13 リンネ・ヒラド
――――私はリンネ・ヒラド。異世界転生者だ。
私が生を受けた場所は、勾御神大陸の西部を支配する“宗教国家・シャダイ”。その領地の一角を治める領主“ジュリス・ヒラド”の長女として、前世の経験、知識、そして生き様を含めた記憶をそのままに転生した。
前世は日本で暮らす女子高生、三樹屋弘子。幼少の頃に両親は離婚。その後、父親に引き取られ大切に育てられた。
そんな父親にいつか恩返しする事を心に決め、まずは良い高校、大学に進学し、大手会社に就職、そして父親に楽をさせる。
その実現のために必死に勉強して、良い高校に入学したまでは順調だった。しかし、それからの生活は散々な日々に変わっていく。
“片親”というだけで、色々な事柄に敏感な周りの女生徒は、私を異質な存在として捉えていのかな。
“そう、私は酷い虐めを受けていた”
そんなに境遇が珍しいのか?そんなに片親がおかしいのか?徐々に心は歪んでいった。お前らみたいにお金を出してもらって、ここにいる訳じゃない。
奨学金制度を使い父親に負担を掛けず、出来ることは1人でやってきた。そんな私が何故こんな虐めを受けなくちゃいけない?憎しみばかりが膨らみ爆発しそうだった。
でも、問題を起こせば父親に迷惑を掛ける。そうならない一心で、なんとか耐えてきた。でも現実は非情だ。高3の最後の夏休み、父親は事故で亡くなりこの世を去った。
心が折れてしまった私は、夏休みが明けても登校せず、だらだらとネットを開く毎日。理由もなく動画や記事を眺め、ただ頭を必要のない物で埋めようと必死だった。
最悪な状況であっても、せめて自分の命を絶つような事を考えないようにする為に。
そして数週間が過ぎ、いつものようにネット漁りをしていると、あるネットサークルを見つけた。そこには私と似たような境遇者が集まり、食事や、趣味などをメインに交流を深めるサークルのようだった。
まるで世捨て人のように暮らしていた所為か、何も怖くない無敵状態だった私は、なんの疑いもなく申し込み、参加回数を重ねていった。
――――そして、数ヶ月たったある日。
サークルの1人があるイベントを提案した。その人はオカルトを趣味としていて、他のメンバーが言うには、「季節に関係なく、いつもメンバーを肝試しに誘うんだよ。」と愚痴られるような人だ。そんな人が提案した内容は、廃墟で“今年最後の肝試し”を行うものだった。
怪しいと思ったが、他のメンバーも「いつもの肝試しだろう。」と言ってたし、その頃の私はサークルの人達のおかげで、今の私を天国に居る父親が見たらどう思うかな?と、考えられるまで心も回復していた。
その矢先の事もあって恩返しの意味も込め、このイベントを最後にサークルを抜けようと思った。
イベント当日、電車とバスを乗り継ぎ、現地で集合する事になっていた。バス停から廃墟へ行くには、少し山道を登る必要がある。
廃墟前に着くと、先にイベントを提案した神谷純弥が立っていた。
約束の時間が過ぎても、メンバーが来ない。私達は連絡を取って、遅くなるようなら中止にしようと話し合い、スマホを取り出す。
しかし2人共、圏外だった為、電波の届くバス停まで降りる事にした。
「三樹屋さんに万が一の事があったら怖いから、僕はここに残るよ。三樹屋さんはバス停まで行って連絡してみてくれる?」
確かに入れ違いになると面倒だし、女1人が廃墟前に居ると危ない気がした。それにバス停まで降りれば明かりもある。
夏は日が暮れるのも遅いけど、念のためと、神谷さんに懐中電灯を渡され山道を降りる事にした。
バス停辺りまで来ると、圏外のマークが消え通話出来る状態になった。その途端に着信を知らせる音がなり2件の内、1件に留守録が入っていた。
“ごめん!驚かそうとして別の山道を歩いたら迷っちゃったよ。今はもう廃墟前に居るから戻ってきて!”
留守録の相手は、残りのメンバーを連れてくる予定のだった高岡真。着信履歴の時間を見ると、ほんの数分前だった。
一応、神谷さんにも確認を取ろうとしたけど、良く考えれば廃墟前は圏外だった事を思い出し、仕方なく戻る事にした。
廃墟前に戻ると、神谷さんが頭から血を流して倒れている。一瞬焦ったけど、高岡さんが留守録で驚かすみたいな事を言ってたし、冗談だと思い直した。
「神谷さん、高岡さん、バレバレです……。」
そう声を掛けようとした時、後頭部辺りから、聞いたことのない音と衝撃が同時に走った。それが2回、3回と続いた所までは覚えているけど、その先の記憶はなく、気がついた時には見たこともない場所に立っていた。
――――「ここは、どこ?」
目覚めた場所は、見渡す限り真っ白な世界。しばらく呆然としていたけど、このまま突っ立っていても何も変わらない。と思い歩く事にした。
(私、死んだのかな……。)歩きながら、そんな事を考えていると頭に声が響いた。
「そうだね、君は死んだね。」
「え?誰?」
「僕は、“神霊シャダイ”。」
今度は後ろから声が聞こえたような気がして、慌てて振り向くと、いつの間にかテーブルと椅子が2つ置かれていて、その椅子の1つに小、中学生ぐらいのシャダイという名前の男の子が座っていた。
「こんにちは、三樹屋さん。」
「あ、え、こ、こんにちは。」
「意味もなく殺されて、残念だったね。」
何となくそうじゃないかな?と、思っていたけど他人に言われると妙に納得してしまった。正に死人に口なし。動機も何もわからないまま、殺されるとか有りなんだ。
(はは、私には殺された理由を知る権利までないのかぁ……。)
「そう悲観的になる事もないよ?むしろ、三樹屋さんは幸運だ。」
「…。」
「だって、何の因果か知らないけど、この世界に辿り着いたんだからね。」
まるで心を読んだかのような口振りと、幸運?世界?という言葉に戸惑い黙り込んでしまった。
「あ、良い事思いついた。三樹屋さんには神様になってもらおうかな。」
殺されたり、幸運とか世界とか、頭がついて行かなくて戸惑っていたのに、なんか拍子抜けしてしまった。唐突に何を言い出すんだこの子は。そんな私を無視して、シャダイはブツブツと何かを言いながら考え込んでいる。
「話を進めていい?」
「はい、どうぞ。」
「実は神様が存在しない、珍しい世界があってね。三樹屋さんにその世界の最初の神様になって欲しいんだ。あ、女性だから女神様でもいいか。」
もう何を言われても驚くことが出来なかった。だって、シャダイの言っている事が意味不明過ぎて信じられなかったからだ。
「一応、その世界に宗教国家は存在するんだけど、現段階で偶像崇拝でしかないんだよね。」
「仏像とかを神に見立ててるアレ?」
「そう。正直、バカなんだよね。存在しない神を崇拝してるって。そんなの可哀そうだと思わない?」
「哀れではあるかな。」
「だよね?だから、神様になってあげて欲しいんだ。」
(あぁ、死んでるのに疲れるんだ。)この時はそう思っていたけど、あるシャダイの言葉で、最終的にその世界の女神になる事を決意する。
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