95 タレイアに潜む者
次回から投稿時間を土、日、祝を1:00から。
平日は23:00前後に変更します。
本日は23:00です。
タレイア洞窟、第1階層。
内部全体にゴツゴツとした岩肌が広がっている。
天井も思いの外高い。
歩みを進めると、人工的に造られたような空間が幾つかあった。
実戦場で使われる、見習い騎士たちのために造られた空間のようだ。
「いいかお前ら。この洞窟は魔獣たちが住みかを求めて掘られたものだ。頭のいい魔獣は、より深く潜り天敵から身を守る。間違っても罠やなんやらで、下層には落ちるなよ」
1層から3層に、そんな罠があるとは思えないが、今のうちに意識の片隅に植え付けようと、ホルトは考えた。
2層へ下ると、人間の匂いを嗅ぎ付けた野良魔狼が待ち構えていた。
狼と言えど魔獣。体長、体高は共に1mを越えている。
数は3匹。
ヴィネとドネアは左右に離れ、2匹を惹き付け難なく仕留めた。
中央のユズハは、すぐさま僅かに戸惑った1匹を倒す。
前衛の反応速度、後衛の警戒心。即興パーティーにしては総合力は高い。ホルトに笑みが溢れる――
2度、3度、戦闘を終えたユズハたちは2層から3層へと下る。
色々と試そうと考えていたが、ここまで問題もなくスムーズに辿り着いた。
「お前ら、最速で第3階層まで来たな。前のパーティーが少し先にいる。しばらく待機だ」
ホルトは魔力探知を使ったのだろう。ミズキの探知にも、引っ掛かっている。
「お前……ユズハとか言ったな」
「なに?」
ドネアは個々の戦闘能力が状況を左右すると固定概念に縛られていた。
しかし、ユズハのフォローを受け、戦いやすさを感じたドネアは、普段より動きのキレがいいことに気づく。
「フォローが上手いな」
「ありがとう。でも、確実じゃないから、気がついたことは言ってくれると助かるよ」
「わかった」
この日、ユズハたちは最速時間を叩きだし、実戦訓練を終える――
2日目。
タレイア洞窟前は、慌ただしさに包まれていた。
4組目と最終組が消息を断ったのだ。
その中には、リノ・クインス、ヤシラ・マルキス。剣術大会魔導師部の優勝者、ローズ・エルダーベリーが含まれていた。
「ホルト教官、行こうか」
「お手数をお掛けしますクヌギさん。ご一緒願います」
表向きは、スキュラにも落ち度があると申し出たらしいが、国のNo.2が同行するとはな。
戦力は申し分ない。しかし、なにか意図があるのか……
ホルトは悟られぬよう、クヌギを警戒することにした――
タレイア洞窟、第3階層へ着いたホルトとクヌギは、死体を貪る人影を発見する。
ホルトとよりも早く反応したクヌギは、瞬時に魔法の剣を造り出し、人影の首を撥ね飛ばした。
クヌギは死体を蹴り、うつ伏せから仰向けにする。
「“罪魔”か」
死体の上半身全体に棘のような赤黒い痣がった。
これは罪魔と言われる異形の者だ。
罪魔とは、数百年前、罪人の刑として“魔物と交わらせる”という、もっとも重く、非人道的な刑があった。
その魔物は、人間の男であれ女であれ、交わえば子ができるという性質を持ち、幾人もの罪魔を生み出した。
食人鬼であり、共喰いも厭わない狂人。
さらに人間をさらっては、死体であれ保存食として蓄える習性を持つ。
あまりの非道さに刑は既に廃止され、罪魔も共喰いにより自らを滅ぼしている。
「喰われていたのは、生徒に付いてた教官の1人です」
「罪魔は根絶やしにせねば」
「クヌギさん、急ぎましょう。教官が1人付いていますが、生徒を庇いながらだと、限界があります」
クヌギは無言で頷き、2人は奥へと進む。
根絶やしか。まるで罪魔の存在を知っていたかのような言い回しだ。
さらにホルトは、罪魔が単体ではないことを察する。
不意にクヌギが立ち止まる。
視線の先には、壁面に大きな穴があった。
ホルトが覗いてみると、下へと続く緩やかな傾斜になっている。
「こんな所に横穴か。ホルト教官、昨日まで横穴はあったか?
「いえ」
「罪魔が掘り登ってきたか」
「……クヌギさん、その可能性はあります」
内部には血痕のような跡があった。
「おそらく、この傾斜を下れば罪魔のいる場所に辿り着くはずです」
しかし、下層から現在地まで掘り進めるとなると、かなりの労力を要する。
そこまでして人間を拐う必要が罪魔にあるわけか。ホルトは、僅かな違和感を覚える。
「ホルト教官、急がなくていいのか?」
「ええ、行きましょう」
白光石を持ち、内部を照らすと点々と血痕が続いていた。
生徒たちの血か、罪魔たちの血か。
どちらにしても、無傷ではない。
はやる気持ちを抑え、ホルトはクヌギを警戒しながら、傾斜を下っていく。
なんだかメインタイトル詐欺になってきた……
秋の夜長。
切ない気持ちになってますか? その気持ちは、きっと大切な気持ちに気づかせてくれる
きっかけになると思います。
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