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60 崩壊

 カグルマの目を見た英梨花は、不敵な笑みを浮かべ、指先にゴルフボールほどの魔力弾を作り出すと、カグルマに放った。


 魔力弾はカグルマの頬を掠めた。その行為は、英梨花の心に僅かに良心が残っていて、ぶつける事が出来なかったんだと、思い込ませる。


 そうカグルマが安堵した矢先、左腕が、ダシンッと引っ張られるように跳ね上がった。何が起きたかわからなかったが、だらんとした左腕を認識すると、激痛が走った。


 苦痛に顔を歪め、あらぬ方向に曲がった左腕を右手で抑え英梨花を見つめると、指先に魔力弾を作り遊ばせている。


「静にぃ、小さい頃にスーパーボールで遊んでくれた事、覚えてる?」


 その問いかけに、カグルマの体が僅かに揺れる。あれは英梨花と出会って間もない頃、スーパーボールを公園の壁に当てて遊んだ時の事だ。


 アクション映画で良くある拳銃の弾丸が跳ね返り、敵を打ち抜くというシーンを真似て、スーパーボールの反発を利用し、似たようなことを英梨花に見せた記憶がある。


 跳弾……。その答えに辿り着いたが、カグルマの意識の中に引っ掛かるものがある。この世界に反発させるような魔力が存在するのか?という疑問だ。

 この世界の魔力は、火、風、水、土などの基本属性を付与するための、いわば媒介の役割を果たすだけに過ぎない。


「静にぃの考えている事を、教えてあげようか? さっきも言ったけど、私はこの世界が初めてじゃない。最初の世界の魔力を引き継いでいるの。だから、この世界の魔力や魔法を基準に考えていると、危ないよ?」


 カグルマの顔から血の気が引いていく。5つの世界を渡り歩いてきた英梨花の力の底が見えないからだ。



「カグルマさん!」


 背後からヨハネイの叫び声が響き渡る。しかし、カグルマは振り向く事が出来なかった。一気に膨れ上がった英梨花からの殺気に、体が硬直したからだ。


 英梨花は指先に魔力弾を作り、ヨハネイに放つ。しかし魔力弾は、明後日の方向に飛んでいく。呆気に取られたヨハネイだが、すぐに危機を察し身を躱した。


 ヨハネイの目の前を通りすぎた魔力弾は、側面の壁にめり込み、パラパラと小さな欠片が落ちる。


「へぇ、あれを躱すんだ。凄いね!……少し遊ぼ!」


 英梨花は次々と魔力弾を放ち翻弄する。


 悪意に満ちた英梨花の笑顔を見て、カグルマの抱いた希望の灯が静かに消える。もうあの頃の英梨花じゃないんだな。そう呟くと右手に魔力を溜め、風属性に変換させると、英梨花に放つ。


 風は鋭利な刃となり、空を斬り裂き襲い掛かった。英梨花は左腕をすっと頭上まで上げると、霧のような魔法障壁を展開し、それを簡単に防ぐ。その隙にカグルマは叫んだ。


「ヨハネイ! こいつの攻撃は動いていれば当たらない! 攻撃の瞬間にその場から離れろ!!」


 跳弾は基本的に物陰などに隠れている相手に有効であり、動いている相手には効果が薄い。予知能力があるなら話は別だが。カグルマは英梨花を睨みつつ、ほくそ笑んだ。


「バレちゃった。でもさ、静にぃ。この中で動けないのは誰だと思う?」


 カグルマから徐々に笑みが消える。そんな、まさか。どんなに否定しようとも、英梨花が最初の攻撃で足を狙ったのは、この状況を作り出すための布石だったという確信が拭いきれない。


「逃げろ! ヨハネイ!!」


 もう遅いよ?と言わんばかりに、指先をそっと降ろす。魔力弾は地面と壁、2回跳ね返りカグルマの眉間に迫った。その時、カグルマの目の前にヨハネイのダガーが現れ、魔力弾を弾き飛ばす。


「カグルマさん、私が絶対に守りますから待っててくださいね」


 ヨハネイは五指感勘をゆっくりと指先で撫でながら、さらに話を続ける。


「今から一言もしゃべらないでください。頭がおかしくなっちゃいますから」


 一方的に話しかけ、笑顔を見せるヨハネイは五指感勘の数値を5に合わせようとする。咄嗟に手を握り制止させようとしたが、首を横に振って差し出した手を軽く押し返した。


「隙を突いて、あの女を倒します」


 優しく耳元で呟くと数値を5に合わせ、凛としてカグルマの前に立ち塞がった。


 英梨花の攻撃を的確に弾き返すヨハネイ。カグルマはその後姿を見て、自分の犯した過ちに対して怖くなり、子供の様に震え涙を流した。既にヨハネイは五指感勘の3や4の数値では、英梨花の攻撃を追い切れない状態だったのだ。


 やめてくれ、やめてくれ……。涙を流しながらヨハネイに懇願するが声に出せない。声に出せばヨハネイの五感を壊してしまうかも知れないからだ。


 もういい、やめてくれ!神様!どうかヨハネイを助けてください!カグルマは狂ったように、なりふり構わず心の中で泣き叫んだ。


「あっ」


 突然、カグルマの耳をヨハネイの短い声が刺激した。


 力無く倒れ込むヨハネイを右腕で支え起こす。


 ヨハネイは、舌をだらしなく出し、まるで赤ちゃんのように涎を垂らしていた。

ブックマークしていただいてる方を失ってしまった。更新が遅れてしまい、申し訳ございません。

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