75 実力者たち
通常のバトルハウンドより少し大きいぐらいか。単独での討伐も可能だか、体を動かすのも悪くない。
「ホクトとユイは右の一匹を2人で。俺は左にいるやつを仕留める。」
中央にいたミカズチとユイが静かに入れ替わる。そして、息を合わせて一斉に飛び掛かった。
ホクトは身を低くし、地を這うように剣を振り抜くと、バトルハウンドの両前足を切断。ガクンと落ちた首をユイは上段から斬り落とし絶命させる。
ミカズチも難なく仕留めたようだ。
「ヨハネん、どうです?」
「ん~…、気配なし振動なし、大丈夫だよユイ!」
一行は警戒を解く。
その後も何度かバトルハウンドとの戦闘を経て、森林を抜けると、第二階層へ続く大きな橋の前にたどり着く。
橋の向こうには暗闇が広がり、薄っすらと瘴気が漏れていた。
警戒を強め、橋を渡るミカズチたち。橋の下は底が見えないほど深い。
「二階層は三階層へ続く通路ですね。瘴気が強く、危険ですよ」
「よく知ってるなバラキエル。実際、何階層まで行ったんだ?」
「単独だと四階層ですね」
「単独? パーティーを組んで挑んだこともあるのか?」
「ありますよ。シルフ・シルフィードとね」
ミカズチは「シシルがこの空間に来たのか?!」と詰め寄った。
「……2人共、その話はあとで」
橋を渡り暗闇の前に立つと、ヨハネは複数の足音を感じ取る。
「重い振動が一つと軽い振動が二つ、二足歩行と四足歩行かな。コツコツと地面を叩く音もする。距離は約6m」
冷静さを取り戻したミカズチは「向こうから見えてないのか?」と確認する。
「その気配はないです」
「いきなり鉢合わせるのは危険だ。ヨハネんの感知が届かない距離になるまで、様子を見よう。」
ミカズチはヨハネの感知した音の正体を考える。四足歩行をバトルウルフ、二足歩行を人型と仮定した。
コツコツと地面を叩く音は、杖か何かか。それが正しければ、人型の魔物は魔法を使う手段を持っている可能性がある。
さらにバトルハウンドもいる。もし飼い慣らし、使役ているとすれば、人型と連携を取られると厄介だ。
しばらくすると、ヨハネは振動が捉えられなくなったことをミカズチに伝える。
「8m以上は離れてます」
「……この闇を抜けて、一気に仕留めよう――」
ミカズチたちは剣を抜き、タイミングを合わせると、暗闇に飛び込んだ。
その先に居たのは、推測通り人型の魔物。その手には杖が握られていた。
そして大型のバトルハウンドが一匹、さらに“剣狼”も一匹居た。ソードウルフは口に剣を咥えた狼だ。
魔物達は背を向けている。
ミカズチ、ホクト、ユイは後方から強襲する。
バラキエルは杖に魔力を集め、ヨハネはダガーを両手に持ち構えた。
気配にいち早く気づいたソードウルフが、ユイを目がけて飛び掛かり、勢いよく咥えた剣を横薙ぎする。
ユイはその剣筋に反応し、それを受け流す。ソードウルフと交差したユイは、振り向き様に剣を跳ね上げ、首を宙高く斬り飛ばした。
その首が落ちる間もなく、ホクトも大型バトルハウンドを、素早い連撃で切り刻み仕留める。
ミカズチは人型に振り向く間も与えず、両足を切断し、目線の前に落ちてきた首を綺麗に斬り落とす。
「強い……」バラキエルは身震いをする。
両手にダガーを握りしめたまま、ペタンと座り込むヨハネ。ミカズチたちも一息つき、落ち着きを取り戻す。
「ミカズチ、長居は無用だよ! 行こう!」
ユイの号令で一行は瘴気の漂う中を走り抜ける。
二階層は宮殿の通路を連想させる円柱が、両側に何本も立ち並んでいた。
通路の先に三階層へと続く階段を見つける。吹き上がる風は冷気を帯びていた――
第三階層は、第一、第二とは打って変わり、古代遺跡を思わせるような宮殿が目の前に現れた。朽ち果てた門は、まるで内部へ誘うかのように見える。
バラキエルは手に持った杖を地面に軽く突き刺すと、シンプルな円形の魔法陣を出現させた。
円形の外側には、さらに小さな円が、円形の中心に上下左右に描かれており、その間を魔力の球がゆっくりと動いている。
「ここまで1時間と半分ほど経ってますね」
「ペース的にはどうなんだ?」
「かなり早いですよ」
ホクトはミカズチを見て「ちょっと休もうぜ?」と提案する。ミカズチの気持ちを汲み取っての提案だろう。
それを察したバラキエルも「休憩がてら、シルフ・シルフィードの話をしましょうか」と腰を下ろした――
黄昏のアビスの内容が長くなりそうなので、八階層まである設定を六階層に変更しました。
いつまで白昼夢見てんねん!
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