表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/117

7 王からの依頼

 ユズハが試験を終え、帰ってくる少し前――



「お疲れさん、エギル」

「呼び立てて悪いな、ミカ」


 挨拶をしてギルドを訪れたのは、ミカ・ユリノキだ。

 エギルは、エクス王から依頼された仕事をミカに頼もうと呼び出した。


「まぁ、座れよ。」

「そういや今日は、ユズハが帰ってくる日だな」

「あぁ、それより先に仕事の話をしたい」


 エクス王からの依頼は王都の東にある森林地帯近くに、古くからある洞窟の調査だ。

 そこの下層に新たな通路が発見された為、現状況を報告してほしいという内容だった。


「森林地帯の洞窟……学校の生徒が卒業試験とかに潜るあの?」

「あぁ、大陸全土でも結構古い洞窟だ。探索され尽くしてる筈なんだけどな」

「今になって新たな通路というと、ちょっと気味が悪いね」

「だろ? エクス王もそれが気になってるみたいだ。わざわざ上位以上の冒険者を指定してな」


 既に座天使2人を募ったが、念のためもう1人、経験豊富な上位冒険者が欲しいと思い、エギルはミカに白羽の矢を立てた理由(わけ)だ。


「サポートにラナシャともう1人付ける」

「ラナさんか。カゲロウからこっちに来てるんだ?」

「王都両立育成学校の試験官としてな」

「もう1人は?」

空間把握師(アーキテクター)のヨハネイ・シャイールだ」


 空間把握師。

 洞窟に流れる微風を感知し隠し部屋や通路を発見に長ける。

 しかし、集中力を要し、その間は無防備になってしまう為、上位階級で護衛する場合が多い。


「万全を期す為にも、引き受けて欲しい」

「エクス王からの依頼だし、引き受けて冒険者ギルドの評価を上げるよ」

「助かるよ」


 続けて、打ち合わせの話をしようとした時、ユズハが帰ってきた。

 疲れた顔をしていたが目は死んでいない。

 きっと、やりきってきたのだろう。


「悪いエギル、もう1人上位の奴を付けてくれない?」

「わかった。じゃぁ、明日の午前中に顔見せと打ち合わせをしよう。それが終わったら探索の準備を済ませ、明後日には出発してもらう」

「えらく(きゅう)だな?」

「明後日はユズハの合否が決まる日だからな。結果がどうあれパーティーだ」

「親バカめ」


 そう言いながらも、ミカの表情に自然と笑みが溢れていた――



 翌日、エギルはギルド奥の応接室でミカとラナシャと共に残りの2人を待っていた。


「ミカちゃん久しぶりだね」

「ラナさん、その呼び方は止めてください。私も30代ですよ?」

「出会った頃は16だっけ?」

「そうですよ」


 しばらくして、コンコンとノックする音が聞こえた。


「どうぞ」


 エギルが招き入れると、赤い髪をサイドテールでまとめ、キャミソールにショートパンツ、腰には2つのダガー、足は裸足の女が入ってきた。


「遅れてすみません! 冒険者階級、座天使!空間把握のヨハネイ・シャイールです!」

「あぁ、今回はよろしく」


 続け様に、男がもう1人入ってくる。

 少し長めの黒髪に少しぽっちゃりとした体格、左右の腰に剣を携えた男だ。


「おはようござ…おや? ミカたんではありませんか?!」

「お前…武器マニア(ウェポンマスター)の“カグルマ・アイスティ”!」

「おお、ミカたんに名前を憶えてもらっているとは光栄でござる!」

「おい、エギル。私が頼んだ上位ってコイツか?」

「文句言うな、腕は確かだ」


 冒険者階級・()()使()のカグルマ・アイスティ。正式名称は武器を自在に操る者(ウェポンマスター)だ。

 ただの長剣もカグルマにかかれば、攻撃手段が5つは増えると言われている。


「とにかく、改めて自己紹介からするぞ。俺はエギル・アイオリア。このギルドを経営している」

「ミカ・ユリノキだ」

「ラナシャ・キルロードです」

「僕は、ヨハネイ・シャイールです!」

「俺の名はカグルマ・アイスティ!(あざな)黒龍(ブラックドラゴン)だ!」


 一同は静まり返った。


 現在、通路が確認されているのは全6階層の内、下層にあたる4階層で発見された。

 発見者は下位の大天使パーティ。

 ふざけていたのか、2階層にある普段引っかかる事のない落とし穴の罠にかかり4階層へと落ちる。

 落ちた場所が見たこともない扉のある部屋だったらしい。


 今日の午後から洞窟を閉鎖し、1階層から4階層まで、王都の騎士団が魔物を排除しつつセーフゾーンを確保する。

 翌日、ミカ達は戦闘することなく通路まで辿り着ける手筈になっている――



 王都・商業区。


「……おい、カグルマ。なんで付いてきた?」

「実は、ミカたんが持っていた太刀に興味があるでござる!」

「鍛冶屋でも言っただろ?あれはダメだ。」


 霊光(れいこう)の太刀と霊破(れいは)の小太刀。


 ミカがこの両刀を鍛冶屋に持って行った時、偶然、カグルマと出会(でくわ)した。

 それに刀は、ミカがリラさんから受け継いだ形見。

 使いこなせない訳ではないが、いずれユズハに渡すと決めていた。


「とにかく付いてくるな。わかったな?」

「ミカたん、目が怖いでござる」


 ふぅ、回復薬でも買って帰るか。

 カグルマを振り切り、ミカは道具屋へと足を運んだ。

ご愛読ありがとうございます。

この作品に興味を持っていただいた方。

励みになりますので、いいね、評価、ブックマークのほどをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ