46 魔導師達の本戦
「ライア、頑張れ!」
「ライア、頑張ってねぇ!!」
私に声援を送ってくれるのは、同じクラスのリノ・クインスとヤシラ・マルキス。実技訓練で一緒にパーティを組んだ仲間でもある。本当はもう二人居るのだけれど、一人は友達のお見舞いに。もう一人は冒険者ギルドに足を運んでいる。
そして私は今、学年別剣術大会・魔導師部の準決勝の舞台に立っている。対戦相手に恵まれ、難なく準々決勝を突破し現在に至っているのだ。
「両者、礼!」
ペコリと頭を下げた対戦相手は“ミズキ・ヒュウガ”グレーにベージュがかった透明感のあるロングヘアーにアーモンドのような瞳。痩せ型だけどバランスの取れた体系。友達の私でも見惚れてしまう存在だ。
また、ライアとは同郷でありクラスは別々だけど学校へは寮から一緒に通っている。
「準備はいい? ライア。」
「もちろん。」
審判が試合の合図を送る。ミズキが相手だと今までのような火炎連弾で押し切る事は難しい。なぜなら彼女の潜在属性は“氷属性”
雷属性と同じく基本属性から外れた稀な属性だ。
相性は互いに最悪。むしろ私の方が不利かも知れない。勝機があるとすれば一瞬の隙を見逃がさず、高火力の火炎を放つ事。それも氷を焼き溶かすような。
私は距離を取り有効範囲外から隙を伺う。ミズキは動じずその場で杖を振り、氷零魔法“雹槍”を作り、自身の前で維持させている。雹槍とは約20㎝ほどの槍の刀身を氷で模った攻撃魔法だ。
参ったな、これじゃ迂闊に近づけない。ミズキの事だ、きっと単発では終わらないだろうし。ジリジリと範囲内に収めようと歩み寄るミズキに対し、私は範囲外に逃れる。
「来ないなら……行くよ!!」
ミズキは杖を振りかぶり、維持した雹槍に向かって振り抜いた。打たれた雹槍が一直線に私を襲う。それを魔法障壁で弾くと、さらに二本目が飛んでくる。
すぐさま身を翻して躱し、体勢を立て直したと同時に反撃の火球を放つ。しかし火球はミズキの数メートル前で霧散する。
これが部の悪い理由……“空雹壁”の存在だ。
空気中の水分を凍らせ、火炎耐性に特化した障壁。これを打ち破るには、やっぱり強烈な火炎魔法が必要になる。意を決した私は魔力を練りながら打って出る。
……私はミズキに一つ嘘を吐いていた。それは幼い頃の約束。“一緒に魔導師になろう”
後方で強烈な魔法を撃つ冒険者を見た時、目を輝かせて見ていたミズキは、きっと私も同じ気持ちだろうと思い込みそう言ったのだろう。
でも私は、前衛で戦える魔導師が好きだった。それは剣士の両親の影響を受けてきたからだ。
ごめん、ミズキ。連続して放たれる雹槍を受けながら、練り終えた魔力を火属性に変える。その炎を茨のような形に模り杖に纏わり付かせると一気に振り抜いた。
火炎魔法“棘炎”
練りに練った魔力は粘り気を持ち、鞭のようにしなる。原理はミズキが雹槍を維持させたのと同じだ。練った魔力はその場に止まる。
耐性を持っただけの薄い空雹壁では決して防げない。ミズキの全身を突き刺す様に棘炎が絡みつき、さらに炎が立ち上がる。
「知ってたよ。」
「えっ?」
突然、霧吹きを吹きかけられたような感覚が肌を捉える。そしてミズキの全身を包んでいた炎が全て霧と化した。
原因を考えている暇はなかった。既に口元を動かすことさえ困難なほど体は冷え、まるで体の内側から凍りつくような感覚が襲っていたからだ。
「氷零魔法“水光姫”。ライア、参ったしないと凍え死ぬよ?」
「ま……いた。」
「オーケー、私の勝ちだね!」
ふっと温かみが全身を駆け巡る。ほっとした私は尻もちを付き座り込んでしまった。
本来、水光姫は周囲に氷場を作り、氷零魔法の威力を底上げを目的とする魔法だけど、ミズキはそれをカウンターとして変化させたみたいだ。
審判が私を見て、ミズキの手を掴み高々と上げる。
「勝者、ミズキ・ヒュウガ!!」
剣術部と違い観覧者は少ないが、その誰もが歓声を上げる。それもその筈、水光姫なんて中級魔法、15歳の駆け出し魔導師が扱えるほど簡単じゃないから。異様だから。
「ライア。棘炎、中々だったよ!」
「……嬉しくない。」
――決勝戦はミズキとローズ・エルダーベリーの闘いになった。
二人は信じられないような攻防を繰り広げ、最後はローズさんの雷魔法“天子雷光”で勝敗が決した。
この天子雷光もミズキの水光姫と同じ中級魔法。3本の雷を背後に作り出し、紐のように維持させる。それを三つ編み状に絡ませ直線に飛ばす一点突破の魔法だ。
ミズキも魔法障壁を何重にも展開し防ごうとしたけど、次々に破られ威力は弱まったものの直撃し、魔力の枯渇も相まって動けなくなってしまった。
審判がローズさんの勝利を宣言した後、今までにない歓声が巻き起こり、健闘を称える声が止むことはなかった。
同時にそれは、天才と呼ばれる魔導師が二人も誕生する瞬間でもあった。
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