表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

3話家に……



そう言って御堂が差し出したのは、ちょっと間の抜けた表情を浮かべている猫のキーホルダー。


よく見るとT.Hのイニシャルが入っている。


「どう?」


「どうって…」


学校ではいつもゴムバンドでしっかりと髪を括ってポニーテールの御堂だが、今は外していて、肩までかかるほどの艶々の黒髪をおろしている。


少し新鮮だ。


…何て御堂には絶対に言わないようなことを思いながら、僕はキーホルダーを受け取った。


「ありがとう。貰っておくよ。鞄にでもつけておく。でも別に来週学校であった時でもよかったのに」


言った瞬間に一言多かったな、と後悔したが御堂はブンブンと首を大きく横に振って、僕が握っているキーホルダーを見て、きっぱりと言った。


「その日は誕生日じゃないから。それに毎年この日(誕生日)に渡しているのに、今年だけあげないってのは変だよ」


「そういうところマメだよな」


「……バカにしている?」


「してない。してない」


ちょっと怒気を含んでプクッと頬を膨らませている御堂に対して、慌てて苦笑いをして誤魔化す。


プレゼントは幼稚園の頃から毎年貰っている。


マグカップとか、ノートとか、お菓子とか……そんなモン。


僕も御堂が誕生日になればプレゼントしていた。


別に、特別な意味なんかない。


毎年の恒例行事みたいなもんだ。


ただ、二・三日が過ぎたあたりで御堂の誕生日に気がついて、慌てて何をプレゼントするか考えていた僕と違って、毎年きっちり当日に渡してくる御堂に頭が上がらないだけ。それだけ。ホントにそれだけ。



「……ル?」


「え?」


「あー聞いてなかった。今何か別のこと考えていたよね?」


「……」


何か言っていたらしい。

御堂は背中からリュックを外して、床に置いて、グイと一歩僕の方に身を寄せてきた。


「ごめん。何て言ったの?」


「家、入っていいって聞いたんだけど? ホラ、いつまでも外に居づらいし…」


「……」


両腕をクロスして、周囲を窺うようにキョロキョロしだす御堂。


通りかかった人の何人かが、それに呼応するかのようにこちらを見てくる。


——視線が痛い。


これじゃ僕が悪いみたいじゃないか。


「やっぱ()()ダメ? すぐ帰るから。母さんには私がうまく言う。それでもダメ?」


「…うまく言う?」


「うん。一応この中に着替えあるんだけど……」  


「——ッ」


なんか会話が噛みあっていない気がしていると、御堂はしゃがみ込んでカバンのファスナーを開け、中から下着を取り出そうとする御堂の手を慌てて、制した。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ