50 ビートソードエヴォリューション
――昨晩、さっそく俺は自室で修行ノートを読み始める。
5歳の頃から基礎鍛錬を積んできたけど、それらはこのノートに集約されていた。読み進めると、気になる鍛錬法を見つける。
それは“ビートソードエヴォリューション”という剣術向上方法だ。しかしこの鍛錬は一人じゃ出来ない。
その理由は魔力の球体を作り出せる魔導師が必要と書いてあったからだ。俺は親父に頼んでラナシャさんと連絡が取れるよう頼み込む。
それまでは、いつものルーティーンを熟していた――
冬期休暇は14日。3日目の朝にラナシャさんから連絡があり、昼過ぎからビートソードエヴォリューションを開始する事になった。
ビートソードエヴォリューションは、ラナシャさんが放つ魔力玉を剣で斬り続けるという鍛練方だ。
この方法で咄嗟の判断力と瞬発力が鍛えられると書いてあった。さらに4段階の難易度も存在した。
1段階目は上下左右、四方から放たれる魔力玉を斬る。
2段階目は全方位に増える。
3段階目は魔力玉の速度上昇。
4段階目は魔力玉を決められた角度で斬り裂く。
4段階目に関しては、魔力玉に装飾魔法を付与し、魔力玉に記された矢印の方向に斬る必要がある。
例えば、矢印が右上から左下になっていた場合、右袈裟斬りになるという具合だ。
もちろん、ラナシャさんの魔力量にも限界があり、日数にも限りがある。
手始めにとラナシャさんは、半径40cmほどの魔力玉を上段に放つ。斬り裂こうと剣を振り下ろすと、触れた瞬間に小さな爆発が起きた。
「もっと鋭く。じゃないと斬れないわよ~」
四方から飛んでくる魔力玉を想定して、コンパクトに剣を振ろうと思ったけど、それじゃ斬れないわけか。かと言って、柄を握る手の幅を開くと、大振りになって、斬れたとしても次の反応が遅れるかも知れない――
この日は魔力玉を斬ることに、多くの時間を費やしてしまった。
――翌日
昨日と同じくギルドの訓練場で待っていると、ラナシャさんが魔力回復ポーションを麻袋いっぱいに買い込み現れた。
「慣れるより慣れろよ!今日はバンバンいくからね!」
ラナシャさんは意外と熱血漢らしい。その期待に応えるべく、俺も剣を握り構える。
陽が傾き始めた頃、まだ全ての魔力玉を斬ることは出来ないでいた。でも悠長にしている暇もない。
日数を考慮して1段階目クリアを目標に、半ば強行手段に踏み切ろうとした時、訓練場にカグルマさんが入ってきた。
「ラナたん、ユズハ殿、何をしているのでござる?」
相変わらず変な話し方をするなぁ。そう思いながら、事の経緯を説明した。
「ビートソードエヴォリューション?!」
その驚きようは予想外のものだった。カグルマさんの額から汗が滴り落ち、何か思考を巡らせているようにも見える。
少しして、何に納得したのか分からないけど、大きく頷きコツを教えると申し出た。
「ユズハ殿、魔力玉に剣が触れた瞬間、斬り払うイメージを持つでござる」
その感覚を養う為に、俺に軽く握り拳を作らせた。そして、手のひらを俺に見せ、殴るように指示する。
「拙者の手にその拳を打つでござる。そして当てる瞬間に、強く拳を握るでござる。」
言われた通りに実践してみると、手のひらに当てた瞬間、衝撃が突き抜けたような不思議な感覚が伝わってきた。
「これがノートに書いてあった瞬発力の部分だと思うでござる」
「でも、これが剣になると違ってくるんじゃないですか?」
「正直に言うと剣はまだ早いでござるよ。ラナたん、ユズハ殿を今から借りても良いでござるか?」
「別に良いけど……。次に私が来れる日は、明後日になるわよ?」
「ちょうど良いでござる、それまでに魔力玉を斬れるように仕上げるでござるよ」
ビートソードエヴォリューションを一旦切り上げ、翌日からカグルマさんの指導が始まった。
次回から三人称一元視点を意識して投稿していきます。最初は一人称で!と思ってたんですけど、素人には無理です。今まで勢いのまま書いて投稿してましたが、しっかりと一本の線を意識して続けて行こうと決めた次第です。
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