表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/117

29 僅かな変化

 私は自国の状況を説明した。都合のいい騎士道を解き、圧政で国民を苦しめている事、騎士の家系に生まれたばかりに、両親も2人の兄も体裁だけを気にして何一つ行動を起こさない事、黙って過ごしていれば保護され、子供たちは騎士団への入団を約束されていると信じている事。


 それが嫌で、自由騎士を目指している事を。


「なら、このまま卒業して自由騎士になれば良いんじゃ?」

「それがね、実技訓練の次の日、両親から手紙が届いたの。」


 その内容は、スキュラが自国民に対し自由騎士を容認しないという通知だった。私は憤りを感じ破り捨てようとしたが、その文面に続きがある事に気づいた。


 但し“台覧試合(たいらんじあい)の勝者には自由を与える”と。


 台覧試合。3年に一度、皇族の前で行われる勝ち抜き戦だ。スキュラの現役の騎士や騎士家のみ、参加が許されている。昔は歴史ある純粋な武を競う試合だったが、今は賭博の温床になっていると囁かれている。


「それが、私が卒業する3年後に控えているんだ。」

「今からオーバーワークしてまで、強くならないといけない強敵でもいるのか?」

「うん……。」


 勝ち抜き戦を制した後に出てくる最後の壁、“クヌギ・アザミ”。アオキバ・スターチス現国王の側近にして、スキュラ騎士団の長を務めている。その戦闘力は十熾天剣(じゅっしてんけん)並みと称され、他にも黒い噂が絶えない男。


「私もバカじゃない。今から努力しても、3年やそこらでクヌギを倒せるとは思ってないけどね。」

「それなのに強くなろうと?」

「……こういう運命だったと諦めたくないから。何でも運命の所為にしたら“諦め癖”が付いちゃうでしょ?」

「確かにそうだな。」

「はぁ~!……でも、負けて良かった!登ってた血が降りてきたよ。」

「そうだ。学年別剣術大会、出るんだろ?その時は万全の状態でシオンと戦いたい。」

「え?私まだ申請してないよ。出る気も無かったんだけど……。」

「あれ、ヴィネがそう言ってたけど?」

「アイツ、勝手に申請しやがったな!……ま、いっか。私もユズハにリベンジしたいしね!」


 少し引きつった顔をするユズハを見て頬が緩む。


「さて、今日は早退しよう!」

「その方が良いよ。教官には俺から上手く言っとくから。」

「嫌な思いさせてゴメンね。そして、ありがとう。」



 ――――シオンが早退した放課後、選択科目の授業も終わり、寮に戻る途中にカルティと出会った。


「おう、ユズハ。」

「お疲れさん、カルティ。」

「今、帰りか?」

「あぁ、カルティも?」

「そう。あ、今から時間あるか?」


 カルティに誘われ、食堂に向かう事になった。思えば、久しぶりに言葉を交わしたな。


「なぁ、夏期休暇はどうするんだ?」


 食事を済ますと、4日後に迫った約1ヶ月の夏期休暇の話題になった。


「俺は両親の所へ一旦帰るかな。学校の訓練場は整備期間で使えないから、ギルドの訓練場を使おうと思って。」

「そうか。俺とヴィネは伯父の所に帰るつもりだ。」

「シオンはどうするつもりかな。」

「家の事情があるからな。多分、俺らと一緒に帰るんじゃないか?」

「そうなると、1ヶ月は会えないな。」

「なら、遊びに来いよ。伯父にも紹介したいからさ。」

「クラウンズ家に?!良いのかよ。」

「もちろん、アイオリアさんとも面識があるしな。」

「じゃぁ、暇を見つけて遊びに行くよ。」

「おう、待ってる。」


 そんな話をしていると、ガチャリと食堂の扉が開く。大きなあくびをしながら入って来たのはシオンだった。


「あっ。……まぁ、いっか。」

「少しは恥ずかしがれよ。」

「ゴメン、二人に恥じらいは必要ないかと思って。」

「男として見られてないぞ、カルティ。」

「見られるのも、どうかと思うけどな。」

「あ~、嫌な感じ。」

「お互い様だろ。」


 シオンは早退後、寮で眠っていたらしいが、腹が減って目が覚めたらしい。目の隈はまだ残っているが、顔色は今朝よりも良くなっていた。


「シオンは夏期休暇、どうするんだ?」

「そうそう、ユズハに聞きたい事があったんだ。」

「ん、何?」

「ご両親、ギルド経営してるんだよね?休暇の間、訓練場借りれないかな?」


 シオンも俺と同じ考えだった。他の冒険者も使用するから、時間は限られていると伝えたが、それでも良いと答えが返ってきた。


「じゃぁ、伯父にはよろしく伝えておくよ。」

「さてと。カルティ、そろそろ戻ろうか。」

「だな。シオンはごゆっくり。」

「え~、つれないなぁ二人とも。」

「そんな性格だったか?」

「女心は水物。どこに流れ落ちるか分からないものよ?」

「カルティ、行こ行こ。」

「あぁ、行こう。」

「ちょっと!付き合いなさいよ!」


 結局、シオンが食事を済ますまで残り、三人で食堂を後にする。そして、ほんの僅かだがシオンの食べ方が綺麗になった気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ