63 完成図の無いパズル
アイオリアとカルカヤは、軍略室から席を外し、回廊から騎士達の訓練風景を眺めていた。
「久しぶりだな、アイオリア」
「こちらこそ、カルカヤ将軍」
「気持ち悪い言葉遣いするな」
アイオリアの背中に張り手が飛び、思わず咳き込んでしまう。
「何すんだ、オッサン!」
「おう、それでこそアイオリアだ!」
カルカヤはアイオリアの剣術の師であり、連撃が雑と言われる由縁も、カルカヤの大雑把な性格が影響している。アイオリアは大きなため息を吐いた後、少し間を置いて自分の思った疑問をぶつけた。
「なぁ、エクス王が抱えてる問題って何だ? オッサンが出しゃばってるってことは、軍絡みか?」
「まぁ、会議が始まれば分かるさ」
カルカヤは訓練風景を眺めながら、涼し気な顔を見せていた。その横顔は、アイオリアを少し寂しくさせた。
「エギル、ちょっといい?」
2人の背後から話し掛けたのはラナシャだ。カルカヤの存在を気にしながら近づいてくる。
「アイオリアも隅に置けないな、ユイフィスに怒鳴られるぞ」
「そんなんじゃねぇよ、ラナシャは親友であり戦友だ。オッサンとエクス王と一緒でな」
「なんにせよ、邪魔みたいだな。先に戻ってる」
カルカヤの後ろ姿を見送り、軍略室に入るのを確認すると、ラナシャがエギルの隣に立ち並ぶ。
「どうした? ラナシャ」
「エギルに知ってもらいたいことがあるのよ」
ラナシャはカグルマから聞いた事を、包み隠さず話した。これはカグルマも望んだ事でもあった。
「召喚……か」
「驚かないの?」
「ツキシロを見ているからな。別の世界から、この地に足を踏み入れたツキシロと、召喚されたカグルマ。単純に方法が違うだけの話しだろ」
「そうね。この話をエクス王にしても良いと思う?」
アイオリアはしばらく思案し、報告することを決意する。世界の危機になりうる事案を秘匿には出来ないからだ。しかし、カグルマとエリカは同じ世界の住人。あらぬ疑いをカグルマに掛けてしまうかもしれない――
軍略室に戻り、会議が再開される。引き続き、冒険者行方不明事件について議論を始め、アイオリア達は、カグルマについて全てを話した。
エクス王達は、一瞬驚いた表情を見せたが、ツキシロの件もあり、アイオリア同様、あり得ない話ではないと理解を示した。
しかし、エリカと同じ世界の住人だと聞くと、やはり関係性を疑われる。
「すまないな、エギル。そのエリカとカグルマが、同じ住人だと言うのなら、繋がっているという可能性を考えねばならない」
一国の王として、至極真っ当な考えだ。たとえ、アイオリアやラナシャ、カグルマを知る人間が声を上げようとも、疑いを覆すことは困難だろう。せめて、ヨハネイの証言があれば。ラナシャは、ぐっと唇を噛む。
「なぁ、アイオリア。お前は可能性を信じるのか、そのカグルマって奴を信じるのか、どっちだ?」
アイオリアを睨むようにして、カルカヤが問い詰める。
「もちろん、カグルマに決まっている!」
カルカヤは、ふっと小さく微笑む。
「だ、そうだ。エクス王よ、可能性ってのは、完成図の無いパズルみたいなもんだ。手探りでピースを嵌めていくより、完成図を知っているアイオリア達に任せたほうが良いんじゃないか?」
エクス王は宰相達に目を配り確認を取る。
「そうだな。この件に関しては、エギルらに任せる。だが、動きがあった時は、常に報告してくれ」
「ありがとうございます」
「さて、これからは我らが抱える問題に焦点を合わせよう」
宰相から紙を配られる。紙に描かれていたのは紋様だ。丸い円の外側には沿うように、見たこともない文字が書かれ、内側には六芒星が書かれていた。
「冒険者の中で、この紋様を見たことはありますか?腕や足、胸、肩でも良いですが」
「……見たことはないですね。ラナシャはどうだ?」
「私もありません」
「二人とも、ありがとうございます。」
確認が取れると、エクス王は神妙な顔つきで、いま抱えている問題点を明らかにした。
「この紋様のある変死体が、3ヶ月前から増えている。我が国だけではなくな。そして3日前、騎士団の中からも発見されたのだ」
なるほど、それでオッサンも参加しているのか。アイオリアはカルカヤの顔をチラリと横目で見た。
さらにエクス王は続ける。
「その変死体も妙でな。四股を失っている者や、心臓を抜き取られた者もいる」
想像も容易な、凄惨な死体は紅必に限らず、各国で発見されていた。
ごく稀に飼っている犬が布団の中に入ってくるんですが、その時は、大体寝坊します。
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