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23 冒険者達

「周りに気をつけて燃やさないとね。」


 魔物の死体は火の魔法で燃やさないといけない。その理由は、体内に宿る魔力はたとえ命を落としても滞留し続けるからだ。滞留した魔力はやがて、瘴気(しょうき)という黒い霧のような物なる。

 この瘴気は様々な災害を引き起こす。例えば死体が蘇る死人、魔物であれば“形魔(ぎょうま)”となり無差別に生物を襲い始めるからだ。それを防ぐために体を火で燃やし、魔力を滞留させないように処置をする。


「死体はこれで良しと。それより……。」

「木札だね。」

「あれだけの風を起こしたんだもんね、そりゃどこかに飛んでくよ。」

「とりあえず探そう。」


 落ち葉を掻き分けたり、辺りの木を揺らしてみたけど見つからない。暑くなり始める夏月前の時期もあり、体力の消耗もいつもより早い。


「諦めるか。」マルキスが額の汗を腕で拭い、ため息交じりに提案する。

「だなぁ。三人はどう?」

「もう限界!そうしよう?」リノは真っ先に手を挙げる。

「お風呂に入りたい~。」ミスティは腕の匂いをくんくんとあからさまに嗅ぐ仕草をする。

「しょうがないわね。」ライアは落ち着いてそうに見えるが、目の輝きを失っていた。


 満場一致で麓を目指す事になった。コボルトと遭遇したのは、二つ目のチェックポイント。地図を確認すると、ここから40分程で辿り着ける距離だ――――。



「あれ、湖じゃない!?」獣道の先に少し開けた場所が見え、その奥には日差しに反射し、キラキラと光を浮かべる小さな湖が見えた。

「汗、拭きたい~。」

「しょうがないわね。」

「地図には記されてないけどな。」

「ユズハ。俺の姉貴もそうだが、女はあぁなると止まらない。」


 マルキスの言う通り、静止する前に三人は湖へと走り出していた。俺の肩をポンと叩き、察しろと言わんばかりの顔を向ける。


(まぁ……仕方ないか。)彼女達にとっても汗は天敵なんだろう。あのミカさんでさえ、足の臭いを気にする程だし。



 ――――「くしゅっ!……ん~~飲んで帰って裸で寝たのが間違いだったかな?」――――



「ユズハ!早く来いよ!」

「あぁ、今行くよ!」


 彼女達は水でタオルを濡らし首筋などを拭き、その間、俺達は秋月に学校内で行われる剣術大会の話をしていた。


「マルキスは参加するのか?」

「いやパス。あまり人前に出たくない性格なんだ。ユズハは?」

「俺もパスかなぁ。友達にめっちゃ強い奴がいて、負けが見えてる。」

「そうか?さっきの戦闘見てると、いい線行きそうだけどな。」

「ん~……。」


 そう話していると、リノ達も会話に参加してくる。


「魔導師の大会もあるんだよ?と、言ってもヒラドさんが大本命だと思うけど。」

「そうそう、あんな強力な火炎魔法、見せられたらね。」

「しょうがないわね。」


(リンネ・ヒラドか。)俺達とは一線を画すあの赤黒い魔力。たしかに同年代じゃ、敵は居ないかもな。


「何か信者みたいな子達も居るみたいだよ。」

「魔導師としては、憧れる部分もありそうだもんね。」

「そこは同意する。」

「えっ?」

「そこは、しょうがないわね。と言わないんだ。」

「私を何だと思ってるの?ミスティ。」


 そんな彼女達のやり取りを聞いて、思わず笑ってしまった。


「さぁ、一段落ついたし、出発するか。」


 改めて身支度をと整え、立ち上がろうとした時だった。背後の木の陰から僅かな殺気を感じたのは。俺は振り返り剣を抜こうとしたが、トンッ――と、柄頭を手の平で押さえられ、首元には短剣の切っ先がピタリと止められていた。


「油断し過ぎだな。」そう呟いた男は、俺の懐に入ったままピクリとも動かず動向を確かめているようだった。ヤシラ達の状況を確認したくても、動けば確実に殺される。


 ひんやりとした汗が頬を伝う。


「ソフィー、コイツら人間か?」

「見れば判別(わか)るでしょ?」


 男はまず押さえていた柄頭から手を引き、次に短剣を肩にある小さな鞘に納めた。続けてクイッと顎を左に向ける。それに従い顔を向けるとヤシラ達は、男の仲間だと思われる男の剣士と女の魔導師に、魔力を帯びた剣と杖を向けられている状態だった。


「驚かせて悪かったな、警戒を解かせよう。」


 ヤシラ達は肩を撫でおろしたが、俺は安心することが出来なかった。


「そう強張るな、俺達の早とちりだった。」そう言って男は頭を下げる。それを見てやっと力が抜けていく。


「まずは自己紹介をしよう。俺は“ハジメ・イスノキ”。そっちの男が“レオン・マルグリット”、女は“ソフィー・フィザリス”だ。冒険者をやっている。」


 男が差し出した認識票には、冒険者階級・主天使と刻まれている。名前にも偽りはない――――。



「アイオリアって、あの連撃が雑なアイオリアの子供なのか?!」俺達も自己紹介を済ませると、あの殺気を本当に放っていた男なのか?と思う程、気軽に話しかけてきた。

「久々に聞きましたよ、そのフレーズ。」

「古い付き合いなのに初めて知ったな、息子が居るなんて。」

「義理の父親ですけどね。」

「そうなのか。まぁ、通りで年の割には反応が良かったわけだ。真っ先に俺の殺気に気づいたのは、君だけだったからな。」

「ちょっとハジメ、盛り上がってるとこ悪いけど……。」

「そうだな。君達は、ここに()()()()()辿()()()()()?」

「それは、そこの獣道を……。」


 来た道を振り返ると、歩いてきたはずの獣道は無く鬱蒼と木々や背の高い草が遮る様に茂っていた。

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