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25 ダストエルフ

 ――――イスノキさん達は先行し、周りを警戒しつつ俺達を導いてくれる。しかし、数回往復しただけで、こんなにも的確に進めるものだろうか?


「イスノキさん、このルートに慣れてるんですね。」

「二回往復しているからな。でもそれだけじゃない。」

「もう一つ理由が?」

「あぁ、似てるんだよ。()()()へ続くルートとな。しかも、古城がある場所が丁度、麓付近なんだ。明らかに怪しいだろ?」

「誘ってるんですかね?」

「いい発想だな。あらゆる可能性を考え、思い付く事は視野を広げる。重要な事だ、覚えておけ。」


 しばらくすると獣道が途絶え、少し開けた場所にたどり着く。そこには草木に絡まれた外壁の一部が見えていた。


 レオンさんは右手を肩口辺りまで挙げ、静止の合図を出す。


「サポートはどうするんだ?ハジメ。」

「レオンはヤシラとミスティに付け。ソフィーはリノ、ライアのフォローを。俺はユズハをフォローする。」

「了解よ。」


 剣を抜き、じわりじわりと歩を進める。より一層、警戒心を強めながら――――。



 俺達は朽ち果てた正門から内部に入る。辺りには錆び付いた鎧や剣、人間かどうかもわからない骨のような物が転がっていた。


「城と言うより、砦みたいだな。」

「重要な拠点だったのかしら。」


 レオンさんは、城と言うには規模が小さく、倒壊した家屋のような物は兵舎だと言う。その兵舎付近にも生物らしい気配なかった。


 それが逆に不気味さを感じさせる――――。



 先行していたレオンさんがまた手を挙げた。しかし、静止の合図じゃない。人差し指だけを伸ばしているということは……何者かが居る合図だ。


 各自、崩れた外壁を利用しカバーに入る。レオンさんはそれを確認すると、俺達のいる場所へ素早く移動し小声で話しかけた。


「ハジメ……“廃棄(ダスト)エルフ”が一体、この先に居る。」

「ダストエルフ?数千年前に存在したと言われるエルフの劣等種か……。」


 その容姿は、尖った耳に真っ黒な目を持ち、両腕は肘の辺りから鎌のように湾曲している。身体は細く、約160cm程だ。足は()の字に曲がり、まるで獣みたいな足だった。


「強さは未知数だ。俺達三人で対処するか?」

「いや、俺が行こう。」そう言ってイスノキさんはカバーを繰り返し、視認出来る場所まで移動した。


 イスノキさんの足元から外側に向けて、砂埃が円形に舞う。

 その瞬間、全身を淡い緑色した魔力が包み込んだ。


(身体能力強化?!)一気に俺の心は不安に駆られた。何故なら身体能力強化は膨大な魔力を消費し、その魔力で短時間だが強引に筋力を向上させる事が出来る。

 しかし使用後は、魔力の枯渇と無理やり向上させた筋力が耐え切れず断裂等を起こし、それ以外にも様々なリスクを伴う。その為に最後の切り札として使用する冒険者が多い。それを今使えば、イスノキさんの戦闘能力は著しく落ちる!


「ハジメなら大丈夫だ。」レオンさんは俺の不安を察したのか優しく声を掛け、肩をポンと叩き微笑んで見せた。


 異変に気づいたダストエルフは周りを見渡す。敢えて姿を見せたイスノキさんを発見すると、グッと腰を下ろし、()の字に曲がった後ろ足に力を込めている。

 既に鎌のような腕を振り上げている様子を見ると、踏み込むと同時に振り下ろす算段だと一目で分かった。それほど自分の瞬発力に自信があるのだろう。



 ――ダンッ!



 ダストエルフは地面を強く蹴る。その一足でイスノキさんの頭上近くまで到達し、その勢いのまま右腕を振り下ろす。レオンさんやソフィーさん以外、誰もが頭をかち割られると思った。


 しかし、イスノキさんは微動だにせず、ダストエルフの渾身の一撃を弾き返した。

 飛び掛かってしまった為に、空中でバランスの取れない相手を見て、イスノキさんは軽く踏み込み、胴体に剣を突き刺す。

 背中まで貫かれ、串刺しの状態になったダストエルフを、そのまま地面に叩きつけた。

 イスノキさんは剣先にいるダストエルフが白い灰になるのを確認すると、身体能力強化を解いた。



 ――――ダストエルフか…。


 子供の頃はよく“悪さをする子供はダストエルフに食べられる”と、脅かされたもんだな。



 王都歴史資料館に保管されている、伝承書物にダストエルフについてこう記述されている。


 ダストエルフは、数千年前に存在したエルフの劣等種と言われている。純血のエルフは選民思考が強く、同種族以外の生物は下等と見なしていた。その理由は、優れた容姿に、知能と魔力を有していたからだ。

 しかし、それと引き換えに男のエルフは繁殖能力に欠け、一度の交わりで機能を失くし、子を一人しか産めなかった。その為、病や不慮の事故、外敵との戦闘で命を落とすと、やがて存亡の危機に晒される。

 エルフの長はそれを(うれ)い女のエルフに人間との交わりを許した。しかし、そこに愛などという感情は無く、繁殖相手でしかない。女エルフは身籠ると人知れず集落に戻ったという。


 そして人間との間に生まれたのが“(ハーフ)エルフ”だ。ハーフエルフは、純血のエルフより感情が豊かであり、人間との間にも良い感情を持つような者もいた。

 エルフの長はそれを危惧し、封鎖的な掟を作るが、その全てを防ぐ事は出来なかった。そして掟を破ったハーフエルフは愛する人間と交わり、間に生まれたのが廃棄(ダスト)エルフになる。

 廃棄(ダスト)と言われる理由は、その容姿にある。交わる度に人間との血が濃くなり、その姿はエルフよりほど遠い存在となっていたからだ。

 エルフの長は、それを許さなかった。ただでさえ自分達より劣るハーフエルフまで仕方なく許容したのに、それ以下になると同種族として認められなかったのだ。


 ダストエルフは酷い迫害を受け、それが原因で憎しみに歪んだ容姿となり、純血のエルフをはじめ、ハーフエルフや人間を恨みながら絶滅したと。

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