83 必命剣
66話でミカが褒誉の説明をしているのに、ルドルフ教皇の存在を知らないように描写にしていましたので、知っているように訂正しました。
「ミカさん、ミカさん!」
「ん……あっ、シオンか」
シオンの呼び声で目を覚ましたミカ。屋敷の窓から射す光は、僅かに赤みがかっていた。
「一人で……しかも無防備で寝てるなんて。ディーテの怖さを教えてくれたのはミカさんですよ」
「悪い、悪い。昔の夢を見てたよ」
「昔の夢? ですか」
「まぁいいや。今日の鍛練は終わりか?」
「はい」
「なら、明日から模擬戦も含めて本格的な鍛練を始めようか」
シオンの表情が明るくなる。ちょうど刺激が欲しかったのだろう。
ミカはタイミングを見計らっていた。基礎鍛練ばかりで、そろそろモチベーションが下がってくる頃だろうと――
翌日の午後。
ミカたちは小さな草原にいた。シオンが鍛練のために登り下りを繰り返している大樹のある場所だ。
「シオン、速くなったな」
「ついていくのが精一杯ですよ」
それでも、大して息を切らせていない。ミカは少し嬉しくなる。
「さて。早速だがシオンには必殺剣を開発してもらう」
「えっ? いきなりですか?!」
「いきなりではなさ。必殺剣は使い慣れるまでが大変なんだ」
「は、はい」
「シオンの剣技は蛇剣だったな。白蛇閃は使えるか?」
「はい」
「だとすると、奥義は九牙か……なぜ、蛇剣を?」
蛇剣は手首から肩にかけての柔軟性と可動域がカギとなる。
シオンは、生まれつき体が柔らかく、蛇剣との相性が良かった。
下手に剣技を増やすより、相性の良い蛇剣を極めようと、シオンは考えたのだ。
「しかし、マイナーな剣技を選んだな」
「うぅ……」
「冗談だよ。シオンは必殺剣をどう理解している?」
「相手を必ず殺す剣……です」
「そうだな。でも、格上の相手に通じると思うか?」
「それは……」
「必殺剣を繰り出す前に、色々な布石が必要になるよな? それでも良くて五分五分だ。さらにデメリットもある」
「大きな隙ができるとかですか?」
「必ず殺す剣、すなわち殺気を読まれやすい」
「そうか……格上なら、なおさら」
「でだ。私の師匠、ツキシロが考えたのが、必ず自分の命を守る剣、必命剣だ。これなら殺気を抑えられる」
「……ネーミングセンス」
「と、とりあえず、ここでは蛇剣の奥義、九牙と必命剣を習得してもらう!」
耳を赤くしたミカを見て、シオンは小さく微笑んだ――
ディーテに訪れ、2ヶ月が経ったある日。
ミカとシオンの元にナツフジ兄弟が姿を現した。
「鍛練中、すいませんミカ姉さん」
「おう、どうした? ナナミ」
「褒誉にシャダイのルドルフ教皇が来る噂を聞いてさ」
「教皇派のトップか」
「そこで提案なんすけどね」
ナナミはシャダイの現状を説明する。
「へぇ、国王派と教皇派の勢力争いの中で褒誉に潜るのか」
「なにか理由がありそうでしょ? その護衛依頼が冒険者ギルドにきてるんすよ」
「なんだ、誘ってるのか?」
「報酬は1人200万リーフ、護衛数は4名。シオンちゃんも入れてどうかな? と思って」
「実戦経験も必要だが……すぐに埋まるんじゃないか?」
「それが他の冒険者は手をだしていないんすよ」
「それだけヤバイのか」
「ミカ姉さんが一緒なら大丈夫っすよ!」
「……お前らもいるし、行くだけ行ってみるか!」
「さすがミカ姉さん!」
こうして、ミカとシオン、ナツフジ兄弟は、ルドルフ教皇の護衛として、褒誉に潜ることになった。
投稿が大変遅くなりました。今回は会話が多めです。読みにくいと思いますが、よろしくお願いします。
合わせて、VSも投稿しています。こちらは現代を舞台とした物語です!
良ければ暇潰しにでも、目を通してくださいね!




