48 戦災-いくさがみ-
第26部イスノキ一族で、サカキ・イスノキの異能・遡及顕現で投稿した内容を変更しました。
前:過去の地形や建物等の一部を現在に顕現させる能力。
後:現在に過去の領土の一部を顕現させる。しかし現世界の地形を根本から変える事は出来ず、別空間として顕現させる能力。
神都シャダイの北西部にある深き樹海。その中心部にある村に私は立っていた。この村はシャダイの教皇が「悪鬼はこの地から現れる」と吹聴した事により存在している。
実際、信仰心を得るため理想郷などと言葉巧み人間を誘い、教皇に雇われた無法者達が村に住み着き、誘いに乗った人間を殺すことで教皇から金銭を受け取ることになっている腐った村だという。
ジュッ――
「ユッカ様、遡及外に出ると骨になってしまいますよ。」
「不憫な身体だな。」
「もう暫くお待ちを。必ず代わりとなる優秀な肉体を手に入れて見せます。」
私を現時代に甦らせたのは、イスノキの末裔だと名乗る“サカキ・イスノキ”と“エリカ・イスノキ”だ。私の身体はこの二人の異能によって、留められている。
サカキの異能、遡及顕現。現在に過去の領土の一部を顕現させる事ができる。しかし現世界の地形を根本から変える事は出来ず、別空間として顕現させているのだと言う。故に足を踏み入れた現代人は、サカキが遡及を解除しない限り帰る事は叶わぬ。
エリカの異能、死現。サカキの遡及内に留まる“魔力の源に帰す”事の出来なかった死者を、私のように遡及内限定で甦らせる事ができる。
二人は私の亡骸を手にし、遡及顕現と死現により現時代に生かされているのだ。
くだらん。剣を振り払い、飛び散った血が地面にはたはたと落ち土に馴染む。二人は私の悲願を叶えようとしているが、とうに果てている。
しかし、こうして素性も知らぬ人間を屠っているのは、忌々しい契約に従っている為だ。旧世代の召喚者と名乗る者との契約に。
「サカキ、この村の連中はもう居なくなりましたよ。やっと拠点が出来ますね。」
「そうだな。シャダイの奴らも神が生まれたと信じ、この村の必要性も無くなっただろう。さぁユッカ様、どうぞこちらへ。」
サカキが手を合わせると、もう一つの領土が顕現する。懐かしいではないか。その領土に建つ屋敷は、かつてこの世に生を受け、親族に殺されるまで過ごしていた場所だ。
内装も変わらぬ。実の父であるイスノキ王に殺された記憶に苛まれながらも自室へと足を運ぶ。そうだ、ここで私は殺され生涯の幕を閉じたのだったな。
――――イスノキが存亡の危機に瀕した時代。
「ユッカ様。度重なるご活躍、本土まで響いておりますぞ!」
当時の私はイスノキを守る為、中立を保つという国政に異を唱え、自国を守る為に戦場を駆けずり回った。その戦績も相まってやがて各国からは、戦に災いを成す者として畏れられ“戦災”と呼ばれるまでになった。
しかし、イスノキ王はそれを許さなかった。何故判らぬ?各国が領土争いに狂っている今、中立などと静観できる立場ではないのだ。現に戦禍はイスノキの保有する領地を巻き込み、民を苦しめている。
私は使者を送り、考えを改めるよう何度も繰り返し申し出た。今、イスノキが存続できているのは、私が戦禍へ赴き勝利を収めているからだと。
しかしその申し出が叶わぬまま2年が経ち、私の死は訪れた。実の父親、イスノキ王に粛清されたのだ。死して尚、忘れぬことの出来なかった運命の日。
「父上。ご足労痛み入り……」
「いつまでふざけている?出来の悪い息子だ。」
私の異能“無限危機”を発動する暇もなく、胸に短刀が突き刺さっていた。突き刺した短刀をグリュリと半回転させ引き抜かれる。紛れもない死の感触が全神経に伝わる。
「なぜ……ですか?」
「我らの異能は世界の理を逸脱している。干渉する前に滅びるのだ。」
イスノキ王自ら望んだ滅亡への道。ならば何故子孫を繁栄させた?何故、民を持った?袖を掴みながら訴えた私を振り払い、王は部屋を出る。流れ落ちる血と共に魔力が奔流され、身体は死を迎える準備に入った。
怒りと恐怖が交わり冷静な判断の出来ぬ時を見計らったように現れたのが旧世代の召喚者と名乗る少女だった。肩まである黒髪と雪のような白い肌を持ち、額には見た事もない印象的な文字が刻まれていた。
「お前、死にたくないか?」
「当たり前だ!」
民を犠牲にしてまで滅亡を望む一国の王が存在してたまるか!税収の苦しい村や街もあったただろう。それでも私達を慕い、国家を盛り上げてくれた民を自身の都合で亡き者にする王族を許せるわけがなかろう!
命あるならば私が王を討ち、民に歩み寄り、大陸全土に轟くような国家を造り上げる!
「……小さい願望。」少女が何かを呟いた気がしたが、今はどうでも良い。
「これからお前は私とある契約する。その契約後にお前が契約に値するかどうか判断させてもらう。合格すればお前を現実に存在させてやる。その時に願望を叶えればいい。いいな?」
少女は私の手に触れ光をもたらす。これは私の意志と魔力をこの世に縛る儀式だと言った。愚かな事だ。何十年、何百年と時を経ても願いが叶うことは無く、意志と魔力を縛られた私は、イスノキの滅亡を目の当たりにし、戦争の終結、国家が四分なる時をただ眺めていた。
――契約を違えたのか。
その疑問さえも既に果てている。少女との契約。それは至極単純なものだ。
“復活の時をただひたすらに待て”
末裔との邂逅がその時だとしても、今はもうどうでも良い。今はただ死を望み、敬うのみ……。
この辺りでちょっと敵の存在感を……。
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