表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/117

72 異様な空間

 辛うじて原型をとどめている門を抜け外庭に入ると、目の前には異様な雰囲気を漂わせた屋敷が建っていた。

 屋敷へ入る扉を開けると、室内は雑に整備された大広間が広がっていて、天井にはいくつか崩れた箇所があったが、雨風は辛うじて凌げる。


 どうやらここがセーフゾーンのようだ。


 その中に冒険者と思われる者が数十人ほど確認できた。先程の件で負傷者が出たのか、ざわめきたつ大広間。

 腕や足を失った者、既に死体となった者もいる。あの魔物一匹でこの凄惨な現場が生み出されたのだ。

 

「死んだ者を中庭に集めてくれ。そこで燃やすから」


 ミカズチ達の背後から声がした。振り向くと、そこには小柄な女性と広場で死体を燃やしていた漆黒のローブを纏った男が立っていた。 


 女性は裸足で、髪は両サイドでまとめ、背丈はユイより少し低い。

 装備は革の胸当てを身に着け、左手首には腕輪型のタリスマン。

 紺色のフード付きのローブを纏い、武器は腰に刺している二本のダガーだ。


「もしかして、ユイ?」

「あ、ヨハネん!」

 

 2人はパーティを組んでいた過去があり、ユイは親しみを込めて“ヨハネん”と呼んでいたようだ。


 名は“ヨハネ・スリード”空間把握師(くうかんはあくし)だ。


 空間把握師とは、複雑な構造を有し、迷宮と呼ばれる場に置いて、最も重要な地図作成に多大な貢献度を誇る。

 さらに限界領域はあるが、魔物の気配、位置などを把握し危機感覚にも優れている。

 彼女が裸足の理由も、地面から伝わる微振動で、対象との距離感を素早く察知するためだという。


「ヨハネんとパーティー組んだ時の生存率は半端なっかったです」


 ユイは目を輝かせて、自分のことの様に話した――



 しばらくすると、死体を燃やし終えた男が戻って来た。


「そういえば、この男は誰だ?」

「僕はバラキエルだ」

「ああ? マジか?」


 ホクトは驚きを隠せないでいた。

 “バラキエル”は魔導師の祖、バラキエルの力を継承した者だけに与えられる名であり、その継承者には証拠となる魔法が存在する。


「出来んのかよ、転移魔法(てんいまほう)


 ホクトの疑いを晴らすように、バラキエルはシンプルに呪文を唱える。すると濃厚な魔力が全身から溢れだす。

 その魔力を一点に集中させると、バラキエルの目の前にアンティーク調の鏡が現れた。


「僕は君のうしろに出てくるからね」


 鏡の中に入ると、ホクトの背後に別の鏡が出現し、バラキエルが姿を現す。

 ホクトは唖然としていた。


「さぁ、ホクトはほっといて、まずは自己紹介だね!」


 一行は、改めて自己紹介を済ませる――



「みんなに一つ聞きたい。ディーテに来るまでの経緯や記憶はあるか?」


 ミカズチは当初の疑問を投げかけた。この場にいる全員が顔を見合わせる。バラキエルでさえ経緯も記憶もなかったのだ。


「じゃあ、僕もいいかな?」


 バラキエルはミカズチたちに、この場所から出ようとしたことはあるかと尋ねた。一行は首を横に振る。


「僕がここに来て一ヶ月ほど経つんだけど、このディーテから出れないんだよね。試しに転移魔法も試したけど、見えない壁に阻まれて叶わなかったからね」

「マジかよ、他の冒険者も同じなのか?」


 ホクトの問いにバラキエルは同じだと答えた。この一か月間、他の冒険者に聞き取り調査をしたところ、同じ答えが返って来たという。

 さらに、ディーテから脱出を試みた者は、たちまち体が朽ち果て死に至った経緯があり、バラキエルも目の当たりにしている。


 「これは可能性の話だけど、アビスが憶測通り別の世界へ繋がっているとすれば、この空間から抜け出せるかも知れないね」


 他の冒険者たちもバラキエルと同じように考え、アビスに挑んでいるというわけか……


 ミカズチは複雑な表情で冒険者たちをしばらく眺めていた――

ご愛読ありがとうございます。

この作品に興味を持っていただいた方。

励みになりますので、いいね、評価、ブックマークのほどをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ