表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/117

88 取り戻し、その先へ

 ―宿屋・トウカエデ―


「みなさん、お待たせしました」


 カズヤはミカたちが宿泊している宿屋の一室に訪れた。そこには、シオンとナツフジ兄弟が座っている。


「ミカさんはどうですか?」


 シオンは心配そうな表情を浮かべ訪ねる。


「明日から取り調べです。しばらく俺がして、一週間も経てばリュリさんが担当するので、きっと大丈夫ですよ」

「しかし、エリカって女。何者なんだ?」


 ナナミは苛立ちを隠せず、強い言葉を発する。


「褒誉の道中で話した通り……あのミカさんを一撃で沈めた強者です。それ意外、正直わかりません」

「……そして、教皇と行方知れず」

「はい。ただの誘拐なのか、それとも……」


 カズヤは少し煮え切らない表情を見せた。


「それともって、何?」

「シオンさん、紅必とシャダイ王族派との同盟を結ぶ動きがあるんです」


 ルドルフ教皇の失踪、紅必との同盟。タイミング的にも、何者かの意図さえ感じさせる。


「とにかく、ルドルフ教皇とエリカの行方を全力で追います」

「でも、ルドルフ教皇がいなくなれば、信徒の不安が爆発したりしないの?」

「シオンさんは、リンネを知っていますよね? 彼女が教皇派のNo。2なんですよ」

「え? 初耳」

「教皇不在の間は、学校を休ませてリンネに戻ってきてもらいます」

「学校側の承諾は?」

「明日、済ませます。もし会ったら仲良くしてあげてください」

「うん、わかった」

「それと、これをミカさんから預かりました」


 カズヤは腰袋から取り出した手紙をシオンに渡す。


「シオンさんのやるべきことが書いてあるそうですよ」

「ありがとう」

「では、俺はこれで」


 カズヤは軽く会釈をして部屋を出た。

 早速シオンは手紙を開き、内容を確認する。


「シオンちゃん、なんて書いてあるの?」

「いつもの基礎鍛錬とナナミさん、リコさんに鍛えてもらえって」

「そっか……任せてくれ! な、リコ?」

「……うん」


 ミカが釈放されるまでの間、シオンはナツフジ兄弟に師事を仰ぐことになった――



 ―ルドルフ大聖堂・地下収容所―


 ふぅ。ふぅ。

 収容所に、ミカの荒い息遣いが僅かに聞こえる。

 腕立て伏せ、腹筋、精神集中。

 収容されている間、出来ることは何でもする。

 ミカは心に強く決めていた。


 そこへリュリが訪れる。


「あまり、悩ましい声だすなよ?」

「どこがだよ……久しぶりだなリュリ」

「遅くなってすまない。思ったより、元気そうだな」

「カズヤが気を利かせてくれたからな」


 リュリは太く重厚な鉄格子の扉を開き、ミカを外へと誘い出す。


「なにしてんだ?」

「いまのミカと手合わせがしたいと思ってな。心配するな、誰にも何も言わせない」

「……変な奴」


 ミカの瞳の奥には、純粋でなく貪欲に強さを求める、決して綺麗とは言えない鈍い光が灯っている。


 リュリには心から身震いし、同時にそれが嬉しかった。


「ここは?」

「私とカズヤ、専用の訓練場だ」


 二人は互いに備え付けてある木剣を手に取る。


「サービスだ。先手をやる」

「そりゃどうも」


 ミカは中段に構え、じりじりと間合いを詰める。明らかに雰囲気が違う。


 その姿はやけに幼く見えた。

 リュリは自身の駆け出しの頃を不意に思い出す。


 本気なんだなミカ。

 リュリもまた、どこかにあった油断を、完全に消し去る――



 とうに、体力の限界も超えている。

 それでも、二人は時間を忘れ、ひたすらに打ち合った。

 ミカの肌の見える場所には、多くの痣がある。


「リュリ……休憩……しんどい!」

「さすがに……しんどいな……」

「いい汗……かいたよ」

「いいのかミカ。風呂……入れないんだぞ……」

「もう……一週間も入ってないんだ……今さらだ」


 二人は仰向けに寝そべり、天井を見つめる。


「ミカ、悪い知らせがある」

「なんだよ急に」

「カグルマ・アイスティが姿を消した」


 リュリはことの経緯を伝える。


「ヨハネイが……」

「ヨハネイも気の毒だか、問題はカグルマだ。ミカを一撃でのしたエリカと繋がりがある。」

「それは本当なのか?」

「少なくとも紅必はそう見てる。エギルも含めてな」

「そうか。まぁ、カグルマは心配ないだろ。根はいい奴だからな」

「……わかった。さて、戻ろうか。少しマシなご飯を食わせてやる」

「容疑者の扱いじゃねぇな」

「実際、違うんだろ?」


 二人は笑い合い、訓練場をあとにした――

なんだかんだ言っても、リュリはミカが大好きです。


ご愛読ありがとうございます。

この作品に興味を持っていただいた方。

励みになりますので、いいね、評価、ブックマークのほどをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ