表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

9話お母さんが許してくれない


「ああ、ただいま。こんな時間だが、少し父さんと話さないか? 眠たくは……なさそうだな」


「え………うん。いいよ? 何?」


お父さんから話しかけてくるなんて珍しい。


でも、特に断る理由もないし、眠気も全然ない。


それどころか、お母さん達が家に来てから、さらに鼓動が早まっているような気さえする。


問題ない。


お父さんにソファに誘導され、私達は肩を並べて座り、間を置かず、お父さんは前かがみで手を組んだ状態で、後ろで急に静かになったお母さんに、


「……恵美。私の代わりに見に行ってくれ」


「分かってるわ。……霊ちゃん。ちゃんと辰巳さんの言う事聞いときや」


さっきまでのおちゃらけた雰囲気はなく、やけに真面目な口ぶりでお母さんは客人の部屋に廊下に出て行った。


☆★☆


お父さんと二人っきりになるのは何時ぶりだっただろう。


いつも、私とお父さんの間にはお母さんが居て、会話をするにしてもお母さんを介してだったから、こういう時どうしたらいいのか、全く分からない。


気まずい。


お父さんも話があるはずなのに、全く話を切り出す様子もなく、それどころか私の方さえ見てなくて、ずっと手をいじってるだけ。


顔に表情が全く出てこないから、何を考えているか読み取れない。


そんな事を思っていたら。


やっと、お父さんがボソッと口を開いて


「………………耳、真っ赤だぞ」


「へ?」


言われて、慌てて耳を触ると熱い。


「緊張……するか? 父さん。お母さんに任せっきりで、霊の相手あんまりしなかったならな」


「そそそ! そっんな事ないけど!」


「ハハハ。とてもそうは見えないけどなぁ…」


私の方に身体を向けて、乾いた笑いをするお父さんだけど、目は笑っていない。


目下にはくっきりとクマがあった。角刈りの髪も白髪がチラホラ見え隠れしていた。


「お父さん、仕事大変なの?」


意識しないで、勝手に口から出た問いかけに、お父さんは私の視線の先が何であるかを瞬時に理解したようで、首を縦に振り、


「……最近はな」


「休んだらいいのに」


「休みたいんだけどなぁ……お母さんが許してくれそうにないんだよぉ……。霊から言ってくれないか?」


「プッ」


「なんだ? 父さんなんか変なこと言ったか?」


「だって、お父さんがそんな情けなさそうに言うって思わなくて……」


「それにしたって酷くないか。父さん、切実に語ったつもりなのになぁ……」


少し困ったように、そしてちょっとだけ嬉しそうに頬を緩ませたお父さんに釣られるように、私もニッと笑った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ