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18 クラン設立の足掛かり

 ――――王都両立育成学校・戦闘軍略科校舎


「カルティ君、“双撃陣(そうげきじん)”について説明を。」

「はい、剣士などの前衛陣が両サイドから対象を攻撃する布陣です。」

「簡潔に言えばそうです。しかし、デメリットもあります。それは前衛が両サイドに散開するので中央が手薄になること。複数の魔物がいた場合、中央深くに入り込まれ陣形が乱される事ですね。」


 王都両立育成学校に入学して1ヶ月。俺達は選択科目を決め、総合科の授業終わりに専門的な指導を受けている。俺が選んだのは、主に迷宮探索や遺跡調査、荷馬車の護衛など、様々な状況に適した陣形を学ぶ戦闘軍略科だ。


 ちなみに、シオンやヴィネが選んだのは武法科、ユズハは魔法科を選択している。武法科は主に体術を取り入れた体づくりを基本とし、体幹を鍛え、関節の可動域を広げる等のトレーニングを行う。

 魔法科は魔力量の増幅法やコントロールを主に鍛え、攻撃、防御、補助魔法等の理解を深める事に力を入れている。


 では、なぜ代々剣術一家だったクラウンズ家の俺が戦闘軍略科を選択したのか?それは、俺には剣術の才能が無いからだ。

 基本的な動作は幼少の頃から伯父に教えられているが、シオンのような剣筋、ヴィネような瞬発力が俺にはない。

 伯父もそれを見抜いていたのだろう。俺に無理強いをしなかった。その理由は、伯父もまた剣術の才能が無かった事に起因する。


 伯父には上に二人の兄がいた。長男のカインは天都カゲロウの騎士として第二騎士長を任されるほどの実力を持ち、次男のロイ。つまり俺の父親はクラウンズ家きっての天才剣士だった。

 伯父はそれでも腐ることなく鍛錬を積み、やがて冒険者の道を選ぶ。その間にも兄二人と研鑽を重ねていた。それがアスラ王の目に留まり、既に冒険者として実績を重ねていた伯父は、ついにはアスラ王のお抱え冒険者として招かれる。


 当然、家を継ぐのは実力も地位も兼ね備えたカイン伯父さんに決まっていたが、襲名式を前に問題が起きた。

 それは、領土にあるリベルの村に異変が起きたからだ。カイン伯父さんは調査団として村に向かったが、そのまま行方知れずになってしまう。

 その再調査として伯父に声がかかり、さらには王都・紅必の上位冒険者と協力しリベルの村に向かう事になった。


 調査の結果、カイン伯父さんは帰らぬ人となり、それを証明する認識票を伯父は持ち帰る事になる。


 俺の父親も天才剣士と言われていたが、元々病弱でカイン伯父さんの死がきっかけとなり、心身共に疲弊して病状が悪化、そして俺が3歳の頃に衰弱死してしまった。

 半ば強制的に家を継ぐ事となった伯父は、才能の無い自分がアスラ王に仕える事は出来ないと考え、代々継がれてきた“クラウンズ家の人間はアスラ王に忠誠を誓い、仕え抜く”という伝統を破棄する事を決めた。


 その代案として、クラウンズ家がアスラ王に仕えるのではなく、国家戦力の底上げを目的とし、クラウンズ家が育て輩出した剣士を国に仕えさせる事を提案した。

 忠誠心等の問題もあり、最初は色々と揉めたらしいが徐々に門下生も増え、実質的に底上げは成功し、今に至っている。


 俺も家を継ぐ事になれば、伯父と同じ道を歩むつもりだ。ただ剣術だけでなく、軍略も加味して行こうと思い戦闘軍略科を選んだ。


 それにヴィネとの約束もある。幼い頃に交わした、ヴィネが剣術を、俺が戦略を教えるという約束が。


「ん~…この陣形に意味はあるのかな。」


 物思いに耽っていると、隣の席に座っている女生徒がぽつりと呟いた。肩に掛かる長さの鮮やかな黒髪と眼鏡が印象的な女生徒だ。


 「それって、陣形に意味が無いって事か?」俺も陣形に関して気になる点があり、思わず声を掛けてしまった。


「えっ?あ、え~っと……講師には聞こえてないよね?」

「大丈夫だと思う。」

「そっか、良かったぁ。」

「続きだけど、意味が無いって事?」

「ううん、陣形は大事だけどね。ただ、陣形を展開しても……」


「個人差で機能しない可能性がある」

「個人の能力によって、致命的なズレが生じるの」


 俺の気になる点と、彼女の疑問が一致した瞬間だった。


「だよね?」鼻に掛かった眼鏡を右人差し指でクイっと押し上げ、俺をじっと見つめる。


「今、受けてる説明だと、前衛二人が同じ戦闘力を持ってる前提の話しなんだよね。でも実際はそうはいかない。例えば、戦闘力が10と5だったら、タイミングを合わせないといけないのは10の人だし、5の人に合わせると、さっきまであった対象の隙が消えてしまう恐れも出てくるよね?」


 息を吸うのも忘れてるんじゃないか?と思うほど話し続ける彼女に圧倒され、頷く事しか出来なかった。


「でね、ずっと考えたいたの。どうすれば個人の能力の差を同等、もしくは、どれだけ近づけられるか?って。でね?今のパーティーの組み方って、依頼にもよるんだけど前衛三人、後衛二人とか指定依頼が多くて、とりあえず前衛二人募集とか、人数合わせで組んでいるのが殆どなんだよね。」


 話は聞いているが、講師から放たれる視線が俺の頬に突き刺さる。


「ごほん!え~、カルティ君にミスティさん、今日は帰りなさい。い・い・で・す・ね?」



 ――――教室を追い出された俺達は、校舎を出て近くのベンチに腰掛けた。


「でね、さっきの続きなんだけど、“クラン”を作ったらどうかな?って思うんだよね。」

「クラン?一族とか家族って意味のか?」

「う~ん……この場合は()()()()()()()()()()()かな?」

「でも、問題もあるな。例えば同じ能力を持った冒険者だけが集まってしまうとか。」

「そこは元冒険者の人達が“初心者クラン”みたいなのを立ち上げて、天使や大天使階級のサポートに入り、経験を積ませるとかすればどうかな?元冒険者の人達の就職先としても良いだろうし。後は、クラン間で交換するとか?条件付きで。」

「なるほどな。あ、あと同じクランにいると連携も取りやすいか。余程大きな能力差が無い限り、連携でカバー出来るかも知れない。」

「うん、うん!いやぁ、君が話のわかる人で良かったよ!」

「俺は、カルティ・クラウンズだ。」

「あ、名前言ってなかったね、私は“ミスティ・シネラリア”。」


 (ミスティの考えたクランの設立案が、形として提出できる物になったら伯父に掛け合ってアスラ王に通してもうらおう。もし承認されよう物なら、冒険者ギルドに新しい風が吹くかもしれない。)


 俺達はこれからもクランについて意見を交わす事を約束し別れた。



 ――――同日、紅必城内・軍略室


「よく来てくれたな、アイオリア。」

「恐縮です、エクス王。」

「そしてミカ、すまないことをしたな。」

「いえ、これは私が未熟だっただけの事です。お気になさらず。」

「そうか。」


 私達はエギル、ラナさん、ヨハネイ、カグルマと共に森林の洞窟で起きた出来事を報告する為、エクス王と謁見していた。

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