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6  絡みつく不安

順次改稿中。現在6部まで進んでいます。

 様子を見ようと思ったけど、誰も一番手になりたくないなら、俺が出ようかな。

 カズヤがそう思い動き出そうとした時、相手も同じような感じで備え付けてある武器棚に歩きだした。


 特に意味は無いけど、木剣でいいかな。

 硬くならないように手首を回しながら舞台上がる。


 カズヤは中段に構える相手を見て、上段に構えをとる。これといって考えはない。


「それでは、始め!!」


 試験官の合図と共に、じりじりと間合いを慎重に詰めて行く。


「ふっ!」


 カズヤは呼吸を止め、木剣を鋭く振り下ろした。

 木剣は弧をえがくように()()()


 木剣がぶつかり合う乾いた音が周りに響く。


 相手の木剣を完全に弾き、すぐさま伸びきった右肘を腹部あたりに引き、鳩尾(みぞおち)を狙い突きを放つ。

 しかし、相手は左半身を内側に入れるよにして(かわ)す。

 カズヤは前のめりになり、相手も無茶な()け方をしたのか、互いにバランスを崩す。


 2人は次の攻め手を欠き、一度間合いを外す。


 見る気は無かったけど……“能力値(ステータス)”を確認するか。

 相手の全身を視界に入れ、集中しようとした僅かな隙をカズヤは突かれる。


 悠長(ゆうちょう)…だな!


 素早い踏み込みから放たれた容赦の無い袈裟斬(けさぎ)りが、カズヤを襲う。


 そりゃそうだ、模擬戦とは言え今は戦闘中。見ようとした俺がバカだ。


 この袈裟斬りを左手に持った木剣で防ぎ、右拳を腹に叩き込む。

 カズヤは瞬時にイメージを完成させる。


 袈裟斬りを受けようとしたその時、相手の木剣が()()()()()

 咄嗟の判断だった。カズヤは木剣を手放し、後ろへ飛び退いた。


「そこまで!!」


 試験官の声に、お互いが同時に一息ついた。

 それが何故か可笑しくて2人で笑い合った。


「いや、強いね君。俺はカズヤ・ヒイラギ。君は?」

「ユズハ・アイオリア」

「ありがとう、覚えとくよ。ちなみに君は()()()()()()?」

「そうだけ……ど?」

「そっか。そうだよね」


 2人は一礼をし舞台を降りる。

 振り返ると、アイオリアの周りに友人と思われる3人の受験生が駆け寄り何やら騒いでる。


 何故、この世界の人間か?と聞いたのには理由(わけ)があった。

 互いに名乗り合った時、カズヤはステータスを確認していたからだ。

 そして、“ステータスの中に“unknown(アンノウン)”と表示される項目が気になった為だ。


 ステータスと呼ぶには、実にシンプルで、相手の総戦闘力数値が見える。


 総戦闘力数値は、単純に対象の総合的な強さを表す数値。

 対象の身体能力や魔力、強化魔法を受ける事でも数値は変わる。

 カズヤの基本数値は250。シオンは170、ユズハは120だ。


 …unknown。総戦闘力以外に、こんな標示は初めてだ。ユズハは俺の知らない未知の能力を持っている。

 カズヤの総戦闘力数値は遥かに高い。それだけに不安が絡み付く。


 そんな事を考えながら友達と騒ぐユズハを見ていると、何故か不意に羨ましくなってきた。

 カズヤにはお目付け役のリュリ以外、あんな風に騒げる友達が居ないからだ。


 実技試験は昼休みを挟み午後も引き続き行われ、やがて全ての受験生が模擬戦を終えた――



「はい、皆さんお疲れさまでした。これで実技試験は終了です!合否については2日後、王都城外兵舎にて張り出されますので各自、ご確認をよろしくお願いします。」


 各々が帰り支度を始める頃、最後に飯を食おうとユズハたち4人は、食堂に待ち合わせることにした。


 カルティやヴィネ、シオンと合流し、食べるのが遅い、食べ方が雑、連撃が雑等、他愛のない話で盛り上がる。

 最後はたとえ落ちたとしても、この繋がった縁は切らずにいようと約束し別れを告げた――



「ただいま~」


 ユズハが冒険者ギルドに足を踏み入れると、ユイフィスは床の掃除を始めかける所だった。

 冒険者達が集うテーブルの一つに、エギルと一緒に居るミカの姿もあった。


「お帰りユズハ。」


 優しく微笑みながら迎えてくれるユイフィス。

 その声を聞いて安堵したのか、疲れがどっと押し寄せる。

 エギルとミカは、大事な話をしている様子だ。


 自室に戻ったユズハは、ベッドに倒れ込み天井を見つめる。


 やることはやったし得る物もあった。大事な友達も出来た。

 そう思い出しながら、いつの間にか眠ってしまう。


 こうしてユズハの入学試験は終わりを告げた。

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