70 死後の記憶
物語の辻褄が合わない部分がありましたので、第19部の一部を変更しました。
死者の街と表記していたのを都と訂正し、現在は荒野になっているとしていましたが、
死者の都と呼ばれていると訂正しました。
ミカは光に照らされ目を覚ます。右腕を大きくのばし背伸びをすると、のそりとベッドから降りた。
がらんと空いた隣のベッドにシオンの姿はなかった。既にランニングに出ているのだろう。
現在、ミカは鍛練をシオン1人に任せている。シオンの成長は著しく、それでも、愚直に言い渡した鍛練方法を実践する姿勢に、信頼を置いているからだ。
それに、ミカには前世の軌跡を辿るという目的もある。
ミカの中にある、ミカズチの生前の記憶は、天都カゲロウの孤児院に拾われ、幼少期から独自の鍛練を積み重ね冒険者となる。
依頼で稼いだリーフの大半を孤児院に寄付し、やがて騎士王国スキュラの台覧試合でシルフ・シルフィードど対峙した。
その後も冒険者を続け、最強の称号、十熾天剣を得る。しかし、シルフ・シルフィードの策略に嵌まり、剥奪された。
最後は小さな村を魔物から守る依頼を受け、名も知らない少年を庇い、その生涯を終えた。
しかし、ミカの記憶の中には、ミカズチの死後の記憶もあり、その始まりが、このディーテたった。
しかし、腑に落ちない部分もある。それは、リラ・イフリートが攻略した異空間ダンジョン、黄昏のアビス内にも、ディーテが存在していたことだ。
(現実のディーテと異空間のディーテ。違いがあるのか……)
ディーテは中央広場を中心に、北にはロドレイア侯爵の屋敷、西は居住区、東には商業区がある。現在も復興とは程遠いが、少なくとも商業区は、機能している。
ミカたちが借りている宿も、一攫千金を狙う、ギラついた冒険者が多く、死に場所を探すような、死んだ目をした奴は少ない。
(たしか、ミカズチの記憶では、商業区の入り口付近に冒険者ギルドがあったな)
ディーテに冒険者ギルドは存在しない。何故なら、死の都と呼ばれるだけあり、階級が上だろうが下だろうが、死人しか生み出さないからだ。
ミカは冒険者ギルド跡を眺める。甦る記憶は、フヨウという名の受付嬢がいたことだ。
喉は酒にやけ、歳の割には随分と老けて見えた。その原因は、恋人が冒険者であり、行方知れずの報告を受け、何年も待ち続けた結果だ。
その恋人の認識票をミカズチが見つけ、フヨウに渡すと、フヨウは静かに涙を流し、次の日には身なりを整え『ありがとう』と礼を告げにきた。
数日後、フヨウは自ら命を絶ち、その顔は、大切な人と見つめ合い、照れ笑いしている女の子のようだった。
(フヨウ……か。案外、ベインさんとこのフヨウの前世だったりしてな)
ミカが次に向かった先は、中央広場だ。
(たしか、ここでホクト・ロドレイアとユイ・アサノハと出会ったんだよな)
ホクト・ロドレイア。ロドレイア侯爵の1人息子で、父親をシルフ・シルフィードに殺されている。通り名は“連斬のホクト”
ユイ・アサノハ。通り名は“大断斬のユイ。”身の丈以上の大剣”を天性の反射神経で操る。
(どう考えても、この2人はエギルとユイフィスに似てる……)
中央広場を北に進むと、廃墟と化したロドレイア侯爵の屋敷が見えてくる。
黄昏のアビスはこの屋敷に現れ、ミカズチ、ホクト、ユイたちは攻略に挑んだ。
(セーフゾーンではユイの冒険者仲間、空間把握師のヨハネ・スリードと出会ったんだよな)
荒れ果てた屋敷内に入り、埃の被ったテーブルに息を吹きかけ腰を掛ける。
辺りを見渡し、物思いに耽っていると、言い表せないほどの、懐かしい感情が湧いてくる。
(……これはミカズチの感情か?)
この屋敷での出来事が鮮明に呼び起こされる。
まるで白昼夢を見ているかのように――
黄昏のアビスで、何が起きたのか? 次回は数話ほどミカズチ編になります。
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