす』『消耗を抑える』『効率的に攻撃を行う』ために、最善最小の挙動を研究し、練り上げ、実践に移したモノ。一目見ただけでは分からぬが、いざ自分でやってみると全く上手く行かない。


「いやすげぇわ……ちゃんと鍛えて練習しないと、まともに振る事も出来ねぇ。実戦じゃこれに加えて、相手の出方を見て対応変えるんだろ? 武器に振り回されている間は絶対無理だわ」

「死ぬほど基礎を練習したッスよ! 元々体は鍛えてたし、木刀も本物と同じ重さ、長さのモノを素振りしてます! 型は今まで我流だったッスけど……今はアーサーが指導してくれているッス!」

「……マジで?」


 本物の騎士からの指南……ゲームキャラとはいえ、その動作や挙動は現実の剣術を参考にしている。加えて、これは予想だが『武蔵少年のイメージが反映された結果、キャラクターが剣術の達人になった』可能性も考えられる。本気で学び身に着けるつもりが無いなら、慎のキャラクターと張り合える領域に至れないだろう。


「本気で『最強』になりたいんだな……」

「当然ッス! もし最強になれなかったとしても、それまでの道のりや筋肉は裏切らないッスから! 大事なのは本気で目指して、やる事をやるだけッス!」


 一体何が、少年を『最強』に駆り立てるのだろうか? 眼差しも、姿勢も、努力も間違いなく本物に違いない。けれど……決して口にする気は無いが、今の時代において『最強』になってどうするのか? とも感じてしまう。

 熱っぽく語る阿蘇少年が気づかぬ中……彼の隣に座る騎士は、ニヤリと意味深に笑って語り出した。


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