92 教官たちの実力
王都両立育成学校前に、凛と佇むカズヤの姿があった。リンネ・ヒラドを出迎えるためだ。
しばらくすると、朝日に照らされたリンネが姿を現す。
ふわりとした優しげな表情は、まるでアニメや漫画が表現する、聖女や女神を思わせた。
そんなリンネを見て、カズヤの鼓動が初めて強く脈を打った。
「カズヤ、お待たせ」
「あ、うん。じゃぁ、行きましょうか」
「なんで敬語?」
「な、なんでだろ? ははっ!」
「変なの。さ、行こ!」
シャダイの騎士が護衛する、専用馬車へと乗り込む2人。
「そういえば、ユズハは元気だった?」
「ユズハたちは元気だよ」
「ユズハたち?」
「うん。ヴィネとカルティも」
あの2人と名前で呼びあってるなんて……リンネの心境の変化にカズヤは驚いた。
「見送りには来なかったの?」
「昨日の早朝、騎士国家スキュラに出発したよ。実技訓練で」
「そうか……リンネも行きたかった?」
「できればね」
「あぁ、ごめん」
「カズヤが謝ることないよ?」
本当にリンネは変わった。これなら敵をつくる心配は無いかもな。
カズヤは胸を撫で下ろした――
その頃、ユズハたちはスキュラ領を前に、入国審査を受けていた。
生徒、教官、総勢52名。さらに行商なども相まって、かなりの待ち時間を要していた。
馬車を降りて、ユズハが背伸びをしていると、1回目の実技訓練でパーティーを組んだ、クラスメイトのヤシラ・マルキスが肩を叩いた。
「ここはいつも混むんだよ」
「そういえば、マルキスはスキュラ出身だったな」
「そう。このまま時間を取られると、多分、野営することになるぜ」
この通行門からスキュラまで6時間。
道中には小さな村と、野営地が存在している。
「小さな村じゃ泊まれないか」
「かと言って、野営地もそんなに広くないからな」
「魔獣は?」
「魔獣より、騎士崩れの野盗が多い。行商の護衛の多さを見れば、わかるだろ?」
「なるほど」
スキュラの圧政は自国民の反感を買い、貧困層が増え続けている。
反抗勢力も多く存在するが、資金繰りにあえぎ、正義の名の元、行商を襲い金品を奪う。
そんな悪循環が、ここ数年蔓延していた――
夕闇が徐々に深くなる。
スキュラまで約7時間。
このまま行けば、到着予定は深夜になり、スキュラの都市“カロン”の正門は閉ざされてしまう。
教官たちは、野営も訓練の一貫として、一路野営地へと向かった。
「ユズハ、剣は手放すなよ?」
「わかった」
学校内のスキュラ出身者は、野盗の存在を知っている。
たとえ教官たちが護衛するとわかっていても、自分の身は自分で守る腹積もりのようだ。
小さな村を抜け、一行は野営地へと到着する。
そこには、既に行商が2組、野営の準備を始めていた。
マルキスは馬車を出て、辺りを見渡した。
特に荒らされたような跡は無く、最近は野盗からの襲撃も少ないようだ。
「マルキス、俺らは馬車の中で寝泊まりだって」
「いや。一応、俺は外いるよ。馬車の中じゃ身動き取れないからな」
マルキスの答えに、ユズハも馬車を降りる。
2人の他にも馬車を降りている生徒が数人。
その中にはヴィネやカルティの姿もあった。
陽は完全に落ち、魔法障壁石と、焚き火が周辺を明るく照らす。
生徒たちのざわめきも、時間が経つにつれ静かになり、草木のざわめきが鮮明に聴こえはじめていた。
「ユズハ、気づいてるか?」
マルキスは神妙な表情で問い掛ける。
「うん。教官の数が減ってるね」
「野盗の気配を察して、先手を打ったかも知れない」
「数によれば、こっちに来る……かな」
「あぁ」
まさしく教官たちは野盗と対峙していた。
身を潜め、機会を伺っていた野盗を静かに、ただ静かに次々と倒していく。
王都両立育成学校の教官たちの戦闘能力は高い。
現役退役問わず、傭兵や騎士候補などの実力揃いだ。
先遣隊はあらかた片付いたか。あとは、本隊はホルトさんに任せよう。
1人の教官はため息を吐いた。
お気づきかと思いますが、キャラの名前には、多くの花や樹木の名が使われております。
あ、でも、花言葉を性格に反映させてませんよ?
ご愛読ありがとうございます。
この作品に興味を持っていただいた方。
励みになりますので、いいね、評価、ブックマークのほどをよろしくお願いします。




