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2 カルティ・クラウンズ

 季節は春月、そしてユズハは今日、王都両立育成学校の試験日を迎える。

 緊張しているのか。

 夜が明けきらない内に目が覚めてしまったユズハは、人も疎らな商業区内を走り込んでいた。


 ここは王都・紅必(べにかな)。勾御神大陸の北部を治める“エクス王”の居城がある都だ。

 商業の国と言われるほど貿易が盛んであり、他の領土を治める国からの物品などが集まる。


 そんな商業区を抜け小高い丘を登王都中央公園がある。そこで一休みするのがユズハの日課だ。

 この場所は商業区内を一望でき、夜景の綺麗なデートスポットとしても利用されている。


 夜景を眺めながら軽く体をほぐしていると、背後から足音が聞こえてきる。

 少し警戒しながら足音のする方向に振り向く。

 そこには、外灯に照らされた同い年ぐらいの男の姿があった。


 身長はユズハ同じぐらい、体格もよく似ている。

 綺麗に整えられた黒髪にブラウンがかった瞳が印象的だ。


「ん? 先客か。おはよう!」


 馴れ馴れしく声を掛けてきた男は“カルティ・クラウンズ”と名乗った。

 クラウンズ……ユズハは驚いた表情をした。クラウンズ家の人間かも知れないと思ったからだ。


 クラウンズ家は、大陸南部を治めるアスラ王の居城がある天都(あまつ)カゲロウの中でも有名な家名だった。

 剣術で名を馳せ、代々受け継がれている剣術は教科書にも載せられている。


「おはよう、俺はユズハ・アイオリア」

「アイオリア? あの“連撃”の?」

「息子だよ」

「いや、それは分かるって!」


 “連撃のアイオリア”

 エギルの冒険者時代に付いた二つ名だ。

 ユイフィスも同じく、冒険者時代は“大断斬のユイ”と呼ばれていた。


「俺の伯父(おじ)が良く口にしてたぜ。連撃が雑ってな」

「ああ、雑ざつ! 俺から見ても雑だわ」


 初対面にも関わらずカルティと意気投合する。

 互いの趣味や特技、両親の事、それに対する愚痴なんかを話し合っていると、いつの間にか空に赤みが指していた。


「そろそろ帰るかな。俺、王都両立育成学校の入試の為に紅必に移って来たんだ」

「え? 俺も入試受ける」

「ははっ! マジか。じゃぁ、また学校でなユズハ!」


 人懐っこい笑顔でハイタッチを求めるカルティに応え、2人は朝焼けに背を向け別れた――



 試験当日、ユズハは両親に呼び止められる。


「あ~、ユズハ。1人の力はたかが知れてる。何でも自分で解決しようと思うな? あとは、思う存分、楽しんでこい」

「はい!」

「ユズハ、常に気を張る必要はないかしらね。ようは、肝心な時にしっかりしておけばいいってことよ」

「はい! 母さん。」

「よし! 頑張ってこい!!」


 エギル達は力強くユズハを送り出した。


 王都両立育成学校は全寮制で“学区領(がっくりょう)コキア”にある。

 定期便の大馬車に乗り、王都を出て西へ約40分ほど走った所だ。

 大馬車に乗り込むと、そこにはカルティの姿があった。


「デカいな。これが王都両立育成学校かよ。」


 カルティが驚くのも無理はない。

 正門から見える校舎は5つに分かれており、それぞれ、一般総合科、武法科、魔法科、商業科、軍略科がある。

 基本的には一般総合科で戦闘から経営までの授業を受け、他の科目は選択科目として1つ選べるようになっており、集中的に学ぶことができる。


「おはようございます。入試希望の方は、係員の指示に従い中央校舎へお入りください」


 二人で校舎を目指す中、しきりにキョロキョロするカルティ。


「これは合格が難しくなるかもな」

「どうして?」

「見知った顔ぶれが結構多くてな」


 カルティは、特に目を引く人物が2人を教える。

 1人は“シオン・ラナンキュラス”という女。

 もう1人は“ヴィネ・アザレア”という男だと言った。


「ヴィネは一緒に住んでるが、シオンはうちの伯父と手合わせをしにわざわざ通って来る奴なんだけど、滅法強くてな。嫌になるぜ?」

「ということは、剣士系か?」

「そうなるな」


 その後、予め届けられていた受験番号を係員に見せ、校内へと足を運ぶ。

 指定された番号の教室へ入り受験番号の張られた席に、ユズハは腰を掛けた。


 1日目は学科試験だ。

 項目は歴史、魔法学、戦略学、商業学。1項目50問で構成されており、60点以上が合格ラインに設定されている。

 商業学は両親が冒険者ギルドを経営してるため、どちらかと言えば得意分野だ。

 戦略学はミカに基本戦術から応用戦術を叩き込まれてる。これも問題はない。

 ユズハにとって不安があるとすれば、歴史と魔法学だった。


 試験中の注意事項が説明され、問題用紙と答案用紙が配られた。

 そして試験開始のブザーが教室内に鳴り響く。

寒い日が続きますが、早いものでもう2月。仕事も本格的に動き出す時期に……。

早速ですが、1部で主人公の身長を180cmとしましたが、15歳でそれは無いだろ。と気づき、

165cmに訂正しました。


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