40 融合魔法
剣術部の予選が終わった翌日、今度は魔導師部の予選が始まる。規則は剣術部と変わりはない。しかし、武装は魔導師らしい樫の木杖と黒いローブだ。
樫の木杖は尖端に球状の水晶が施されていて、魔力を練ると、青、黄、赤と色が変化し、赤を超えると自壊する。黒いローブも同じく、点数を表す体力の指輪の代わりとなる装備だ。
そして俺は、クラスメイトで実技訓練を共にした魔導師のリノ・クインスとライア・ハートシードの応援に来ていた。
「あれ、ユズハ?」その声に振り向くと、そこにはカズヤが立っていた。
「カズヤ?どうしてここに?」
「同郷のリンネを見に来たんだよ。」
「リンネ、リンネ・ヒラドさんを?」
――リンネ・ヒラド。前世は日本人で、俺をこの世界に召喚した女性だ。
俺は天才子役と呼ばれ、幼少の頃から映画やドラマに出演していた。色々ともてはやされ、居心地が良かったのを覚えている。しかし、歳を重ねるにつれ出演依頼は減って行った。
子役時代はイケメンなどと言われていたが、10代を迎える頃には特徴のない、どこにでも居る普通の顔に成り下がった。その原因はアイドルグループを手掛ける大手事務所の存在が大きい。
彼らの登場で顔の良い男の平均値が上がったからだろう。
それからは映画やドラマの仕事も減り、バラエティ番組の出演が多くなった。グルメ番組ではゲテモノを食べ、トーク番組では頭の良くない振りをし、段々と息苦しくなり始める。
そんな時、アクション映画の依頼が舞い込んだ。準主役だがしばらく離れていた俳優業に心が躍ったのを覚えている。
そんな矢先、撮影中に爆発事故が起こった。
シーンは爆弾が仕掛けられた廃墟から主人公を逃がす場面。主人公を逃がした数分後に爆発させるはずだったのに、タイミングを間違えたのか俺がその場を離れる前にボタンが押されたと推測している。
廃墟の破片が身を刺し、燃え盛る炎が全身を包み、息も出来ず蹲るしかなかったのを覚えている。そんな俺をこの世界に召喚したのがリンネ・ヒラドというワケだ。
リンネからこの世界の情報を与えられ、リンネが神となる存在だという事、それを守護する騎士として俺が召喚された事、召喚の際に神技と言われる対象の能力値が見れるスキルを得た事を教えられた。
リンネは命の恩人で、新たな人生を与えてくれた守るべき女性。そんな彼女を守る強さを得る為、3年間の猶予を貰ったのだけれど、そうも言ってられない状況が生まれつつあった。
教皇派と王権派の固執だ。と言っても、まだ噂の域を出ていない。しかし、教皇派のリンネの使い方により、最悪の状況に陥る可能性はある。それも含め、出来るだけリンネの傍にいて状況を精査しようと思い、学校に足を運んだ次第だ。
「リンネ様~!」わっと観覧者の声が沸き上がる。どうやら学校でも信者となる生徒が多いようだ。この学校にリンネが通う理由は2つある。一つは膨大な魔力をコントロールする為、もう一つは各国から集まる人間への布教活動だ。
この学校には各国の領主の息子や娘が多く、貴族への布教活動には持って来いの場だ。教皇は自国の信者だけでなく、世界中に信者を得るようリンネに頼み込んだのだろう。
――「それでは第一試合、始め!!」
私の対戦相手は神都でも有名な魔導師の名家、サージュ・ドウダンの子息“カズラ・ドウダン”。よくお父さんが話してたな、ドウダン家とは何かにつけて因縁があると。
(これを機に格の違いを見せつけて、お父さんを喜ばせよう。)
「ぼーっとしてヒマあんのかよ?!リンネぇ!!」
カズラが杖に炎を纏わせ、殴りかかって来た。私は魔法障壁を全身に纏いそれを弾き返す。二発、三発と打撃を受けるが、そんなもの私に効くはずがない。
(彼は近接魔導師なのかな……。)
近接魔導師、通称“近魔”。規則上、杖の使用が義務付けられているため、仕方なく殴りに来てるみたいだけど、本来は拳や足などに魔力を維持して属性を与え、格闘に転じる魔導師の事を指す。
(可哀そうだけど、勝たせてもらうね。)
私は杖を振り上げ、カズラの杖を弾き飛ばす。慌てて取りに戻るカズラの後ろを狙い、火と土の融合魔法を放つ。
創造魔法“劫火”
カズラを目掛けて地烈が走る。その地烈の中から熱され溶融した石が火花を散らし襲い掛かる。
(イメージはマグマ。)
地質上、岩なんて無いから無数の石を溶かしただけなんだけどね。それでもめちゃくちゃ熱いはず。
カズラは異様な暑さに気づいたのか、杖を取り振り向くとつま先にマグマが触れる。すると一瞬にして下半身が炎に包まれた。
「ぎゃぁぁぁ!!」
衣服が塵となり、その先から素肌が赤黒く焼け爛れ始めた。それを見た先生たちが一斉に水魔法を放つ。しばらく蒸気が闘技場を包み、やがて霧散していく。
(ふぅ、私の勝ちかな。)私は杖を掲げ勝利をアピールしたが、観覧者達はシンと静まり返っていた。よく見るとカズラの下半身は酷く爛れ、自力では立ち上がれないほどのダメージを負ったみたいだった。
(ちょっとグロかったかな?まぁ、ドウダン家もこれで少しは大人しくなるでしょ。)
試合後の称賛の声を楽しみにしながら、私は闘技場を後にした。
ご愛読ありがとうございます。
この作品に興味を持っていただいた方。
励みになりますので、いいね、評価、ブックマークのほどをよろしくお願いします。




